第5章 第6節
場所と時は戻り、ダンスホール内。
『ギャガっ!!?』
『ガァアッ!!?』
違法召喚獣の断末魔が響き、ガラスが砕けるかのように四散する。
朝霧裕樹の刀、そしてサイズを人間サイズに調整したカグツチの爪と牙、尾による攻撃によって。
「こういう時便利だよね。大きさが調整できるって」
「……よく落ちついてられますね?」
「これでも護衛が必要になる身の上だから、こういう場なら何度か経験あるからね。それに……おいで、イっちゃん」
『ブルルっ!』
「紹介するよ。ボクの電子召喚獣、イクシオン」
アスカが呼びだしたのは、角を持った馬――ユニコーン型の、電子召喚獣。
身体は黄色のかかった青をメインの色彩に、雷光を纏ったその角は際だった存在感を放っており、アスカがミュージシャン方面である為か、両脇にスピーカーが付けられている。
「……なんだか、強そうじゃないですか?」
「そうなんだよね」
そんな会話を交わしているその時、アスカ目掛けて豹が飛びかかり、その豹が雷光が閃いたかのような光--イクシオンの角による一閃に、斬り裂かれた。
「イっちゃん、カグツチ程じゃないけど、何故か強く育ってくれたから」
「みたいですね」
「おかげである程度の安全って、確保出来るんだよねボク」
「――流石に、分野の話とはいえ一時代を築く人は、言う事も胆の据わり方も、持ってる電子召喚獣も違いますね」
「あのね、ボクだって人間だよ? 慣れてるって言ったって……」
アスカが目を向けた先に、宇佐美も続く様に眼を向け――
『ゴギャアアアアっ!!』
『ガゴオオオオオっ!?』
カグツチが、テイラノサウルス型の違法召喚獣と取っ組み合いをし、押し切って喉元に噛みついている光景を見て――それから眼をそらす様に、互いに向き合う。
「……流石に、こんな場面で怖いと思わない訳じゃないよ?」
「……ですよね。ごめんなさい」
その次の瞬間、アスカと宇佐美は体を寄せ合って震えていた。
「おいおい、大丈夫か?」
その様子に気づいた裕樹が、飛びかかってきた蝙蝠を斬り伏せ、2人に駆け寄る。
「……大丈夫な訳ないでしょ!」
「うん、流石に怖くなってきちゃった。流石に信用してるからって、心配にならない訳じゃないからね」
「――じゃあ……」
『ガアアアアアアアアアアアアッ!!』
裕樹が周囲を見回しているその時、裕樹の背後から熊が腕を振り上げ襲い掛かる。
「ユウっ! 後ろ!!」
ドシイっ!!
「ん? 何だって?」
『グッ……グッ、ググ……!』
声をかけた宇佐美に、裕樹が疑問符を浮かべた顔を向けつつ――振り下ろされた熊の腕を、右腕で受け止めていた。
「……ごめん、なんでもない」
「あっそ」
そう言うなり裕樹は刀を手放し、振り向く動作の間に振り下ろされた熊の腕をとり、顔面を殴る様にして、その熊に大外刈りを繰り出す。
その衝撃で限界となったのか、熊はガラスが割れるかのように四散し、消えて行く。
「……大人しくしてようか?」
「……そうですね」




