表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚された俺、姉の親友と帰還を目指す旅をする  作者: しのん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/33

第三十話 二重刻印

* * *

岩陰で、ダークエルフが肩を震わせた。

赤い瞳がぎらつき、湿った声が鉱山に絡みつく。

「ゲヒャヒャ……次はあの獣人をやれ」

萬子さんの掌に炎が絡みつく。

その赤い輝きが瞳を染めた瞬間、空気が裂けた。

踏み込みは疾風のよう――キャソさんへ一直線に迫る。

「グルルガン!」

キャソさんが咆哮し、斧を振り上げる。

火花が散る衝突。

炎を纏った拳が斧に叩きつけられ、衝撃で岩壁が震えた。

金属が悲鳴を上げ、キャソさんの腕が軋む。

必死に躱し、受け止め、防御に徹するその姿が痛々しい。

「くそっ! あのダークエルフを倒せば術は解けるのか!?」

俺の声が鉱山に響く。

ネイさんが矢を番え、低く答えた。

「……奴の支配は解けたとしても、符板を破壊しなければ狂乱がおさまる保証はない」

岩陰で、ダークエルフが肩を震わせ、下卑た笑いを漏らす。

「ゲヒャヒャ……もっとだ、もっと壊せ!」

その声は、冷たい刃のように空気を裂き、耳に刺さった。

萬子さんの猛攻が続く。

炎と風が渦巻いた蹴りが唸りを上げ、壁を砕いた。

轟音と共に岩片が飛び散り、キャソさんの体が宙を舞う。

岩に叩きつけられ、鈍い衝撃音が鉱山にこだました。

「……刻印の同時発動……!」

ネイさんの声が震える。

萬子さんの両手に炎が宿り、足元には風が渦を巻いていた。

「萬子さん! やめてよ!」

俺の叫びが喉を裂く。

萬子さんの瞳が一瞬揺れ、苦悶の影が走る。

だが、肩口の黒い符板に黒い電流が走り、赤い光が更に瞳を染めた。

「うがああああ!」

萬子さんの咆哮が鉱山を震わせ、炎と風が暴れ狂う。

熱が肌を刺し、息が焼ける。

視界が揺れ、耳鳴りが鉱山の奥に響いた。

岩陰で倒れるエルさんとキャソさんを一瞥し、親方が歯を食いしばって前へ踏み出した。

その顔には恐怖と決意が混じっていた。

「……俺がねーちゃんを羽交い絞めにしてでも動きを止める。その隙にあの板をぶっ壊してくれ」

「無茶だ! 至近距離であの攻撃をくらったら……!」

俺は声を荒げる。

親方は低く笑った。

「それしか手はねぇだろうがい。俺は親方として、父親として、集落と家族を守る責任が有る」

その言葉が胸を刺す。

黒い符板の電流が激しくなり、萬子さんがネイさんに向かって突進した。

親方は大槌を投げ捨て、萬子さんに飛びつき正面から抱き着けく。

「ぐっ……!」

萬子さんが暴れ、風と炎が吹き荒れる。

親方の背を炙り、焦げた匂いが漂った。

ネイさんと俺は符板破壊のチャンスを伺うが、暴れ狂う符板に狙いが定まらない。

萬子さんの片手が拘束を抜け、炎を纏った必殺の一撃が親方の顔目掛けて放たれる――。

その瞬間、親方はまっすぐに、萬子さんの目を見た。


――とうちゃんを守って。


拳が止まった。

吹き荒れる風と炎が、その拳に収束し始める。

集まった魔力はやがて光となり、光が黄金色に変わっていく。

空気が震え、鉱山全体が息を呑むような静寂に包まれる。

「う……あああああ!」

萬子さんが咆哮し、拳を振り上げる。

親方に振り下ろされると思った刹那、

軌道が変わり、肩口に食い込んだ黒い符板を打ち抜いた。

硬質な破砕音が響き、符板が粉々に砕ける。

黒い電流が弾け、灰となって消えた。

萬子さんの体が崩れ落ち、静寂が鉱山を満たす。

熱気だけが残り、焦げた匂いが鼻を刺す。

俺は息を呑み、拳を握りしめた。

「……萬子さん」

その時、岩陰で笑っていたダークエルフの肩がわずかに震えた。

赤い瞳が見開かれ、湿った声が低く漏れる。

「……馬鹿な……支配を……解いただと……?」

鉱山に、驚愕の沈黙が落ちた。

* * *

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ