第1章 第2話
学園都市においての祭典で、トップを取ると言う事は並大抵ではない。
およそ2百万もの観客の前で、自身の技能を披露する――よほどの自信と強心臓が求められる事故に。
だからこそ、学園都市は栄え、盛り上がり、熱狂する。
「宇佐美ちゃーん!」
「アスカさーん!」
そして、本日は歌謡祭であり、観客は皆ライブの親衛隊風がちらほらと。
優勝候補は、一条宇佐美とアスカ・ホークアイ。
「アスカの天下も今日までだな!」
「ぬかせ! 新鋭だか何だか知らねえが、学園都市の歌姫の座はアスカちゃんの物。アスカ・ホークアイの時代なんだよ!」
「その時代ももう終わりだ。これからは宇佐美ちゃんの時代だ!」
「なんだあ!?」
そして、ファン同士のいざこざもあるモノだが……
「やめんかバカ者どもが! 今日は歌謡祭だ、ケンカ祭ではないぞ!!」
学園都市風紀委員会――この場合、保安部の最高責任者である北郷正輝の一括で、両陣営はたじろぎ、大人しく応援の姿勢へと戻る。
「まったく……」
これらもひっくるめて、学園都市の祭典。
――プツッ!
『えー、皆さま、長らくお待たせいたしました。それでは、学園都市歌謡祭を開始いたします!』
照明が消え、アナウンスが流れ――観客の歓声が響き渡る。
「よっ、お待たせ」
「遅いですよ」
「ああっ、ごめんごめん」
その一角で、歩美が1人で居た所に光一がジュースを手に、やってきた。
「朝倉も来年からあそこに……」
「無理ですよ。観客席に居るだけでも圧倒されるのに」
「……違いないか」
円形に並ぶ観客席の中央――そのステージの上で、エレキギターを弾きながら堂々と歌を披露する優勝候補。
自己主張の激しいスタイルを包むのは、ホットパンツにへそを出したタンクトップ、肩で切り揃えた髪に活発そうな雰囲気――今回の優勝候補、アスカ・ホークアイを見ながら、光一はそう呟いた。