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TSしたからバ美肉ということにして配信をしてみた  作者: 大崎 狂花


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第7話 内気な子と仲良くなろう!②+おまけ(蛇足)

「えっと・・・・・・」


「えー・・・・・・」


 じゃあねー、と言ってユキは自分の部屋を出ていった。あとにはシオとキリカだけの気まずい空間が残った。


 2人で気まずくなってるだけじゃ埒があかないので、シオが安心させるようにキリカへ言った。


「その・・・・・・大丈夫だよ、キリカくん。俺もけっこう陰キャなとこあるからさ」


「ほんとですか? ・・・・・・いや、まだわからない。自分が陽キャだと気づいていないもっともドス黒い陽キャかもしれない・・・・・・」


「もっともドス黒い陽キャってなに・・・・・・?」


 まだ少しキリカくんは警戒しているみたいである。


「えっと・・・・・・キリカくんは普段どんな配信をしているのかな?」


「僕は、そうですね・・・・・・やっぱりイラストを描く配信とかそういうのが多いですね」


「あっ、やっぱそうなんだ! 俺は、えっと、ホラゲー配信とかガチャ配信とか、最近だとネタ出し配信とかもやったね」


「知ってます」


「え?」


「無門キョウカおじさん、いつも見てます」


「えっ、そうなの!?」


「はい、いつもおじさんとは思えないくらいかわいいなーと思って見てたんですけど・・・・・・リアルでもそのまんまなんですね。びっくりしました」


「そうだったんだ・・・・・・え、でもそれならコラボだって緊張することなくスムーズに・・・・・・」


「いや、それとこれとは話が別なんです。むしろ、いつも見てる人だからこそ余計に緊張するというか・・・・・・」


「そっか・・・・・・でも今のとこけっこう喋れてるし、大丈夫だと思うんだけどな・・・・・・」


「それは初対面バフがかかってるからですよ! 真の人見知りはむしろ二対面目から話せなくなっていくんです!」


「そ、そっか・・・・・・」


 どうやらそう簡単にはいかないらしい。


「・・・・・・じゃあまあ、とりあえず出かけてみようか」


「そうしましょうか・・・・・・」


 仕方ないので、ユキに言われた通りに出かけてみることにした。


 ◇


「なんか、すっごい見られてますね・・・・・・」


「そうだね・・・・・・」


 さて、外に出たシオとキリカの2人は、なぜかすれ違う人々からメチャクチャに見られていた。


「んー、やっぱりキリカくんかわいいから、人の視線を集めちゃうんだね」


「え!? いやいやいや、違いますよ! 僕を見てるんじゃなくて、きっとみんなキョウカさんのことを見てるんだと思いますよ」


「え!? いやいや、そんなことないでしょ。おじさんをそこまで見たい人なんていないって」


「いやいや・・・・・・」


「いやいやいや・・・・・・」


 両方である。シオとキョウカ、2人ともかわいいし美人なので、めちゃくちゃに見られていたのだ。


「ね、見て見てあの2人!」


「え? わ、すっごいかわいいし綺麗!」


「ね! モデルさんとかなのかな?」


 数多くの視線を受けながら歩いていく2人。


「とりあえず・・・・・・ユキに教えてもらった通りに行動してみようか」


「そうですね・・・・・・」


 シオはポケットから出したメモ用紙を見ながら言う。ユキからは2人が仲良しになるための五の提案というものを与えられていたのだ。


「えーっと・・・・・・『2人でお互いの服をコーディネートしてみよう!』だって」


「服・・・・・・ですか」


「ご丁寧におすすめの店の場所まで書いてある。とりあえずそこに行こう」


 シオとキリカの2人は、とりあえずユキおすすめという服屋へ行くことにした。


 ・・・・・・


「いらっしゃいませー・・・・・・おっ?」


 2人は服屋へ行った。自動ドアを潜ると、早速にこやかな店員が2人の前に来た。一見すると、どこにでもいるような普通の店員に見えるが────


「ゆ、百合・・・・・・」


「はっ?」


 シオとキリカの2人を見てそんな呟きを漏らした。


「あっ、すいません! 女の子2人組を見るとすぐ百合と解釈してしまうオタク脳なので・・・・・・」


「ええ・・・・・・」


 なんかクセの強い店員だった。


「すいません! ちゃんと仕事に集中しますので・・・・・・」


「よろしくお願いします・・・・・・」


「大体、僕らは女の子二人組じゃないですしね」


「えっ!?」


 キリカの言葉に驚愕する店員に、シオが説明した。


「ああ、俺たちは一見女の子同士に見えるかもしれないんですけど、実は男の子同士なんですよ」


「つまりお二人は百合に見せかけた薔薇であると・・・・・・?」


「ば、薔薇・・・・・・?」


「ありですね・・・・・・」


「あの、別に俺らはそういう関係じゃないんですけど・・・・・・」


「大丈夫です! こちらで脳内補完しますから!」


「いや全然大丈夫じゃないんですけど・・・・・・」


 とりあえず、シオとキリカはこの店員さんの意見を聞きながら、お互いの服をコーディネートするというちょっとバラエティ番組みたいなことをすることになったのだ。


 まずはキリカ。


「いやこんな服似合わないでしょ・・・・・・」


 シオがキリカに着せたのは、いわゆる執事服というやつであった。この店にはコスプレ的な服も売っていたので、着せてみたのである。


「おおー!」


「うむ・・・・・・」


 キリカはちょっと自信なさげだったが、店員さんは目をキラキラさせていたし、それを選んだシオ自身は満足げな表情をして頷いていた。


「すごい! お客様、すごくお似合いです! いやー、こういう時は女の子の服を選びがちだと思うんですけど・・・・・・」


 と、店員がシオに向かって聞くと、シオはドヤ顔で語り出した。


「いや、確かにキリカはかわいいし男の娘だからね。普通の人なら女の子の服を着せると思うよ。凡人ならね。だけど、俺みたいなプロになると違うんだよ。むしろ、こういうかわいい男の娘こそ執事服とか、王子様の服とか、そういうのが似合うんだよ」


「なるほど・・・・・・」


「あと俺、執事服大好きだから」


「なるほど!」


「ストレートなイケメン女子もいいけど、かわいい系の女の子とか男の娘とかがかっこい服着てるのもいいよね。普段とのギャップにキュンキュンしちゃう」


「それ、すっごいわかります!」


「なに言ってるんですか・・・・・・?」


 店員さんはシオの持論に共感を示していたけど、キリカはドン引きしていた。


 さて、次はシオの番だ。


「えっと、これは・・・・・・」


 顔を真っ赤にし、目をぐるぐるにしながら出てきたシオが着ていたのは、黄色い帽子に青いチャイルドスモック。いわゆる園児コスプレであった。


「これはさ、三十代おじさんには厳しい格好じゃないかな?」


 シオは顔を真っ赤にしながらキリカに聞いた。キリカはそんなことないと否定する。


「いや、そんなことないですよ! かわいいです! ね、店員さんもそう思いますよね? かわいくないですか?」


 店員さんは口元を押さえながら言った。


「いやこれ・・・・・・性癖捻じ曲がってるでしょ」


「は!?」


「いや、性癖捻じ曲がってますよこれ! 三十代美少女おじさんの園児コスプレなんて、『癖』以外の何物でもない・・・・・・」


 店員さんはこのシオにとんでもない『癖』を感じたようである。


「い、いやいや・・・・・・癖とかじゃないでしょ、普通にかわいいだけですよ・・・・・・ねえ?」


 シオも自分の姿を鏡で見ながら言った。


「いや・・・・・・これは性癖捩じ切れてるよ」


「なんで!?」


 執事と園児、お互いに癖の塊になって、少しは仲良くなれたのかもしれない。


 この後もシオとキリカはユキからの提案に従って色々なことをした。


 カラオケに行ったりとか・・・・・・


「キョウカさん、歌上手いですね」


「そう? まあ確かに前よりは(性転換前よりは)高いところ上手く歌えるようにはなったかもね。でも、キリカくんもけっこう上手いよ?」


「いやいや、僕なんかまだまだですよ・・・・・・キョウカさんの歌なんて、ほんとに無料で聞いていいのかなって思っちゃうくらいで」


「大げさだなあ、全く・・・・・・」


 他にも、2人でゲームセンターに行ったり、お互いの好きな本のプレゼンをし合ったりした。


 で、


「なんかけっこう慣れてきたかもしれないですね・・・・・・」


「そっか、それはよかった」


 どうやら、キリカはシオに慣れてきたみたいだった。


 今は最後の提案、『2人でレストランに行って食事をする』を実行している最中である。レストランの席に向かい合わせになって座っていて、キリカはハンバーグ、シオはパスタを食べていた。


 キリカはシオに慣れた。初対面バフとかなくても、二対面以降でもちゃんと話せるかもしれない。希望が見えてきたのだ。


 しかし・・・・・・


「でも・・・・・・僕はまだ少し怖いです。配信となったら、人見知りの緊張の上に、さらに配信の緊張まで加わってしまう。そうなったら本当に大丈夫なのか・・・・・・失敗してしまうかもしれない。それが、やっぱり不安なんです」


 キリカは少し俯きながらそう言った。


 シオはパスタを食べながら、そんなキリカに向かって何気なく言った。


「別に、失敗してもいいんじゃないかな?」


「え?」


「俺さ、この前配信で失敗エピソード話したんだよね」


「ああ、話してましたね」


 この前の配信で、雨の日の失敗エピソードを話していた。キリカもそれを聞いていた。


「それは自分としては恥ずかしいだけのエピソードだったんだけど・・・・・・視聴者のみんなはさ、かわいいって言ってたんだよね。かわいいって。俺にはなにがかわいいかわかんなかったんだけど・・・・・・」


 シオは、フォークを置いて真っ直ぐにキリカの目を見ながら言葉を続ける。


「Vtuberっていうのはそういうものだと思うんだよ。自分にとってはただの失敗でも、それを見るファンのみんなは、かわいいって思ってくれるし、面白いって思ってくれる。恥ずかしい失敗、黒歴史でも、みんなが『面白い』や『かわいい』にしてくれる・・・・・・」


 シオは言った。


「だからさ、別に失敗してもいいと思うよ。Vtuberなら、きっとそれも成功なんだよ」


「・・・・・・」


「もちろん、俺もフォローするよ。だから、ファンのみんなを信じて、俺を信じて、やってみようよ。コラボ配信」


 シオはそう言ってキリカに笑いかけた。キリカはふふっと笑みをこぼして言った。


「・・・・・・ずるいですね、キョウカさんは。そんなふうに言われたら、いやとは言えないじゃないですか」


 ・・・・・・こうして、シオとキリカのコラボ配信が決定された。


 キリカはめちゃくちゃ緊張して、案の定失敗したが、あわあわするキリカは可愛らしく、面白かったという。キョウカのフォローもあったし、コラボ配信は大成功で終わったのだった。




 おまけ(蛇足)


「おばあちゃーん、帰ってきたよー」


 シオはピンポーンとチャイムを鳴らしながら、家の中に届くように大声で言った。


「はいはいはい、今開けますよ」


 そう言って、その家の中から出てきたのはおばあちゃんだった。


「やっほー、おばあちゃん。遊びに来たよー」


 今日、シオはおばあちゃんちに遊びに来ていた。お正月とかお盆には、こうしておばあちゃんちに来るのがシオの家の習慣なのだ。


 いつもは家族一緒に来るのだが、今年は生憎と予定が合わず、こうして先にシオ1人で来たのである。


 おばちゃんはにこにこしながら玄関の扉を開けて出てきたわけだが、シオの姿を見てちょっと固まった。


「えっと・・・・・・ひょっとしてシオちゃん?」


「うん、そうだよ」


「あれまあ、シオちゃんは女の子だったかねえ」


「いや男だよ。バリバリに男だったよ」


 実の孫が急に女の子になって遊びに来て困惑するおばあちゃんに、シオは事情を説明した。


「あらあら、そうかい病気で・・・・・・それは大変だったねえ」


「まあ最初は大変だったけど、今はそれなりに楽しくやってるよ」


「そうかい、それなら良かった」


 シオはおばあちゃんちの居間に上がった。今ではテレビがついていて、お正月特番のお笑いバラエティが流れている。


 そして、テーブルの上にはきんぴらごぼうやら煮物やらうどんやらが所狭しと並べられていた。


「わ、おいしそうだね」


「飲み物もあるよ。デザートも」


「いいね! 飲み物はお茶がいいかな」


 シオはこたつの中には入り込んだ。


「シオちゃんが女の子になっちゃったなら、テレビももっと女の子っぽい番組の方がいいかねえ」


「いや、中身まで女の子になっちゃったわけじゃないから大丈夫だよ・・・・・・」


「料理ももっと女の子っぽいものの方がよかったかも・・・・・・」


「いや、大丈夫だよ・・・・・・でもマカロンはちょうだい」


 と、まあそんな感じでシオがおばあちゃんちののんびりとした空気感を堪能していた時のことだった。


「ん?」


 居間の襖の陰から見たところ4、5歳くらいの小さな女の子がこっそりとシオのことを見ていることに気がついた。


「この子は・・・・・・?」


「ああ、この子はシオちゃんのいとこの、のんちゃんの子供のサクラちゃんだよ」


「ああ、のんちゃん。あの子結婚したんだ」


 どうやら、この子はシオのいとこの子供であったらしい。おばあちゃんはそのサクラにちょいちょいと手招きした。


「おいでサクラちゃん」


「初めまして。えーっと・・・・・・」


 シオはいとこの子供から見た自分がどういう立ち位置になるのかわからなかったので、とりあえずおじさんと名乗ることにした。


「おじさんだよー」


 とてとてと走り寄ってきたサクラは、そんなシオを見上げながら不思議そうに言った。


「お姉ちゃんに見えるけど、おじさんなの?」


「えっと・・・・・・中身はおじさんなんだよ」


「ふーん・・・・・・よくわかんないけど、まあいいや。おじさん」


「なんだい?」


「膝の上に座ってもいい?」


「え?」


 こうして、性転換後初のおばあちゃんちは、膝の上に女の子を座らせて過ごしたのだった。


「えっと、おじさんの膝の上に座ってて大丈夫かな・・・・・・?」


「大丈夫だよ! すっごく柔らかくていい匂いがするから!」


「そ、そうなの・・・・・・?」


「はいおじさん! あーん」


「え? あ、あーん・・・・・・」

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