6夜 「ラブホは子宮。地球の子宮。」
12月24日、21時24分。春川一樹は長袖長ズボン、モフモフの上着を着て玄関にいた。
「散歩行ってくる」
「気をつけるのよ」
「わかった」
ガチャッ
寒っ
散歩コースをすっとばして公園に向かう。手には紙袋があった。
あいつ、何が欲しいんだろ?
〜1か月前〜
「あと1ヶ月でクリスマスかぁ。俺、子供だしプレゼント欲しいなぁ」
「はあ?俺はサンタさんじゃねぇよ?」
「えぇ〜!俺いい子にしてたのになぁ」
「いい子?どこがだよ?」
「チッ」
春川は舌打ちをした。
「わかった!なら、プレゼント交換だよ!お前は俺に、俺はお前にプレゼント用意するから!な?」
「絶対な!」
「おう」
〜現在〜
春川は公園に着くと、ベンチに座る男を、直った公園灯が照らしていた。春川が後ろから声をかける。
「よ!メリークリスマス」
「メリークリスマスイブな?」
男も春川と同様、紙袋を持っていた。
「じゃ、交換すっか?クレームは受け付けねぇよ」
「…おう。これ」
春川が渡すと同時に、男も春川へ紙袋を渡す。春川は紙袋の中を見る。紙袋の中には、ワイヤレスイヤホンがあった。
「え、マジでこれくれんの?」
「壊れてしょんぼりしてたじゃん?嬉しいっしょ?」
「ありがと!」
春川は最大級の笑顔を向ける。紙袋の奥を見ると、まだ何かあった。手紙のようだが、"プレゼント"と手書きで書かれていた。
「2つもくれんの?」
「だって、新しいワイヤレスイヤホン買ってたらっていう予備な?」
「あぁ。貰ってい?」
「いいけど、大したもんじゃないよ?」
「イヤホンより感動しないってこと?」
「多分な」
「別にいいよ。2つも貰えるってのがいいんだし!」
「そう?…見ないの?」
「帰ってからのお楽しみにすんの」
「ふーん」
2人はその後、たわいもない話をした。
今日は既に3組の男女がラブホに入っていた。クリスマスイブの効果だ。
あと何組入ってくんだろ…
「なあ、あと何組の男女が入ってくと思う?」
「さあ?賭けるか。より近い数言った方が勝ち。負けは肉まんを奢る。0時までな」
「2時間かぁ。あんた、絶対に強いだろ。せめて、23時までにしよ」
「え〜。ダメ」
「クソッ。俺は、あと4組入ってく」
「あと2組だな」
勝負は駅方向にあるラブホ。コンビニ側のラブホは、既に満室であることを示していた。
2人はそのまま他の話をしだす。
22時51分、1組目の男女が入った辺りで、2人してチラチラとラブホをうかがう。
「「…」」
すっかり話すことも無くなって、ラブホをじーっと見つめる。沈黙を破ったのは、男だった。
「今まで、ラブホで何人の生命が生まれたんだろうな?」
「……へ?」
急にどうしたんだ?
「いや。今、ふと思ったんだよね。ラブホでヤることやってるってことはさ、絶対そこで新たな生命が誕生してるわけじゃん?」
「おん」
「だから、何人くらいかなって」
「あー…」
「やっぱ、通算5万人くらいいるよな?」
ラブホを見ながら話し続ける男に、春川は思いっきり戸惑った。だが、春川は考えることをやめる。
「そうかもな」
「何人だと思う?非行&えろ少年?」
…何人?えっと…。いや、考えちゃダメだわな
「まぁ、5万くらいだろ」
「だよなぁ」
「「…」」
しばらくして、23時27分。2組目の男女がラブホへと吸い込まれる。それを見た春川は、呟く。
「男は精子で、女は卵子なのかもなぁ」
「…なるほど。いいこと言うじゃん、えろガキ!」
「えろガキは余計な?」
そんなことを話していたら、23時55分。3組目の男女がラブホに入っていった。
0時。ラブホへと消えていったのは、3組の男女だった。
「引き分け…」
「もういいよ。お互い買い合えばいいし」
「そだな」
2人でコンビニに向かう。春川は男にピザまん、男は春川に中華まんを買って、ベンチに戻る。お互い渡して、静かに食べ始めた。
0時34分。2人は立ち上がる。男が先に言う。
「またな。メリークリスマス!」
「あ…」
確かに、もう25日か…
「じゃあな!メリークリスマス!」
春川は帰ってから、早速イヤホンを使った。紙袋の奥にあったのは、12月24日に上映する映画のチケットだった。
2枚。
声かけろよ…
6夜、最後まで読んでいただきありがとうございます
1日、お疲れ様です
明日も投稿するので、お楽しみに




