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プロローグ

パロディー要素が大きいです。たまに著作権侵害の恐れがあるため、伏せ字が出てくることがありますが、その場合、感想等でも伏せ字にして下さい。

「ひゃああ〜大丈夫ですかぁ〜!!」

 痛ったぁぁっ!! 何? 何なの? ひょっとして何かの呪い!? この間焼却処分した邪神モッコスの呪いッ!? いきなり身体中がジオダイン喰らったようにものごっつ痛いんだけど、この上なく! いやーん、あたし、この年でフィギュア焼いて死んじゃうの? メリーさんならぬモッコスさんでッ!

「あわわわわわ……床に這い蹲って口から謎の液体を吹き出しながら蛇がのたうち回るみたいに身体をぐねらせてあさっての方向を見ながらうめき声を上げないでくださいぃ! 怖いです、助けておかぁさーん!!」

 うっわー、しかも頭の上から、あたしの心直撃激ラブの甘ったるい可愛い声が聞こえてくるぅ〜。なになに? 何か分かんないけど、身体の痛みと反比例して心は妙に高ぶってまいりますよ、あたしとしては!

 こうしちゃいられない、声の主を一目でも見なければッ!

 あたし(十六歳。高校一年生)は最後の力を振り絞って瞳を頭上に向けた。鼻息が荒々しく吹き荒れているけど気にしない。それがあたしのスタイルさ! 女の子ダイスキッ!

 その顔を上げたあたしのつぶらなお目々(当社比)に飛び込んできたのは、澄んだ青空のような髪の色をしためがっさ可愛い外国の女の子だった。おっきな金色のイノセントアイズがあたしの脳を貫くよ!

 こりゃ眼福だよ、マジで。一度は見とかないと人生後悔するね、絶対。

 しかし、何か格好が浮ついちゃってる。何て言うんだっけ? コスプレ? そう、それだ。魔術師の。どっかの魔法学校の生徒が着ていた制服に近いね、黒いマントしてるし。指揮者が使うタクトみたいなの持ってるし。つーことは、ここ、コスプレ会場? でもあたし、何でこんなとこに居るんだろ? 確かさっまでいつものメンバーと話しながら下校していたはずなんだけど……。

 ふむ……見慣れない天井だなぁ、漆喰?

 身体の痛みが引いてきたので、そのまま仰向けになってしばらくぼうっと見慣れない天井を眺めていると、あたしの視界にさっきの女の子が割りこんできた。少し不安そうに眼に涙をためてって……何か恐れてね? あたしの事。

「あ、あぅあぅぅ……あの、その、言葉通じますかー? 出来れば通じて欲しいんですけど、お願いですー……あなたは、どなたですかぁ?」

 あれ? さっきから何か違和感あったけど、これが原因か。全く訛りのない流暢な日本語だぁ。この子、生まれてからずっと日本で暮らしてんだろーか。ま、それはともかくとして、答えてあげないと。声の感じからするに何かミョーに怖がらせちゃってるし。

 あたしは手をついて身体を捻ると部屋の床に三角座りで座り直した。

 それからとびっきりの笑顔を浮かべて(第一印象はやっぱり大事だし)女の子の問いに答える。

「あ、あたし? あたしは富良野舞。そんな怖がんないでよ。とって食べたりしないし」

 あたしが優しく、もう真心を込めてそう言うと、女の子は幾分緊張をといたみたいだった。ホッとした顔が物凄く可愛い。よしゃっ。ガッツポーズを取るあたし。もちろん心の中でだけど。

 女の子はあたしの名前を二回ほど反芻した後、首をかしげて聞いてきた。

「フラノマイ……さん? 変わったお名前ですけど、どこからいらっしゃったんですか?」

 変わった名前って……よくある名前だと思うんだけどなぁ……。ちょっと傷ついたけど、今は質問に答えてあげるのがいいかな?つっても、こっちもよく分かんないんだけども。

「どこから来たかって……それはあたしもよく分かんないんだけど、あたし、確か学校の帰りだったはずなんだよね。だったらここ東京かその周辺でしょ? ビッグ○イトとか?」

「はい? トウキョウ? ビッグ○イト?」

 すると、その女の子はキョトンとした顔でまるで初めての単語を聞き返すようにでオウムがえしで聞いてきた。

 アレー……何かこの感じってヤな予感がバリバリ的中しそうなんですか! そう、マンガとかラノベとかでは気付くといきなり異世界だったって展開の。

 いっやー、さすがに、そんな安直な展開があるわけ……。

「エトナ、一体何をどうしたら錬金魔術で人が召喚されるわけ?」

 おわっ! いきなりあらぬ方向から誰かの声がっ! そして、聞こえる笑いの大合唱。他にも人がいたんだ。気付かなかったよ。あたしってば、一つのことに集中すると、周りが見えなくなる質なんだよね。

 慌てて周りを見回してみると、女の子と同じような格好をしたあたしと同年代くらいの女の子と男の子が時々こっちを指差したりして、あたしを物珍しそうに見ていた。

 むう、何か傷つくなぁ……。

「あぅ……どうしてなんでしょう?」

 目の前の女の子がみんなの視線を受けて、縮こまりながら困ったように声を出す。

「何か間違えちゃったんでしょうかぁ?」

「間違えたって……確かにエトナはよく魔術を失敗するけど、こんなトンチンカンな失敗は初めてだよなァ」

「でも、やっぱり失敗したんだな、お前。やっぱ向いてないんじゃないか? 魔術師に」

 ん? 何か展開が見たことあるカタチに……デジャビュ?

 あたしが首をかしげた直後、人垣から起こる大爆笑。そこであたしは気付く。あー……これ、魔法使いの桃色髪のツンデレ少女の出てくるラノベの最初とよく似てるんだ。と、言うことは、これは多分、それを元にした演劇か何かなんだねぇ。納得納得。すると、この女の子がヒロイン役であたしが主人公役って事か。

 あたしとしては、ツンデレなヒロインも好きだけど、こういった気の弱そうなヒロインの方が好みだなぁ。守ってあげたくなっちゃう。

 しっかし、それでも疑問は残るね。これが演劇だとして、あたしは脚本も台本も持ってないし。そんなことより、あたしが何でこんな演劇に参加しているのかが分からない。新手のドッキリ? とりあえず、聞いてみようか。確か、この子の名前は……。

「えと……エトナ……ちゃんだっけ? 一つ聞いていい?」

 すると、あたしの前にいた女の子はびくりと肩を震わせると、

「あ、はい……何でしょうかぁ?」

震える声で言ってきた。いや、怖がんなくていいから。マジで。

 ま、とりあえず気を取り直して、と。

「あのさ、これドッキリなんでしょ? もう分かっちゃったから種明かししてもいいよ?」

 …………………。

 一瞬、周りが静かになった。やっぱバレた事に動揺してんのかな? それとも、あたし、最後まで騙された振りしとくべきだったのかな? そっちの方が面白かったかも?? あっちゃー、あたしひょっとして空気読めなかった? だからみんな固まっちゃってるわけ?

 しっかし、誰がこんな手の込んだことを……考えられるとしたら、あいつらだけど。一緒に下校してた、あたしの親友。全く……後でシめておこう。

 ……あれ? 何か様子がおかしいな。みんなが顔を見合わせて何か言ってる。えーと……「ドッキリって何のこと?」「何言ってんだ、あいつ……」……。

 それを聞いたあたしの心を一抹の不安が通り過ぎる。

 それを見計らったかのように、エトナちゃんがこちらの顔を覗き込んできた。

「あの……ドッキリって何のことですか? あたし達はいつもこんな感じですよ?」

「え?」

 エトナちゃんは嘘などついていない、真摯な瞳で言ってきた。

 絶句するあたし。凄く嫌な予感が頭の中を渦巻いていく。どんどん広がっていく。

 ……これを聞いて、外を確かめたら、あたし、気絶するかも。

 でも、聞かないと。いつまでもこんな状態で居るわけにはいかないし。

 いや、大丈夫よ、そんなこと、マンガやゲームの中だけなんだから。みんな嘘ついてるんだ。きっと大丈夫。うー……よし!!

 唇を舌で三回舐めて、十分に湿らせる。それからあたしは自分に言い聞かせるように強く頷くと、エトナちゃんに聞く。

「ゴメン、変なこと聞くかも知れないけど、ここ、どこ? 東京だよね?」

 半分自分に言い聞かせながら。確かめるように。

「あの……そのトウキョウ……というのがどこだか分かりませんが……ここはアルト大陸トリスティア東部にある『トリスティア魔術学校』ですよ?」

 エトナちゃんはそう、当然のように口にした。

 周りからクスクスとした笑い声が漏れる。それはあたしが当たり前のことを聞いたから笑っているのか、それとも今のあたしの顔があまりにもおかしなカタチで固まっているから笑っているのか。

 そんなことはどうでもいい。

 まだ、嘘だって可能性がある。

 あたしは心にまとわりつく嫌なものを振り払って立ち上がると、一目散に、あたしから一番近い所にあった窓に向かった。

 そこにいた人を払いのけ、力任せに開け放つ。

 そこに映し出されたのは、今までに見たことがないくらい透き通った青空と、一面の草原。遠くにある洋風のお城。そこには住み慣れた東京の面影など、どこにもなかった。

 呆然として、あたしは空を見上げた。そこで、決定的にあたしの世界とは違うものを見てしまった。それは……。

 空に浮かんだ、二つの連星の太陽だった。

「な……何よ、これぇぇぇぇっ!!」

 あ、あはははは……あり得ない。まさか、こんなマンガみたいな事が起こるなんて。

 全てを悟った。あたしは文字通りどっかのラノベよろしく、異世界に召喚されてしまったのだ。ぶっちゃけありえなーい。

 アレ、何か、身体から力が抜けていく……あ、何か意識も無くなりそー……。

 薄れゆく意識の中、あたしは、ああ、もしこれが夢で、次に起きた時にはフツーに家のベッドで寝てたらなぁ……とかベタな事を考えつつ、意識をブラックアウトさせた。

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