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第3章 第8節

「……なんか、アンバランスね」

 光一の部屋に上がった宇佐美の第一印象は、その一言だった。

 まずベッドがあって、机にはパソコンが2台あり、使いこまれた専門書とノートが開きっぱなしで置かれ、本棚にも漫画や専門本が並んでいて、その隣の棚にはモデルガンがコレクションの様に飾られている。

 アンバランスと言った宇佐美の視線は、如何にも研究者っぽい部屋でモデルガンが飾られてる棚に向けられていた。

「光一は拳銃マニアだからな。あいつが使ってる電子ツールの2丁拳銃、自分でデザインしてんだと」

「へえっ、そうなんだ」

 電子ツールとは、電子召喚獣同様にDIEシステムにより実体化したプログラムが、道具として形になった物。

 裕樹が使ってる刀と、光一が使用している拳銃がこれに該当し、勿論武器だけではなくそれ以外の日用品等も具現化出来る。

 補足としては、食品や薬品と言った物や、機械類などを具現化する事は出来ず、他にも様々な制限がある為、その基盤となる実装プログラム設計は生半可な腕と知識と根性では出来ない。

「俺の専攻は、DIEシステムの実装プログラム――電子召喚獣や電子ツールの研究だからね。勿論、電子召喚獣の補助プログラムや電子ツールの開発を手掛けてるよ」

 そう言って、流石に女の子である宇佐美も居る手前、シャワー浴びて着替えて来た光一が、ジュースと屋台の試作品のクレープを2つずつ程手に部屋に入ってくる。

「光一は結構優秀だよ。俺のカグツチに刀のメンテ、実は光一にやって貰ってるんだ」

「へえっ……じゃあ、あたしのユラも頼もうかな?」

「そう? じゃあ知らない間柄じゃないし、格安で良いよ」

「うん、じゃあ……じゃなくて、進捗どうなの?」

「おっと、そうだった」

 光一がミニテーブルにクレープとジュースを置いて、椅子に座って右側のパソコンを操作し――ディスプレイに、昨日の黒竜が映し出された。

「まず結論から言えば、仕掛けがあったんだよ」

「仕掛け?」

「召喚獣自体には、さして特別な物はなかったんだ。使用されてるウィルスプログラムも、市販ので十分対処可能なチャチなもんだし、召喚獣のデータにもバグがなかった……不自然なまでにな」

 光一がキーボードを操作して、黒竜の頭部の個所――電子召喚獣の人工知能に当たる個所にズームされる。

「人工知能についてはブラックボックスで、ヘタに弄ろうとすれば、それだけでぶっ壊れる程に繊細な物だ。プログラム面で言えば、この個所こそが召喚獣の基盤に当たる――そこにある仕掛けがしてあったんだよ」

「仕掛け?」

「そう――簡単に言えば、マスターが居ると電子召喚獣に誤認させる仕掛けがな」

「誤認って……そんなことできるの!?」

「出来てるんだよ――現にこの黒竜、その仕掛け外した途端に素体に戻っちまったからな」

 そう言って、もう片方のパソコンを操作し――元黒竜だった召喚獣の素体を映し出した。

「で、その仕掛けは?」

「外した途端に消去された。電子召喚獣のバックアップは、本人じゃなきゃ出来ないし、その本人が居ない召喚獣プログラムのコピーなんて不可能だから……」

 そう言って、パソコンの本体からメモリカードを取り出す。

「経過の映像を残す位しか手はないからな」

「……こりゃ、しばらく荒れそうだな。保安部どころか、学園都市その物が」

「――いや、しばらくって事はないさ。示威行動を起こした以上、朔夜会とやらは学園都市の実権か機能かを狙って行動してる筈だから……」

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