第97話 一人の王子
「あのジャッキー先輩、こんな時間から一体何をするんですか」
「シリルには何も説明してなかったな、実は頼みたい事が有るんだ」
ジェイミーの感じからするとこれから何をやるのかは知っているようだし、これからジャッキー先輩の話しを聞いてそれから判断しよう、
「僕に出来る事ならお手伝いはしますけど、何をするのかを聞いてからですね」
「それはそうだ、内容も聞かずに返事はするもんじゃないからな、それじゃあこれからする話しを聞いてから判断してくれ」
「あー、あるところに王子として生を受けた子供が居ました」
「それってジャッキー先輩の事ですか」
ジャッキー先輩は僕の言葉にしかめっ面をして人差し指を口の前に立てた、どうやら黙って聞いていて欲しい様なので疑問に思った事は話しが終わってから聞く事にしよう、
「んじゃ気を取り直して、王子様は子供の頃から何不自由なく暮らしていました、ただ何も自由が無い事には気付いていませんでした。大きくなり知識を得た王子は気付きました、自分はこのまま王子として生きて行かなければならないのか、そこで王子はわがままを言いました。狩竜人学校へ行きたい。格式有る狩竜人学校で見分を広げるのも何かの役に立つだろうと、入学の許可を得た王子は喜びました、ただどれだけ狩竜人の事を学ぼうとも狩竜人には成れません。どれだけ強くなろうとも狩竜人には成れないのです。でも、この学校に居る間は自分は自由だ、と、ならばこの学校に居る間にやれる事は全部経験しておこうと。ただ本物の竜と戦うには狩竜人船が無い。でも今自分の手元には狩竜人武器がある、そして背中を任せる事が出来る仲間が居る。ならば今夜それを決行しなければ」
話し終えたジャッキー先輩は満足気な顔を浮かべ僕の方を見た、なるほど卒業までに狩竜人武器で何かを狩りたいという事なのかな。
「大体の話しはわかりました、それで僕はいったい何を協力すれば良いのですか、それに僕は怪我をしているし」
「シリルの怪我は想定外だったけど、まあそれは仕方が無いな、予選に出ないくらいしか回避は出来ない事だし、シリルを誘った一番の目的は・・・」
そう言いかけてジャッキー先輩は部屋の中を物色するように見渡した、そして箪笥と机と戸棚を指差して、
「どこに入っているかはわからないけど、これくらいの小瓶を持ってるだろう。それをちょっとの間貸して欲しいんだ」
ジャッキー先輩は指でビンをなぞる様に動かした、なんでその事を知っているんだろうと尋ねると、
「ああ、この前の事件の時に見かけたんだ」
「そうですか、でもあんな物をどうするんですか、嵐の夜には外に出すなと言われてるんですけど」
そこでジャッキー先輩は気まずそうな顔をした、ジャッキー先輩はあれがどんな物で、嵐の夜に外に出すとどうなるかを知っているようだ、アレスター先生と同じように。
「実際にどうなるかはわからない、でもあれが必要なのは間違いないんだ」
「そう言われても・・・」
「安心しろ、何が有っても俺が全責任を取る。シリルも知っているだろう、アリスター先生に協力した生徒が罰金を支払った事を、裏を返せば金で何とかなるんだ」
確かに言ってる事は最低だけど、この学校の思い出にしたいジャッキー先輩に協力したい気持ちも有る。
「わかりました、今夜だけは僕も協力します、ただ・・・」
「ただ、何だ」
「僕は罰金を払えるほどお金持っていないですから」
「お金に関しては任せろ、ありがとうなシリル」
「今日だけですからね」
そう言って僕たちは握手をした、小声で聞き取りにくかったがジェイミーもありがとうと言ったのが聞こえた。




