第4章 第4節
「カグツチを?」
「ああっ。こうなった以上、警戒するに越した事はないからね。常時具現化させといた方が良いんだ」
「そうだね。流石にユウを、女子寮に入れる訳にはいかないから――残念だったね。ユウも男の子なんだし、女の子と1つ屋根の下とかが出来なくて残念だったでしょ?」
「全然思わねえよ。グラビアでも見てた方がよっぽど安全だっつーの」
「――そうだね。聞いたあたしがバカだったよ」
そんなこんなで、今度こそ宇佐美は、寮に帰って来た。
自宅護衛用として、裕樹に借りたカグツチを伴って、自身の部屋の前に立った時――
「ちょっと、一条さん」
「あっ……如月先輩」
「――随分と遅かったけど、どうしたの?」
「えっと……ちょっと、友達の所に。今日休んでたみたいだから、心配になって」
「そう……あまりこういう事は言いたくないけど、外出制限が出てるんだから程ほどにね。結果を出したからって、特別扱いって訳じゃないから」
「――はい」
ふわふわの柔らかな髪をボブにし、その髪通りの柔らかな物腰とルックスで、癒し系として通ってる宇佐美と同じ芸能方面志望、如月くるみ。
『――グルルルルルッ!』
「ひっ……!」
「コラ、ダメだよカグツチ! 大丈夫、別にいじめられてる訳じゃないんだから」
『……グル』
「あの……ごめんなさい!」
「……とっ、とにかく、ボディガードが居るからって言っても、他の皆も我慢してるんだから、一条さんもその辺りは気をつけて」
カグツチに唸られて、逃げるように去っていく如月くるみの背を見て――
「……本当、なのかな?」
自分たちを襲った暴漢達を雇って、自分に何かをするつもりだった。
裕樹達は、まだ本人かどうかの確信はないし、偽名を使って接触と言う可能性もある以上、簡単に結論は出せないと言っていたが――。
「……なんかやだな、こういうの」
『グルルル』
「あっ、うん。そうだね――さて、と」
食事はすませてある為、今からは軽くストレッチを行ってから風呂に入って、それからD-Phoneにインストールした音楽の鑑賞して、就寝。
練習は既に習慣となっている為、ちょっとした荒事があったからと言って、休むなど出来ないと割り切って、Tシャツにスパッツの軽装に着替えて、身体を捻り始めた。
――その外にて。
「――とりあえず、ここでいいか」
『ねえパパー』
「だーめ。今は非常事態以外で出す気はないよ」
『ちぇーっ!』
「――さて、と」
東城太助が周囲を見回しつつ、オメガとそんなやりとりをし――自作タブレット、D-TABを操作する。
『ゴアァァァア!』
『ピキーーーっ!!
太助の操作の手の動きに合わせるかのように、ダミープログラムにより戦闘用として形成された電子召喚獣が、1体ずつ姿を現し具現化が完成するに伴い、動き出し暴れ始める。
「…………」
数体召喚し終えた所で、太助は手を止めて、その場から姿を消した。




