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第5章 第1節

「――その決定には、納得がいかないのだけど?」

『仕方ないだろう。生徒会総書記、一条宇宙の妹と言う大きなメリット、使わない手はなかろうにだ』

「でも、言ったじゃない。クーデター成功の暁には、プロバガンダに私を登用するって」

『履き違えるな。一条宇佐美の価値は、あくまで人質として――約束を破りはしないさ』

「……絶対よ」

 夜も更け、女子トイレにて。

 皆が寝静まった時分に、1つの人影が個室に籠っての、不穏当な会話を行い――。

「……どいつもこいつも、一条宇佐美一条宇佐美って……畜生」

 ぶつける先のない怒りで、腸が煮え繰り返りそうだと雰囲気が叫ぶかのように、個室から出てきた人影の形相は――

「――鬼どころか、閻魔大王様もびっくりだね、その顔」

 その出入り口の前に立っていた、1人の顔を隠した如何にも不審者だと言わんばかりの格好の――このダンスホールが、避難場所になった事件を起こした張本人が、そこに居た。

「――誰?」

「おや――僕の事、聞いてませんか?」

「! ……ああっ、貴方が? ……何やってるのよ、こんな所で?」

「――貴方の安全確保と、内部かく乱のための潜入です」

「……だったらもう少し早く来てくれない? 余計な腹を立てちゃったじゃない」

「――とても癒し系で通ってる人のセリフじゃありませんよ。如月くるみさん」

 目の前の相手を自分の安全確保に差し向けた事に、不穏当な会話を行っていた女性――如月くるみは、満足気に頷いた。

「人は第一印象が大事だって、よく言うじゃない? ――肩はこるけど、固定概念さえ植え付けておけば、人なんて結構簡単に騙せる物よ」

「あっそ――で、一条宇佐美は?」

「ロビーのベンチで寝てるわ――ねえ、今捕まえて来てくれない? 今年から入った後輩の分際で、散々生意気なことしやがった分、痛めつけてやりたいから」

「――やだよ。そんな悪趣味な事につきあいたくないし、人質傷つけてどうするのさ?」

「良いじゃない、貴方にはわからないだろうけど、あいつさえ居なかったら私はこの前の歌謡祭に出てたのは私なのに……どうせ人質の機能さえ果たせば、後は用済みじゃない」

「わかりたくもないよ……やれやれ、用済み、か」

 その言葉を聞いた途端、如何にも不審者な格好をした男の雰囲気が変わった――が、眼の前の人物は、それに気づかない。

「――まあいいわ。もうすぐ、一条の所為で屈辱を強いられる日々とも、オサラバなんだから。朔夜会がクーデターを成功させれば、アスカを蹴落とす事も……」

「――救いの余地があっちゃいけないなら、この世に幸福なんて物があってたまるかよ」

「――なんで……何? 急に、雰囲気が……!?」

「気が変わった――あんたはもういらないよ。朔夜会には、僕の方から伝えておくから」

「なっ……! 何言ってるのよ、何の権利があって……!?」

「そう、権利なんてないさ――誰にも、何の権利もね」

「ひっ……あっ、あぁっ……」


 ドサッ!


「人の所業の果て――それが現実なんだからね」

 泡を吹き、失神した如月くるみを見下ろし、そう吐き捨てる様に言い放ち――

「――そこで何をしている?」

 踵を返したその先に、1人の保安部員の姿が。

 咄嗟にD-TABを取り出そうとする手を――

「――! ……探したぞ、東城太助」

「! ……久しぶりだね、北郷正輝」

 相手が誰かを察したと同時に、止めた。

「もう昔のように、呼んではくれんのか?」

「僕達もう子供じゃないんだよ? ――人である事を失い、地獄に叩き堕とされて、そして今は重罪人と言う名の奴隷さ……人間に戻る事も出来なければ、出来ると思ってない」 

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