第6章 第8節
「皆大丈夫?」
「……はっ、はい! 平気です。これ位は!」
「……とてもそうは見えないけど?」
蓮華は、殆どが負傷している水鏡怜奈専属SP部隊“戦乙女”の面々を見回し――
「ケガはないか? 宇佐美」
「うん、大丈夫」
彼女達が敵意を持って睨みつける朝霧裕樹は、負傷どころか疲れた様子も見せず、宇佐美の安否を気遣っているその様子を見て、蓮華はため息をついた。
「いい加減にしなさい! 朝霧さんと張り合った所で、私でも勝てない様な相手に貴方達が敵う訳がないでしょう!」
「……さて、逃げるぞ」
「え? でも……」
「――水鏡グループと話す事なんてない。これ以上は時間の無駄だ」
「……ねえユウ」
「別に恨みつらみを言う気はないよ。ただ、黛とお嬢さんを疑う気はないけど、組織としては信用できない――それだけだ。んじゃ」
「え? ひゃっ!」
蓮華が“戦乙女”の面々に説教を始めたのを見計らい、裕樹は宇佐美を抱き抱えて、光一に目配せをして駆けだした。
「あっ! ちょっと!!?」
「悪いが、話はここで終わりだ!」
「ちょっ、ちょっとユウ!」
「悪いが黙っててくれ。重くて落とさないよう気を張ってんだから!」
「後で殴るからね!」
後を追うか……とも考えたが、やめた。
確かに現状では、実力者である事を考慮しても、裕樹を引き込む事を嫌がる者が多い現状では、逆に話がこじれる一方――そう思い直した為に。
「――さて、お嬢様に何と言った物かな?」
結果的に任務失敗である以上、始末書を書かねばならない。
それ自体は文句はないが、怜奈からの頼まれごとを果たせなかった事に、気が重くなる蓮華だった。




