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第96話 未経験

真夜中に僕の部屋に訪れたジェイミーは、僕の肩越しに部屋の中を覗き込むと、

「どうやらまだのようね」

そう言うと小さくため息を吐いた、恐らくは僕と同じくジャッキー先輩に時間を作って貰うように頼まれたのだろう。

「中に入っても良いかしら、ここに私が立っている事が誰かに見つかるとよろしくは無いんじゃなくて」

ジェイミーの言葉に僕は慌てて部屋に招き入れると、念のために誰かに見られていないかを確認してから扉を閉めた。

「ふうん、中は私たちの部屋とは変わらないのね」

元から何も無い部屋には僕の着替えと模造剣が有るぐらいで、色気の何もない殺風景な部屋だ。

そんな部屋の中をきょろきょろと見ていたジェイミーだったが、特に面白味も無い為にすぐに飽きたのか座れる場所を探し、洗濯物の置かれている机と椅子に座る事を諦めてベッドへ腰掛けた。

「きちんと時間を聞いて置くべきだったわ、それでも時間を守る保証は無いけれど」

「僕もそう思うよ、明日の事が有るのにまだ来ないんだもん」

僕が愚痴を零すとジェイミーと目が合った、同じ被害者同士で意気投合したのかジェイミーは笑顔を見せた、釣られて僕も笑顔になってしまう。恐らくジェイミーに微笑みかけられて、笑顔にならない男子はこの学校には一人も居ないだろう。

「なんだか拍子抜けしちゃったわ、でもこれで良かったのかも、ちょっと気負い過ぎていたから」

そう言うとジェイミーはベッドへ倒れ込んだ、そのまま枕へ顔を埋めて押し黙ってしまった。

一体ジェイミー達は何をするためにここへ来るのだろうか、いつもとは違う雰囲気のジェイミーに僕が戸惑っているとジェイミーが枕へ顔を埋めたまま話し出した、

「ねえ、シリルは・・・その、まだ経験してないの・・・かな」

質問の意図がわからず僕が答えないでいると、

「私は・・・その、初めてなんだよねそういう経験が全然なくて、シリルは色々と経験してそうだけど、その、えへへ、やっぱり恥ずかしいな」

そう言うとジェイミーは上半身を起こし、

「やっぱりシリル君も初めては怖かったかな、私は今とても怖いの、今まで覚えて来たすべてを出し切ってもまだ足りないんじゃないかって」

「大丈夫だよ、僕に全部任せてよ」

僕はそう言うとジェイミーの肩に手を乗せた、ジェイミーの肩は小刻みに震え恐怖に耐えている様だった、

「わかった、絶対に私を守ってね」

「ああ」

僕の力強い返事にジェイミーは目を・・・、ジェイミーは目を爛々と輝かせ始めた。

ん、あれ、こういう時は目を瞑るんじゃなかったっけ、違和感を覚えつつも僕は目を瞑る。

長い沈黙の時間が流れ、ドアをノックする音で僕は目を開けた。

ジェイミーは肩に乗っている僕の手をどうやって退かそうかと試行錯誤の真っ最中で、目を瞑っている僕を怪訝そうに見つめていた、あれ、おかしいな。

「はい、あ、待ってましたよ」

扉を開けるとジャッキー先輩が遅れてしまった事を詫びながら部屋へ入って来た。

「いやあ色々有って遅れてしまって申し訳ない」

そしてベッドに座っているジェイミーを見て、

「準備は出来てるみたいだな」

ジャッキー先輩の言葉に顔を背ける事でジェイミーは返事をした、二人の関係はいったいどうなっているんだろう。

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