第2章 第7節
学園都市保安部
これは主に学校で言う風紀委員会、都市においては治安維持組織――警察と消防署等を一纏めにした様な物であり、主に警察や自衛隊、レスキュー等を志す生徒たちによって運営されている。
必修科目を差し引けば、訓練が授業で実戦が実習であり、生活に困らない上に実習ポイントは高く、一見理想に見える形だが……
「よし、グラウンドを大きく回って10週だ!」
内容はハードで、判断基準も厳しい為に、やり遂げるだけで卒業基準になるとまで言われている位。
「ふっ……ふっ……!」
「はぁっ……はぁっ……」
その中に、朝霧裕樹と久遠光一は混ざっていた。
訓練はれっきとした授業である為、保安部員しか受けられない訳ではなく、用心棒やSPと言った仕事を生業にする生徒にも、参加が義務付けられている。
基礎訓練だけでも、そこらのスポーツ選手ではついていくのがやっとというメニューで……。
「よし、ダッシュ20往復――コラア久遠、寝るなぁっ!!」
当然のように、脱落者やついていくのがやっとという者と、こなせる者の比率が偏った内容となっている。
「…………」
「おい、毎度ながら大丈夫か?」
「…………」
「――声も出ないのかよ」
基礎訓練においては、何の問題もなくこなしていた裕樹と違い、この中どころか一般人と比較しても細い体躯の光一には、訓練についていく事がやっとで、毎度の用に死にかけているのは、既に周囲も見慣れた光景。
基礎訓練が終わり、休憩時間になってからは光一は――否、大半が死んだように、息も絶え絶えに横たわる。
「――ふぅっ」
「……いつも、こんな調子なの?」
裕樹についてきて見学していた宇佐美は、内容の過酷さもさることながら、周囲の死屍累々の有様に苦笑いしながら問いかける。
「いっつもこうだよ」
そんな受け答えに、更に顔をひきつらせ……。
「――大丈夫? 光一」
ふと、ぐったりと横たわってる光一に視線を向け、心配そうに声をかけたが反応はない。
「……うぅっ……」
絞り出すように呻くような声をあげ、光一は先ほど裕樹が用意したペットボトルを手にとって、それを顔に掛ける様にして、中の飲み物を飲む。
「……生き返った」
「よし、休憩は終わりだ! 次はペアを組んで1対1!」
「…………よっこら……しょっと」
息を整えて、光一はよろよろと立ちあがり、D-Phoneから2丁の拳銃を具現化。
宇佐美が見ると、周囲もそれぞれ槍、棍などの武器を具現化し、手に取っている。
「んじゃ宇佐美、朝霧裕樹の雄姿とくとご覧あれ」
「うん、頑張ってね。給料は上げないけど」
「何気にきついな!?」




