表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/61

第3章 第10節

「何度言われても答えは同じです」

「……何故拒否する? 生徒会直属のSP隊長の異動命令だ。保安部長官以上の暮らしも、名声も得られるんだぞ?」

「何度も言いましたが、生活ならば今以上の物などいりません。地位ならば、保安部長官で十分です……では、仕事がありますので、これで」

「待て! 話はまだ終わってないぞ!!」

「生徒会からの呼び出しと言えど、あまり長時間留守にはできません。では」

「待て北郷!!」

 学園都市、生徒会議事堂ビル。

 学園都市行政の中心であり、執行部の本拠地兼居住施設であり、重要会議が行われる議事堂である、生徒会執行部の所有するビルのその1室にて。

 相対していた執行部員の怒声を背に浴びながら、北郷正輝は応接室を退室してドアを乱暴に閉める。

「――それに勧誘するにしても、時と場合を考えて貰いたい物だ」

 朔夜会と名乗る一派の暴動による激務の最中に、生徒会からの呼び出しを受け、来てみればの勧誘話。

 保安部に対する措置かと思えばの、期待外れな話に落胆しつつも、腹の奥底が煮え繰り返る様な怒りを感じていた。

「あれ? 北郷じゃないか」

「ん? ――ああっ、一条か」

 生徒会執行部総書記、一条いちじょう宇宙そら

 一条宇佐美の兄に当たり、現生徒会においての総書記――学園都市の生徒会書記の最上位に位置する職務に就いている男。

「――また昇格を蹴ったのか?」

「我を通す為に、今以上の地位などいらん――それに、昇格と言えば聞こえはいいが、実際は自己保身の道具だろう」

「――すまんな。でも朔夜会って云う、反体制組織と思われる暴徒が使う違法召喚獣……あんなものが出てきた事で、執行部にも不安は広がっててな」

「……自己保身を悪い、とまでは言わん。だが、初等部や中等部の見てる前で、他人の見捨て方、責任の逃れ方を教える様な事だけはさせるなよ」

「ああっ、肝に銘じておく」

 宇宙は頷いて拳を握り、正輝のそれと合わせた。

「それはそうと、一条。お前の妹に会ったぞ」

「宇佐美に?」

「ああっ――朝霧を紹介したのはお前か?」

「そうだけど……何か変な事になってたか?」

「いや、いつも通りだ」

「……いつも通り、か?」

「ああ、いつも通りだ」

 その言葉だけで、2人は納得し合うように頷いて……

 宇宙は天を仰ぎ、はあっとため息をつき、正輝もその様子に肩をすくめて、しょうがないという感じで何も言わずにいる。

「……護衛としての腕と、ある意味変な事にならないって意味じゃ、これ以上なく信用は出来るんだけど」

「女が喜びそうな事は出来ても、雰囲気作りがこの上なくヘタクソな奴だ。男女の進展的には、よくても一進一退だろう」

「……だろうな」

 宇宙も正輝も、裕樹とはそれなりに長い付き合いがあり、お互いの事は良く理解し合っていた為、立場を超えた友人と言う感覚で通っている。

 勿論、裕樹の女性に対しての扱いのヘタクソさも、よく知っていた。

「――でもその割には、何故か女性からの依頼が多いのは何故なんだろうな?」

「ある程度に目をつむれば、理想的な護衛である事は確か――と言う口コミがあるらしい。それと北郷、時間は大丈夫か?」

「おっと……流石にこれ以上はダメだな。では」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ