第4章 第3節
「――で、1人として見た事がある奴はいない……コレ間違いないな?」
「うん……そりゃあ、あたしみたいな新入りが結果出してるんだから、妬まれるのは仕方がないと思ってるけど、幾らなんでも恨まれる様な事なんて」
「――恨みや妬みに、正当な理由なんてあるかよ。ただ、それだけじゃないんだろ?」
危険だと言う事で、2人は光一の部屋に戻り――宇佐美は現在、光一と2人で光一手製の夕食を食べながら、この襲撃について話していた。
「……美味しい」
「そう? 今日のコロッケは自信作だから、そう言って貰えるとうれしいよ」
「結構多才なんだね、光一って」
「出来ない事は全然できないけどね」
「……すごく複雑」
――基本的に料理の才能が全然ない宇佐美には、光一の多才さは羨ましいと言えた。
「で、話に戻るけど……」
「うん。あたしね、前々から誰かに付き纏われてる様な、そんな気がしてたんだ」
「――その辺りは、ユウから聞いてる。それで宇宙さんに相談して、そしてユウを紹介されたんだろ?」
「……まさか、中等部の頃から何度か話題になる様な有名人が、ボディガードになるなんて思わなかったけど」
「……だろうね。けどどっちにしても、進展はあるさ」
芸能方面を志望する人間で、宇佐美を妬む者は決して少なくはない。
更に言えば、生徒会執行部総書記の妹と言う血統書つきであれば、プロバガンダとしても政治的な手札としても、大きな力となる――つまり、利用価値が高い為に、欲しがる人間も少なくはない。
だと言うのに、光一は冗談めかしている訳でもない、至って真面目な顔でそう答えた
「――どういう事?」
「何かしらの行動があれば、そこから尻尾を掴める物なんだよ。どんなにうまく隠したって、必ず痕跡は残る物なんだから」
カチャッ!
「お待たせ」
「どうだった?」
「――懇切丁寧(笑)に話をして、雇い主の名前から報酬の金額まで、洗い浚い教えて貰った」
「――こんな怖い(笑)の使い方、初めてなんだけど」
「悪いけど、メシは自分でついでくれない?」
「……ねえ、あたしがおかしいの? 意にも介さないって、あたしの方がおかしいの?」
宇佐美の呟きに対し、光一が黙々と食事し、裕樹が茶碗を手にごはんを継いでるのを見て、宇佐美は少々混乱する。
「――それはそうと、さっきの連中は?」
「ああっ、宇佐美への嫌がらせ目的だったから、保安部に引き渡した」
「……それだけだったの?」
「ああっ、それだけ――さて光一、ちょっと如月くるみの身辺調査頼まれてくれないか?」
「え? ――ちょっと待って、なんで如月先輩の身辺調査なんて? まさか……」
「――そのまさか、で済めばいいんだがな」」




