第5章 第8節
早朝からの、ダンスホール襲撃事件。
女子寮付近でのテロ活動、そしてその女子寮の住人の避難先であるダンスホール襲撃、その際に行方不明者が出た事及び、一条宇佐美、アスカ・ホークアイの2名もその場に居た事から、此度の朔夜会の襲撃はプロバガンダの為の人材を捕らえることが目的である事が、各所で予想されている。
これに対して生徒会執行部も、悪化する一方の現状を打破すべく、保安部機動部隊の増員及び特例予算の可決、生徒の移動制限をより厳重にする等を、緊急会議で可決した。
「――いや、遅いだろ」
学園都市のトピックを見て、太助は呆れる様にそう感想を呟く
場所は、朔夜会が手配した住居で、太助はここで匿われた上で違法召喚獣の研究と、制作を行っている。
現在は、昨晩の失態と如月くるみの一件を独断で処理した事への罰として、軟禁状態となった上で違法召喚獣の量産のみに時間を割いていた。
既に朔夜会は、違法召喚獣を強化するよりも量産する事に重点を置いており、保安部も対処しきれていない現状も手伝ってか、今後も積極的な武力活動を散発的に行った上で、決起をする方針を取る事を決定。
末端と違い、繋がりのある幹部以上は既に事を楽観視しており、太助の研究成果を口々に褒め、讃えてさえいた。
「――何が感謝する、だよ。反吐が出る」
太助からすれば、今の違法召喚獣など所詮は使い捨ての量産品であり、決め手にする様な出来ではないし、そもそも嘘で力を発揮させているのだから、ボロが出ればそれまで。
作品としてはまだ全然荒く、まだまだ改良の余地がある様な代物に、上辺だけの評価をつけられた所で――と言う以前に、太助は価値や利益で判断される事が大嫌いである。
『ご機嫌斜めだね、パパ』
「――不機嫌にもなるさ。そもそも力なんて、人を幸福にすれば不幸にもする――だから重要なのは、力を使う事じゃなくて受け入れる事だろうに」
『――? どういう事?』
んーっと太助は考え、ある疑問を投げかけた。
「君はどうして、僕をパパと呼ぶんだい?」
『? そんなの、僕を創ったからに……』
「それだよ――君を創っただけで、僕が君の親だと言うのは不正解さ。君を創りだし、育て上げて初めて、僕は君の親なんだ」
『……そうなんだ?』
「そうなんだよ――力持つだけで強いとは言わないし、知恵をつけただけで賢いとは言わない。そして、何事もないだけじゃ平和とは言わないんだ」
『……よくわからないよ。時々パパって、難しい事言うから』
「理解出来ない位で良いのさ。普通はね」




