第5章 第7節
それから程なくして、裕樹達に襲い掛かった朔夜会のメンバーと思わしき者達を捕縛し、違法召喚獣は全てが鎮圧。
「ひっ、ひいいっ!?」
「うぅっ……」
そんなに数が多くなかった事と、縛る物もなかった為、少々サイズを大きくしたカグツチに取り押さえられている為、メンバーは顔を蒼白にしていた。
「さて――お前ら、朔夜会のメンバーだな?」
「――ああっ、そうだよ」
「とぼけん……え?」
てっきり知らぬ存ぜぬで行くとばかり思っていた裕樹は、面喰った。
よくよく見れば、捕まえた全員が諦観と安心が入り混じったかのような、状況にそぐわない表情をしている。
「……話を変えよう。お前ら、自分から朔夜会に入ったって訳じゃないのか?」
「当たり前だろ! ――先月位に、俺達その朔夜会の奴等に捕まって、仲間になれって脅されたんだよ」
「仕方ないだろ。ライオンとか恐竜とかに睨まれちゃ……それに手柄上げないと、そいつらに追い回されてボロボロにされるし」
「ここで捕まった以上、もう俺達の罰は確定的だ……ううっ」
「なあ、頼むよ。早く保安部に引き渡してくれ! 少年院でも監獄でも良いから、早く俺達を安全な場所に入れて欲しいんだよ!!」
そう言って懇願して来るメンバーの表情に、嘘があるとは思えなかった裕樹は――
「とりあえず――お前らに危害が及ばない様に、配慮はしてやるよ」
「やっぱり、保安部に引き渡すの?」
「正確には、一番偉い奴にな。そんな方法で末端を集めてるとしたら、ヘタに人任せにする方がかえって危険だ」
「――わかった。そいつらの身柄は、こちらで預かろう」
裕樹の言葉に続く様に、同意の声が割り込んだ。
その場全員に視線が、声をかけた一般保安部員に向けられる中で、歩み寄って帽子を取って素顔を見せると――
「正輝く……!?」
「声がでかい」
「あっ、ごめん……何してるの? 一般保安部員の格好なんてして」
「来たとわかると、騒ぎになりかねんからだ――さて」
アスカとの会話を切って、正輝はカグツチに取り押さえられている面々に歩み寄り、しゃがんで目を合わせる。
「事情はわかった――お前達の身柄は、我が預かろう」
「……あっ、ありがたい」
「ただし――脅されていたとはいえ、お前達が朔夜会の一員として行った事に関しては、相応の罰を受けて貰う」
「うっ……わっ、わかり、ました。安心して寝れるんなら、それ位甘んじて受けます」
「よし――丁度、我が手配した護送車が来ているから、お前達はそれで送ってやる。ただ、窮屈ではあるだろうが」
「良いです! 早く乗せて下さい!!」
「あっ、ああ……では行くか。朝霧」
「――カグツチ、解放してやれ」
カグツチから解放されると、メンバーはゆっくりと立ち上がって正輝の前に整列。
そして、正輝の指示通りにゆっくりとだが、ホールの駐車場に向けて歩きだす。
「とりあえずわかった事は、朔夜会の末端には繋がり自体がないって事か」
「みたいだね。前に出る人員は兵力じゃなくて、違法召喚獣の中継点扱い。情報なんて与えず、ただ指示通りに動けばそれだけでいい――そう言う事みたいだし」
「……なんか、嫌な感じ。人を道具とすらみなしてないって」
「そりゃそうさ。電子召喚獣は、使い方とその使い方の地盤の確立が出来れば、多少の無理も無茶も無視できる代物だからな」
またもや割り込む声に、3人は目を向ける。
「光一……!」
「悪い、遅くなった」
「あっ、久しぶり。元気だった?」
「一応……」
「あれ? 光一も、アスカさんと知り合いなの?」
「一応ね――とりあえず、現状把握したいんだけど良いかな?」




