水と風、青空。~彼女への思い~
☆注意☆
この短編はあるサイトで連載していた小説の番外編です。
初めての人が読んでも分かるように努力したつもりです。
もし分からない事や誤字・脱字等がありましたら
そっと指摘してもらえるとありがたいです。
沙緒梨がいなくなって五年が過ぎた。俺はまだ沙緒梨との別れから立ち直れないまま十七歳になった。得たものなど何もない。あえていうなら、どうしようもない空白感と苦々しい過去を知っただけだ。
沙緒梨。どうして俺に話してくれなかったんだ。できることなら何でもしたのに。今更そう思ってみても沙緒梨はもういない。いないんだ。分かってる。分かってるんだ。だけど、心が………。
天使の規則なんて知らん。俺は天使じゃない。悪魔だ。天使と争いを繰り返す、汚れて嫌われ者の生き物だ。何度沙緒梨と同じ天使だったらと思っただろう。かなうはずもない願いは空の彼方へ消えた。沙緒梨のいない世界は意味が無い気がした。というか、意味がなかった。
天界と魔界には鉄の掟がある。天使と悪魔の間に子をつくるな。でも禁忌を犯した人がいた。その人達が生んだのが沙緒梨。沙緒梨は禁忌の子だった。その事実はすぐ皆に知れ渡り、禁忌を犯した二人は処刑された。本当なら沙緒梨も処刑されるべきだった。
しかし運命の歯車は噛み違い沙緒梨は十二歳に成長した。天使として。
そして出会ったのだ、俺と。今でもはっきりと思い出せる。凛とした空気。風に舞う長い髪。こんな女の子、どこを探してもいないと思った。彼女に降りかかる全てのものから彼女を守りたくなった。
好きだ。規則に恋愛をしてはいけないとはない。大好きだ。ずっと俺が守る。
「光也」
そう言って笑う顔が好きだった。
「光也?」
そう言って首をかしげる動作が好きだった。
出会わなきゃよかったなんて思ってない。むしろ感謝してるんだ。歯車が噛み違ってくれたことに。沙緒梨と出会えたことに。沙緒梨が生きていてくれたことに。たとえそれが苦しむことになっても。
だから。今言うよ。
「大好きだ。おまえがここに戻ってきて、また会えることをいつまでも待ってる」
大丈夫。悪魔の寿命は長い。待つだけなら自信があるんだ。
また会える時の為に桜を植えよう。彼女が一番好きな木と花。
また彼女の背景に舞い散るように――――――――――――――――
つまり光也君は悪魔、沙緒梨ちゃんは天使。
かなわない恋のお話です。
ラブファンタジーを書いたのはこれが初めてでした。