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TSしたからバ美肉ということにして配信をしてみた  作者: 大崎 狂花


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第11話 見守りホラー配信②/メイド喫茶的な

「さーて、今日もユキに見守られてホラー配信やっていくよー。前回の続きから!」


 今日の配信も見守りホラー配信だ。前回と全く同じでユキが隣にいる。


「前回の配信は大盛り上がりだったもんねー」


「大盛り上がりだったかなあ・・・・・・? なんか俺、記憶ないけどけっこう恥ずかしいことやったような気がするんだけど・・・・・・」


『かわいかったよ』


『てぇてぇだった』


「てぇてぇだったのか・・・・・・? ま、いいや。とりあえず始めよー!」


「おー。今回はすっと始めるんだね?」


「こういうのはぐだぐだせずに一気に飛び込んだ方がいいのかなって思って・・・・・・というか、ユキは大丈夫なの? 前回はけっこう平気そうだったけど、この先かなり怖いところあるらしいよ?」


「ふ、まあ私はホラー得意だからね。キョウカちゃんとは違って怖がったりはしないんだよ」


「ほんとお? その言葉、フラグにならないといいけどねー」


 と、まあそんな感じでホラゲーを始める。


「うあっ! またゾンビだ・・・・・・」


「今度はしゃけを投げてきたね」


『しゃけを投げてくるゾンビってなに?』


『しゃけだあああああああ!!!』


 襲い来るゾンビからなんとか逃げながら、先へと進んでいく。


 と、ゲームの中の洋館の一室で、洋服ダンスのようなところに隠れている少女に出会った。


「お? この子は・・・・・・」


「このゲームのヒロイン・・・・・・とかかなあ。けっこうかわいい子だね」


「そうだねー」


「・・・・・・イケメン女子じゃなくて残念だったね?」


「いやいや、そんな人をイケメン狂いみたいに・・・・・・俺だっておじさんなんだから、イケメン女子だけが好きなわけじゃないよ。ちゃんとかわいい女の子も好きだから」


『ほんとお?』


『それにしてはそこまでテンション上がってなくないですか?』


「上がってる上がってる、上がってるって! あー、かわいい女の子だ! いいなー、こんなとこでこんなかわいい女の子に出会えるなんて、ラッキーだなあ。やっぱりイケメン女子よりかわいい女の子だよね」


『ダウト!』


『いつもかわいい女の子をほっぽり出して、イケメン女子にメロついている姿しか見たことないです』


『嘘が下手くそだねー、キョウカおじさんは』


「ぐう・・・・・・」


 まあそれはともかく。


 ゲーム画面の中を見つめていたユキが、ふとこんなことを言い出した。


「ねーねー、よく見たらさ、この子キョウカちゃんに似てない?」


「そうかな? そんなに似てないと思うけど・・・・・・」


『いや、よく見たら・・・・・・』


『確かに似てるな。すっごい女の子らしくてかわいいところが似てる』


「いやいや、こんな女の子らしくてかわいい子に俺が似てるわけないでしょ。えっと、とりあえずこの子喉乾いてるらしいからさっきそこで拾った炭酸水をあげよう」


《うう・・・・・・ほんとは炭酸水は苦手なんですが、こんな状況下でそんなこと言ってられませんよね・・・・・・》


「・・・・・・」


「あれ、キョウカちゃんも前に炭酸苦手だって言ってたよね? やっぱ似てない?」


「いや・・・・・・ただの偶然じゃない?」


「じゃ、試してみよっか?」


 ユキはそういうと、キョウカにいくつかの質問し出した。


「好きなスイーツは?」


「マカロン。最近はフィナンシェとかも好きになってきたかな・・・・・・」


《好きなスイーツですか? マカロンです。最近はフィナンシェとかも好きですね・・・・・・》


「最近あった良かったことは?」


「えっと・・・・・・ちょっとお高めのトリートメントを買ったんだけど、それがすっごく良くて、髪がツヤツヤ綺麗になったことかな。やっぱりなんでもお高めの物はいいね」


《最近、すっごくいいトリートメントを買ったおかげで髪がツヤツヤ綺麗になったんですよ! やっぱりちょっとお高めの物を買ったからですかね・・・・・・。無事この洋館から抜け出して、ちゃんと使い切りたいです。本当に高かったんですよ・・・・・・》


「最近興味あることは?」


「えっと、紅茶の勉強とかしたいかな。淹れ方とか、茶葉の種類とかを知りたい・・・・・・」


《最近紅茶のお勉強とかをしたいと思ってたんですよ。淹れ方とか、茶葉の種類とか・・・・・・》


「いやめちゃくちゃ似てるじゃん。ていうか同一人物じゃね?」


「まさかここまでパーソナルな部分が被るとは・・・・・・」


『やっぱりキョウカおじさんって女の子なのでは?』


『いや、ヒロインの子と被ってなくてもマカロンとフィナンシェが好きで、トリートメントで髪をケアしてて、紅茶のお勉強をしたいと思ってるとかちょっと女の子すぎる。ゆえに、おじさんは女の子である。QED.』


『証明終了されちゃったね・・・・・・』


「ぐう・・・・・・」


 ヒロインと色々なことが被るということは、シオにもヒロインの素質はあるのかもしれない。正統派美少女ヒロインおじさん・・・・・・白いワンピースも似合うのだから、清楚系美少女ヒロインおじさんでもある。おじさんは清楚系美少女。まあそれはともかく・・・・・・。


 ヒロインも出てきて、いよいよホラゲーの方は佳境になっていた。


 それにつれて怖さも増していき、そして──


「きゃあっ!?」


 今の声はシオが出したのではない。そう、今まで全く怖がらなかったユキが、加速度的に増していく恐怖についに悲鳴をあげてしまったのである。


「おや? 今のかわいい悲鳴は・・・・・・」


「・・・・・・」


「やー、やっぱりユキさんの配信序盤の発言はフラグだったか。今まで散々人のこと揶揄ってきたのに、怖がって悲鳴あげるなんて、ちょっと恥ずかしいと思うけどなー?」


「うるさいな・・・・・・」


 ここぞとばかりに揶揄うシオに、ユキがやや恥ずかしそうに言い返した。


『おじさんのからかい口調いいなー・・・・・・ユキさん羨ましいなー・・・・・・』


『これは・・・・・・逆転だッ! タイトルに逆転ありって書いといてください!』


『逆転なしもいいけど、逆転ありもそれはそれでいいよね』


「みんななんの話してんの・・・・・・?」


 まあとにかく、これでユキとシオの利害が一致した。2人とも怖いので、とにかく早く終わらせたいのである。


「よし! 超速でゲームクリアするぞー!」


「おー!」


『おお、何だか熱い展開になってきたぞ・・・・・・!』


『今までいがみあっていた2人が手を取り合って一つの目的に向かって進む・・・・・・これが青春か』


「いや違うと思うけど・・・・・・」


 2人は協力してこのゲームをクリアしていく。具体的には、相互幼児プレイなどをして2人で恐怖を乗り切った(視聴者は、俺らは一体何を見せられているんだ・・・・・・と困惑していた)。


 ゲームをクリアしたので、この回で見守り配信は一応終わりとなったが、けっこう評判が良かったのでまたやるかもしれない。


 ◇


 さて、そんな配信があった次の日。


 シオが本を読んでいる時のことだった。


 突然スマホがブーッと振動した。


「ん?」


 どうやら、誰かからメッセージが来たみたいである。シオは一旦本を置いてスマホを見た。


 そして、メッセージを送ってきた人物の名前を見て驚愕した。


「これは・・・・・・!」


 メッセージを送ってきた相手、それは前にナンパからシオのことを救ってくれたイケメン女子、居竹ルウだったのだ。


 シオは爆速でそのメッセージを開いた・・・・・・。


 ・・・・・・


「遅くなりましてすいません!!」


 その次の日、シオは待ち合わせ場所に来ていた。


「いやいや、いいですよ。こちらが急に無理を言って来てもらったので、むしろ私の方こそ申し訳ないです」


「えっと、それで・・・・・・バイトの助っ人が欲しいんですよね?」


 今日シオがルウに呼ばれた理由。それは、なんでも急にバイトで欠員が出てしまったので、その助っ人に来てほしいというものだった。シオは即答でOKしたのである。イケメン女子には弱い。


「本当にすいません・・・・・・お礼は弾みますので・・・・・・」


「いえいえ。ちょうど暇してたところだったんで、大丈夫ですよ。・・・・・・はあ、それにしてもルウさん今日も素敵だ・・・・・・」


「? 何か言いました?」


「いえ、何も」


 なんだか鈍感系主人公とヒロインみたいなやり取りをしたところで、シオは早速聞いた。


「ところで、俺具体的な内容を全然聞いてないんですけど・・・・・・バイトってどんなのなんですか?」


「ああ、まあ、それは実際にバイト先を見てもらえればわかるでしょう。こちらです」


 と、ルウが手で示した方向を見る。そこには喫茶店があった。もちろん、ただの喫茶店ではない。そこは──


「えっと・・・・・・『百合姉妹メイド喫茶』・・・・・・ですか?」


 百合姉妹メイド喫茶・リリィシスター。看板には明らかにそう書いてあった。なんだそれ。


「はい。『百合姉妹メイド喫茶』。私のバイト先はそれです」


「なんかめちゃくちゃ盛りに盛ってますね・・・・・・えっと、業務内容は・・・・・・」


「そのまんまです。姉妹メイドになって百合をします。それが業務内容です」


「は、はあ・・・・・・」


 未だかつて聞いたことのない業務内容だ。


「ええと、それで俺は何をやればいいんですか? キッチンとか・・・・・・?」


「ホールをやってもらうことになります。つまり姉妹メイドとして百合をしてもらうことになります」


「ええ・・・・・・」


 それは・・・・・・なんというか、色々と大丈夫なのだろうか。法律とか・・・・・・大体、シオは男だ。体は女子でも心は男なんだ。そんなシオが女の子とイチャイチャしたとして、果たして百合と言えるだろうか? 否だ。


 そんなものは百合とは言えまい。例えるなら、それは邪道寿司のようなものだ。回転寿司とかによくあるハンバーグ寿司とかあんな感じ。それはそれで確かにうまい。確かにうまいが、それは伝統的な正統寿司とは違ったものだろう。それと同じで、言うなればそれは邪道百合だ。正統な百合とは似て非なるものだろう(※あくまで個人の偏見です)。


 というか、メイド服を着て公開姉妹百合プレイとか普通に恥ずかしい。断ろう。


「あの、すいませんがおことわ──」


「今回の相手役は私になりますね。まことに申し訳ありませんが、私と百合をしてもらうことになります」


「やりましょう」


 シオはとことんイケメン女子には弱い。


 ◇


「あなたが山本シオさん? よろしくねー」


 そう言って店長はシオに向かって手を振る。店長自身も働いているようで、メイド服を着ていた。


「三十代の男の人っていうから少し心配だったけど・・・・・・いやー、杞憂だったね! 全然女の子にしか見えない! めちゃくちゃ髪もツヤツヤで綺麗だし!」


「あ、ありがとうございます。最近ちょっとお高めのトリートメントを買ったので・・・・・・」


「トリートメントとかするんだ・・・・・・ますます女の子にしか見えないな・・・・・・」


 と、まあそんな会話はともかく、ルウは店長にずっと気になっていたことを聞いた。


「あの・・・・・・店長。今更言うのもなんですが、山本さんを働かせてもいいのでしょうか? 山本さんはこんな見た目をしていますが男ですし、『百合』にはならないのではないかと思って・・・・・・」


「あ、それは俺も気になってました! どうなんですか?」


 ルウとシオが一緒になって店長に聞くと、店長はあははと笑って言った。


「大丈夫大丈夫! 黙ってたらバレないって!」


「そんなんでいいんですか・・・・・・?」


「まあ仕方ないよ。他に助っ人になってくれそうな人に、心当たりもないわけだしね」


「まあ、それはそうですが・・・・・・」


 仕方ない、ここはシオに頼るしかないだろう。景品表示法違反にはなるが、仕方がない。


「じゃあこのメイド服に着替えてねー」


「は、はい・・・・・・」


 シオはイケメン女子ルウと百合姉妹メイドになることになった。


 ・・・・・・


「うう・・・・・・似合ってるのか・・・・・・」


「いやめちゃくちゃに似合ってるけど? え、本当に男なわけ? 自信なくすなあ・・・・・・」


 メイド服を着たシオを見て、店長がそう言った。店長はシオのメイド姿が似合いすぎていて呆然としていた。


「三十代おじさんのメイド服姿に需要とかありますか?」


「あります。美少女メイドおじさんなんて需要以外の何物でもないです」


 シオの着たメイド服は、秋葉原とかでよく見るかわいい系のメイド服だ。スカートがけっこう短いし、肩出しである。


「本当におじさんなんですか? 随分綺麗な肩してますね・・・・・・触ってもいいですか?」


「へっ!? あ、あの・・・・・・」


「店長特権ということでここは一つ!」


 と、まあセクハラをしていた店長の頭に、ルウの手刀がバシンと落ちた。


「ちょっと、やめてください。セクハラで訴えますよ」


「ああ、ごめんごめん」


 シオは助けてもらったことに少しキュンとしながらも、ルウの方を見た。お礼を言おうと思ったのだが、その姿を見て言葉をのんでしまった。


 ルウもシオと同じような感じのメイド服を着ていたのである。ルウはイケメン女子だし、普段の格好からして男っぽいボーイッシュな感じの服が多い。実際シオが見てきたルウの服装はそういうものが多かった。


 しかし、今のルウの服装は可愛らしいメイド服だ。


 普段ボーイッシュな服しか着ないイケメン女子のかわいい格好でしか得られない栄養素もある。わかりきっていた方程式だが、シオは改めてそれを再認識した。端的に言えばギャップがすごい。なんかちょっと慣れてないっぽい様子なのもすごくいい。


「ルウさん、メイド服すごい素敵ですね・・・・・・!」


「そ、そうですか? いや、山本さんもよく似合ってますよ」


 なんか妙な空気感になる2人。


「おっ、早速百合かい? いいねー。お客さんの前でもそんな感じで頼むよ!」


 そんな2人を見てそんなことを言う店長。そうこうしているうちに、店を開ける時間になった。シオはとりあえず他の従業員たちに挨拶をしてから、ホールへ出た。店内に色んな形のメイド姉妹百合が溢れる。ここが楽園か。


 で、シオとルウの2人が店内に立って適当に雑談していたら、1人の客に指名された。この店にはけっこう女性の客が多く、シオとルウを指名したのも女性の客だった。


「ご指名ありがとうございます、お嬢様」


「えっと、ありがとうございます。お嬢様」


(あっいいなあ。俺もルウさんにお嬢様って呼ばれたいなあ・・・・・・)


 シオは羨ましく思いながらも、とりあえず今は目の前の客──お嬢様に集中する。


 お嬢様は目をキラキラさせ、シオとルウの方を見ていた。どうやら百合が好きらしい。この店に来るのだから、当たり前といえば当たり前だろう。


 とりあえず、シオとルウの2人は自己紹介をすることにした。


「えっと、私がルウ、姉で」


「俺がシオ、妹です」


 ルウが姉でシオが妹。そういうことになった。


「わあ・・・・・・やっぱり! 見た感じルウさんが姉でシオさんが妹っぽいなーって思ってました!」


(見た目からもう妹っぽいのか? 俺は・・・・・・)


 でもまあルウさんの妹になれるは嫌ではない。むしろ大歓迎だ。


 さて、とりあえず注文だ。お嬢様はメニューを広げた。


「この日のためにいっぱいバイトを頑張ったからなー・・・・・・奮発するぞー!」


 しばらくメニューを眺めていたが、やがて注文した。


「えっと、このオムライスを・・・・・・」


 オムライスを注文するつもりらしい。メイド喫茶においては、割とオーソドックスなメニューだ。


 だが、お嬢様が注文したのはただのオムライスではなかった。


「あーんオプション付きで、お願いします!!」


「あーんオプション・・・・・・?」


 ちょっと耳慣れない単語が聞こえた。なんだそれは。


 シオが謎の単語に戸惑っていると、ルウがこそっと教えてくれた。


「この店はね、料金を上乗せするとオプションがつけられるんだよ」


「そんないかがわしいお店みたいな・・・・・・」


「あーんオプションっていうのは名前の通りあーんのオプションだよ。普通の料理の料金に上乗せするとつけられるんだ」


 どうやらそういうことらしい。つまりこのお嬢様はオムライスにあーんのオプションをつけたらしい。


(あーんのオプションか・・・・・・メイドさんからあーんってしてもらえるオプションなのかな? その場合、俺とルウさんのどっちがするんだろう・・・・・・)


 シオはそんなことを考えつつも、ルウとともにお嬢様と話しながら待っていた。やがて、オムライスが来た。これといって特徴のない、ごく普通のオムライスだ。


「では、失礼して・・・・・・」


 ルウがスプーンをとる。と、いうことはルウさんがあーんってするのかな・・・・・・羨ましいな・・・・・・なんてぼんやりとシオが思っていると、ルウはオムライスの一欠けをスプーンの上に乗せて


「はい、あーん」


 と、なぜかシオに向かって差し出してきた。


「・・・・・・へ!?」


 唐突なことに、シオが混乱しているとルウがこそっと教えてきた。


「あーんオプションというのは、従業員の百合メイド姉妹同士であーんして、それをお客様が眺めるというオプションなんです」


「・・・・・・何そのオプション?」


「そういうわけなんで、私とこういうことをするのは嫌かもしれませんが、我慢してください」


「い、いや別に嫌ということはないですけど・・・・・・むしろ・・・・・・」


「? むしろ、なんですか?」


「いや、なんでもないです・・・・・・」


 こっそりと話しているつもりだったが、このやり取りはお嬢様の耳に届いていた。そして、百合の匂いを感じたお嬢様は、ものすごくにやにやしていた。


「はい、あーん」


「あーん・・・・・・」


 顔を真っ赤にしながら、シオはあーんした。


「どう、美味しい? シオ」


 今のルウは姉だ。にこっと笑ってルウはそう言う。シオは、顔を真っ赤にしながらこくりと頷いた。


「うへへへ・・・・・・」


 それをお嬢様が邪悪に笑って眺めていた。よくわからない光景だった。


(なんだこれは・・・・・・夢すぎる。こんな、こんなことがあっていいのか・・・・・・?)


 シオはこの夢みたいな光景に終始困惑していた。


(こ、こんなのが業務終了まで・・・・・・? 俺の身が果たして保つだろうか・・・・・・)


「さあてじゃんじゃん行きますよー! 次はなでなでオプションをお願いします!」


(本当に保つだろうか・・・・・・)


 その後も、シオとルウはお嬢様のオプション攻撃を受け続けた。


 なでなでオプション。もちろん妹であるシオが姉であるルウになでなでをする。シオは死ぬ。


 顎クイオプション。シオがルウに顎クイをされる。シオは死ぬ。


 お姫様抱っこオプション。シオがルウにお姫様抱っこをされる。シオは死ぬ。


 と、まあ色々とオプション爆撃を喰らった結果、シオは真っ赤になってプシュプシュと頭から煙を吐いてしまっていた。


「だ、大丈夫ですか?」


「は、はい。大丈夫でしゅ・・・・・・」


 大丈夫ではなかった。シオはもうすでに何回も死んでいた。しかし、張り切ってこの店へ来たお嬢様はオプション爆撃を止めない。


「次のオプション!!」


「ま、まだ頼むんですか・・・・・・?」


「はい! 今日という日を楽しみにしてきたんで!!」


 お嬢様はメニューを見ながら、「んー・・・・・・」と少し考えるような素振りを見せたが、やがて顔を上げるとこんなことを言い出した。


「あの・・・・・・アイスキャンディーにあーんオプションをつけることって出来ますか!?」


「え?」


 お嬢様はなぜかはあはあして、目をギラつかせている。


「この店のルール上は何も問題はないはずですよね? ふふ・・・・・・このお店のアイスキャンディーは棒タイプのアイスキャンディー!! それをルウさんが舐めさせる、つまりは・・・・・・ふふふ・・・・・・」


「そういうことか! くそ、卑劣な・・・・・・!」


 お嬢様の注文の真意に気づいたルウは、してやられたと悔しそうな表情をする。


 一方のシオはよくわからず、頭にはてなマークを浮かべていた。


「えっと・・・・・・どういうことですか?」


「え、えっと、それは・・・・・・」


 説明しにくい。ひじょーに説明しにくい。なかなか際どいアレだから・・・・・・。


「やりなさい! これはお嬢様命令ですよ!」


 お客さんは完全にお嬢様になりきってしまっている。目がギラギラしていて鼻息が荒い。なんか怖い。


「やりましょう。ル・・・・・・お姉様。お嬢様がおっしゃることですから・・・・・・」


 シオはよくわからないながらもそう言った。


「ぐ・・・・・・まあ仕方がない」


「やったー!!」


 シオはアイスキャンディーをあーんされることになった。


「ルウさん! 立って舐めさせてください!」


 ルウは渋々立ち上がってシオにアイスキャンディーを差し出した。


「えっと・・・・・・じゃあ、舐めればいいですか?」


「ああー、いいね! シオさんそのセリフいいですよー!」


「は、はあ。では・・・・・・」


 シオは差し出された棒状のアイスキャンディーを舐めた。


「んっ、んむ、ん・・・・・・」


「いいですねー! いいですよー!」


 お嬢様がいつの間にか監督みたいになっている。


「いいですねー! シオさん! もうちょっと上目遣いで! ルウさんの顔をじっと見るような感じで!」


「こ、こうですか?」


「ああー!! いい!! いいですよ!! 興奮してきた!! もうちょっと吸いながら舐めるような感じでお願いします!!」


「す、吸いながら舐める??」


「あの、お嬢様、鼻血出てます・・・・・・」


 シオはよくわからないながらもお嬢様の注文通りにルウから差し出されたアイスキャンディーを舐める。


「なんか、すっごいいけないことをしてるような気分になる・・・・・・」


 その結果、ルウは何かいけないことをしているような感覚を植えつけられたのだった。


 ・・・・・・


「あの・・・・・・ほんとにすいません」


 さて、全て終わって、お嬢様はすっごい謝っていた。流石にアイスキャンディーをグレーな感じで舐めさせるのは色々とまずかったらしい。


 でも、謝りながらも、お嬢様の顔はどことなくツヤツヤしていた。ほしかった成分をたっぷり摂取できたようである。


「全く・・・・・・次はないですよ? いいですか?」


 ルウはそんな感じで注意をする。


「はい、すいません・・・・・・」


 お嬢様はそういうと、シオに向き直る。


「シオさんも、すいませんでした。なんか変なことをしてしまって・・・・・・」


 シオとしては最初から最後まで、アイスキャンディーのあれは何がまずいのかよくわからなかった。むしろ、イケメン女子のルウとたくさん触れ合わせてくれたこのお嬢様には感謝しかない。だから、シオはこう言った。


「顔をあげてください、お嬢様。俺は今日色んなことをやれて(イケメン女子と百合メイド姉妹プレイが出来て)楽しかったですよ」


 そう言って、シオはにこっと笑った。


「うあああああ・・・・・・純粋すぎる! こんな可憐な女の子にあんなことさせたの、今更ながらめちゃくちゃいけないことに思えてきた・・・・・・!」


 なぜか苦しみ始めるお嬢様を、シオは不思議そうな顔で見るのだった。



 おまけ(蛇足)


「あ、やっと起きた。もう放課後だよ?」


 動画をつけるとすぐに、笑顔を浮かべたシオがそんなふうに語りかけてくる。時刻は夕方らしい。オレンジティーのような色の透き通った落日の光が、斜めに差して、シオの横顔を綺麗に照らしていた。


 場所は放課後の教室。シオは、制服を着ていた。


 シオはちょっと怒ったような表情になってこう言った。


「まったく、いつも言ってるでしょ? 寝てないでちゃんと授業聞かなきゃダメだって」


 シオは怒った感じでそう言うと、こちらへ向かって説教を続けた。


「君は昔っからそうだよね。いつもいつも寝てばっかりで授業を聞かない。それで試験前になると焦ってノートを写させてくれって頼んでくるんだから。もう、たまにはちゃんとしないと、ノート写させてあげないからね!」


 さて、シオは少し顔を赤くしながらこう言った。


「それで、えっと・・・・・・今日は、二月十四日だよね? うん、そうだよね。だから、その、これ・・・・・・」


 シオが渡してきたもの。それはチョコレートだった。


「チョコ、あげる」


 照れながら、ややむすっとした感じでそう言う。


「え? い、いや手作りとかじゃないから! ぜ、全然市販品だし! 真夜中まで一生懸命作ったやつとかじゃないから! 違うから!」


 シオは、照れを押し隠すように怒ったような口調で言った。


「ほら、帰るよ! えっと、今日は君のお母さん帰りが遅くなるらしいから・・・・・・夕飯、作ってあげる」


 バレンタイン。いつも見てくれている視聴者へ、シオから脳が回復される動画のプレゼントだった。


 この動画はバレンタインに女神おじさんが降臨したとして話題になり、後の世まで語り継がれることになる、いわゆる『バレンタイン女神おじさん神話』の起源となるのであった。

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