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第5章 第4節

 奇襲は、夜討ち朝駆けが基本と言われている。

「物量で押し込め! ダンスホールに突入さえすれば、俺達の勝ちだ!!」

「何としても突破させるな! 保安部最強の防御を誇る我等第1分隊の力、見せてやれ!!」

『おおーっ!!』

 宇佐美の住む女子寮付近での、違法召喚獣襲撃。

 その夜明けの時分、避難所であるダンスホール前では、朔夜会の襲撃と保安部の機動部隊が交戦を開始。

『パオオオオっ!』

『ギャオオオッ!』

「うおおおおっ!!」

「うおりゃああっ!!」

 保安部の電子召喚獣と、朔夜会の違法召喚獣、人と人と――そして、襲撃側は違法召喚獣の物量を主としている為、機動部隊員と違法召喚獣との交戦となっている。

 電子召喚獣は、その利便性から学園都市の生活に置いて、欠かせないパートナーとなっているその反面、悪用される事も多いという欠点もあるが、決して人に対処できない怪物と言う訳ではない。

 機動部隊は保安部精鋭部隊であり、主に電子召喚獣を悪用した凶悪犯罪の対処を主としている為、よほどの予想外な能力を保持している場合を除き、対処法は確立させてある為に遅れを取る事はなかった。

「相手をよく見て対応に当たれ! 倒そうとしなくて良い、突破されない事を第一に考えるんだ!!」

 保安部機動部隊第1分隊長、中原大輔。

 彼の率いる分隊は主に防御――拠点防衛に長けており、警護が大袈裟にならないいう点で最適とされ、この度の避難先の警護を任されている。

「隊長! 飛行型が数体、突破しました!」

「わかった。ウイウイ、天羅陣を張れ!」

『ウ~イ~』

 2mを超える様な大きな甲羅を持つカメ、中原大輔の電子召喚獣ウイウイ。

ドスンと地響きを立てる様な足音を鳴らし、のそっと首を動かし――空から襲撃を仕掛けようとする違法召喚獣の姿を捉える。

 甲羅の表面がはがれ、亀甲が1枚1枚飛び交い――

『ギャガっ!?』

『クエエっ!?』

 空の召喚獣を撃ち落とした。

『カアアアっ!!』

『ヒョオオッ!!』

 その危険性を察知して、空から鷹型と鳶型がウイウイめがけ、嘴あるいは爪を突き立てるべく、襲いかかる。

『ウイ? ……ウ~イ』

 大輔を亀甲で防御した上で、ウイウイはノンビリした動作で、脚と首を甲羅に納舞ったその時、嘴と爪がウイウイの甲羅に突き立てられ――

『ガアアアアッ!!?』

『ヒョオオオッ!!?』

 何かが折れて、砕ける音がし――程なくして、鳶型の嘴が砕け、鷹型の爪が折れてのたうち回る姿があった。

『ウ~イ~』

 これまたのんびりとした動作で、甲羅に納めていた首と脚を出して、ウイウイがゆっくりと飛び上がって、鷲型と鷹型を押しつぶした。

 ウイウイは動作こそ遅い物の、パワーと防御力に関しては保安部随一であり、亀甲の遠隔操作により遠距離の攻撃や防御にも対応できる。

「よし、よくやった。ウイウイ」

『ウ~イ。ウイウイ』

「後ろは気にするな、前だけを見ろ!! お前達の背中、俺が預かる!!」

「おおーーっ!!」


「……おおっ、やってるやってる」

 その様子を、高みの見物としゃれこんでいる裕樹と、宇佐美とアスカもそれに便乗していた。

「どうかな? ユウ」

「――どうやら相手は、烏合の衆らしいな。量産可能な高性能召喚獣の便利性に頼って、人員の方はまるでなってない」

「だったら、もう楽勝じゃない?」

「宇佐美ちゃん。そう言うのは、終わってから言う物だよ」

「……そう、でしたね」

「そう言う事。例えば……そこにいる奴らもいる事だしな」

 裕樹が振り向いた先――そこに居るのは、ダンスホールの管理を行う生徒が数人。

 彼等がD-Phoneを取り出して、全身が黒で染め上げた違法召喚獣を呼び出した。

「この人達……!」

「数が少ないな――保安部の管理をパスしたって事は、どうやら朔夜会の構成員がたまたまここで従業員やってた、みたいだな。下がってろ」

アスカと宇佐美を後ろに下がらせて、裕樹は刀を取り出した。

「――どうする?」

「見逃す手はねえだろ。一条宇佐美だけじゃなくて、アスカ・ホークアイだぞ? 連れ帰れば、俺達の躍進は間違いないじゃねえか」

「けど、朝霧裕樹だぞ相手は? それにあの電子召喚獣、俺達のより明らかに強そうじゃないか」

「弱気になんな。数でかかれば、どうにかなる!」

「――数以前にそんな及び腰じゃ、何も出来ねえぜ」

「え? うあっ!」

「ぐあっ!?」

 相手側が尻込みしている間に、裕樹は距離を詰めて一撃を振るまう。

「宇佐美、俺から離れるなよ」

「……わかった」

「それとアスカ、今回はお友達価格――と言いたい所だが、宇佐美のケアに一役買ってくれた分、タダで良い」

「ちょっと、ボクはそんなつもりで――」

「俺からの気持ちだ。受け取ってくれ」

「――うん、わかった」



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