第1章 第1話
湾岸から伸びた鉄橋の先の、海上に建てられた巨大なスタジアム。
学園都市の住人全員を入れてなお、余裕のある巨大な建造物の中で、今日も学園都市の祭典は始まる。
「早く始まらないかな?」
「なあなあ、今回は誰が優勝するかな?」
「やっぱ宇佐美ちゃんだろ?」
学園都市の教育方針は“競争”
スポーツ然り、文化然り、芸術然り、技術然り――学園都市に点在する学校同士は、競い合う為に存在する。
スポーツに至っては、日にちを開けてのトーナメント形式練習試合を大規模に行い、文科系においても発表会という名目で、祭典が開かれる。
「さて、今年はどんな逸材が見れるのか――」
その祭典には、競合という荒波に揉まれ、不屈の精神を鍛え上げた人材を求めるスカウトも来賓として訪れる為に、文字通りの都市を挙げてのお祭り――と比喩されている。
更に言えば、それらはすべて学生間のやりとりだけで行われる。
「こちらA区域班、異常なし」
「こちらB区域班、同じく異常なし」
「こちら正面玄関、商売組の申請人数分の入場を確認しました!」
企画に準備、それから申請を始めとする様々なやりとりに、設備の管理から使用、セキュリティに保安までもが、事前に教習や訓練を経た生徒の手で行われている。
――そして。
「はーい、きつけ終わったよー」
「ありがと」
「メイクもばっちり。さ、最高の歌姫の御召物の出来上がり」
「うん、さやかさんにはいつも――」
「いいのいいの。あたしはね、宇佐美ちゃんって最高の素材をメイクしたり、衣装作ったりできるだけで、もう最高な気分なんだから」
学生の身でありながら、プロフェッショナルの自覚を持つ――それが、学園都市の生徒。
控室は共同で、各校からの代表でもある他の参加者を見回しながら……。
「――がんばらなきゃ」
参加者の1人、一条宇佐美は決意を固める。
ドカッ!
「うあっ!」
――そして、その水面下もまた存在する。
「――ああっ、こっちは終わった。これで正当な祭典になるだろ」