第4章 第8節
「……えーっと、ここで間違いないな?」
「うん、ありがと」
無事に避難先に辿り着いた宇佐美、裕樹一行は、避難先に指定されたダンスホールの駐輪場にてバイクを停めて、2人は目的の緊急避難所となったダンスホールに……。
「え? ちょっ、ユウ!?」
「――遅れた理由、違法召喚獣に襲われかけて、腰抜かしてたって事にするから」
「あっ……うん、わかった」
向かう前に、裕樹が宇佐美をおんぶし、カグツチに宇佐美の荷物を持たせて歩を進める。
そして、宇佐美の住んでいる寮に振りあてられたスペースを見つけ――。
「あっ、一条さん! それに――あの、どうされたんですか!? 心配したんですよ!」
「えとっ……ごめんなさい。避難する時に違法召喚獣に見つかって、襲われかけて……」
その姿を見つけた寮監が、血相を変えて駆けよって来た。
「――一応、俺のカグツチを預けてたから、無事でしたけどね」
「――ああっ、朝霧さんがいるのはそう言う事でしたか」
「そう言う事です。それで、宇佐美の避難スペースってどこです? 宇佐美って思ったよりも重いでえっ!!」
「――女性の扱いがとんでもなくヘタクソだと言う噂は、本当だったんですね」
呆れた様に、宇佐美のスペースを教えてくれた寮監に礼を言って、裕樹は宇佐美を背負ったままで教えてもらった場所へ向かい……
「……なんだこりゃ?」
カバンが乱雑に放り投げられている場と、教えて貰った場を照らし合わせ――やれやれとため息をついてから、裕樹は荷物をどかそうと手を伸ばす。
「ちょっと! 人の荷物勝手に触らないでよ!」
「おいおい、勝手にも何も、ここは……」
「遅刻したら廊下に立つなんて、常識じゃない。何よ、男におんぶして貰っての重役出勤じみた避難って」
「生徒会総書記の妹だからって、良い気になってる罰よ!」
「いっそ違法召喚獣の餌にでもなってくれれば良かったのに」
「--うわあっ、女の本性全開って感じだなあ」
--ギロリッ!
「――ここじゃ休めそうにないな。カグツチ」
寮生のほぼ全員から総スカンを受け、仕方なく裕樹は抗議の視線を浴びながら宇佐美をカグツチの背に降ろして、そこに寝転がる様に体勢を整える。
そして、休憩スペースに蹴っ飛ばされた様に、ぐしゃぐしゃになってる毛布を手にとって、宇佐美に掛けてやる。
「はい――カグツチの背中の寝心地はいかが?」
「えっと……悪くないよ」
「――じゃ、休憩スペース完成っと……どっかにベンチでもないかな?」
「? 帰らないの?」
「緊急事態で帰ったら護衛の意味ないだろ。カグツチが居るとはいえ、1人置いとく方が危険そうだし」
ちらりと、自分を睨みつけている寮生達に目を向けての言葉に、周囲は敵意を隠しもせず裕樹を罵倒し始める。
「――じゃああたしも行っていいかな? 流石に休むどころじゃなさそうだから」
「へいへい……まずはごめん」
「不吉な謝罪しないで!」
――2人がそんな会話を交わしているその時、ダンスホール付近にて。
「――ちょっとヘマしただけですよ。僕はもう戻り……え? ……わかりました」
『? どうしたの、パパ?』
「――騒動起こした付近に、一条宇佐美が住んでたらしい……生徒会総書記の妹のね」
『へえっ、そうなんだ――それでどうしたの?』
「で、大将閣下は一条宇佐美をさらって、プロバガンダ兼人質に使う為に、明け方と同時にここを占拠するって」
『――うわーっ、そりゃ災難だね』
「災難? ――人はどこかで人と繋がってる物だよ。関係ない、何て事はあり得ないさ」




