第3章 第2節
『グルアァァアッ!!』
『ギガアっ!?』
カグツチが黒竜を頭を掴みあげ、そのまま地面に叩きつける。
頭を叩きつけられた状態で、黒竜がカグツチの腕を掴み押し上げようとするが、びくともしていない。
「どうやら戦闘力じゃ、カグツチの方が上みたいだな」
「――すごいわね。あんなちっちゃくて可愛い竜が、あんな大きくて強い竜になっちゃうなんて」
「そりゃ、戦闘モードのカグツチに勝てる奴なんて、数える程度しかいないよ――それで光一、シラヒメの解析は?」
「あっ、そうだった」
光一の電子召喚獣の1体、メガネをかけた真っ白な柴犬シラヒメの能力は“解析”。
解析対象である電子召喚獣の名称、成長度合い、能力値、固有能力、電子召喚獣のマスター(名前と所属学校のみ)等を読み取り、光一のD-Phoneにデータとして転送し、表示する能力。
少なくとも、自分達を標的に見据えたと言う以上、あの召喚獣のマスターには少々痛い目にあって貰うつもりで居た光一は――
「さて――え?」
「? どうした?」
「――なんで、マスターが居ないんだ!?」
“解析”により表示されたデータの、マスターの項目には、何もない。
仮に解析防止のプロテクトに阻まれたとしても、その場合は解析失敗と表示されるし、他がキチンと読み取れている以上、表示されないと言う事はない。
そして、マスターが存在しない電子召喚獣とは……。
「バカな! マスターが居ないって事は、あれで素体なのかよ!?」
「わからんが、そうなのかも」
「そんな……だってあれ、明らかにあたしのユラより高性能じゃない!」
裕樹も宇佐美も、学園都市の住人であり、電子召喚獣のマスターである身として、学園都市を代表するかの様に、信じられないと光一の言葉に反論をぶつける。
素体とは、まだ何のデータを登録しても居ない、まっさらな状態の電子召喚獣であり、その素体にマスター登録する事により、召喚獣は特定の姿形を手に入れ、学習を始める――言うなれば、電子召喚獣の赤ん坊の様な物。
「あいつを捕まえよう。ちっと調べてみる価値が……」
『モォ~ッ!!』
「なっ!?」
光一の言葉を遮る様に、黒竜同様に全身が真っ黒なバッファローが突進して来て、咄嗟に光一は横跳びを、裕樹が宇佐美を抱きかかえて、それを回避する。
『ブルルッ! ブモ――っ!!』
「――シラヒメ、あいつの解析も頼む」
『ワンっ! ワンっ!』
「こりゃあ、ただの違法召喚獣事件じゃあなさそうだな」
光一が両手の銃を構えて、黒いバッファローと相対。
「大丈夫か宇佐美?」
「うっ、うん……それよりさ、なんでお姫様だっこ?」
「咄嗟だから、その辺りは仕方なかったんだ」
「――あたし、お姫様だっこなんて初めて」
「そうなの? 俺は何回かやった事あるけど」
ドコっ!
「ぶっ!」
「なんでそう言う気分壊す様な事言うの!? 後何回かって何!? 何回かって!!」
「え? あれ、また俺なんか、変な事言ったの?」
「……あいつ等、今の状況わかってんのかな?」
『くぅ~ん?』




