へらせ!
我輩は、二足のわらじを履く、なんちゃって漁師である。
船は ちんまいし、とれる魚も少ない。
ぶっちゃけ、赤字である。
(かと言って、本格的には、やりたくないでござる……。)
だから、なんちゃって仲間と つるんで、息のかかった議員を当選させ、役人には定年後の漁師ギルドへの天下りを約束して、補助金を出させて食ってきた。
(議員にも分け前は やってただ。)
本格派の漁師は、でっけぇ船で魚を沢山とってるから、魚を安く売っても、じゅ~ぶん 黒字。
だが、そんなんでは困るのである。
我々は、運命 共同体──息のかかった議員と天下り狙いの役人に働きかけ、本格派が魚をとる量──魚を市場に出す量を制限させた。
(ライバル潰しである。)
最近は、国にカネが なくなったとかで、そんならと 赤字国債を発行させることで補助金を出させてきたが、それも、もー ダメに なった……。
そーこーしてる内、たまたま不漁やら なにやら重なって主食の魚が足りなくなった。 (国中、パニックになっただ。)
原因の一つは、本格派の漁師が
"こんままじゃあ、食ってけねぇ……"
ってんで、獲物を貝とか別のモノに切り替えたことだなぁ。
(オラたちが原因だぁ……。)
んだども、ンなこたぁ、オラたちにゃ、かんけーねぇ!
今こそ、再び補助金を出さす時!
マスコミにカネぇばらまいて接待して、
"全ては、国の無策!"
と叩かせ、世論を誘導。
オラたちの黄金時代が、再び幕を明けるだよ!
国から、飢饉用に溜め込んどけ' 言われて、山のよ~に取っといた干し魚……。
こないな時のためのモンなんやから、さっさと放出せんかい!てエライさんから言われたんで、ウチらは てんや わんや です。
何百年も前に作られた、ふっるい蔵に仕舞いこんどるから、急に言われても出荷が追いつかん……。
…… は?
なぜに、そないな こと なっとるんやぁ、やて?
お前さん、アホやなぁ?
よう、考えてみぃ? 倉庫やら設備やらを近代的なモンにしてまったら、働く人数 少のうて済んでしまうやないか!?
そうなったらなぁ、天下りする お役人様やら、わてら お相伴に預かっとる町人の旨味が のうなってしまうやないか!
よう、考えてモノを言いなや!
ええか? 世の中、力 関係が全てや!
強きを助け、弱きを挫く! 当たり前のことやん?
やったモン勝ちやがな!