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第91話 銀髪の美剣士

次の試合会場に着くと、すでに次の対戦相手であるヘレナ・ウィリアムズが待ちくたびれていたのか、僕を見付けるとすぐに審判へ試合開始を促していた、

「待たせてごめん、ちょっと色々あって」

右手をだらりと垂れ下げて、盾も剣も左手で持っている姿を見て何かを感じ取ったのか、大きなな溜息を吐いて、

「万全の君と戦いたかったけれど、それが敵わないからと言って手加減をするのは失礼に当たるからな、全力を尽くす事を誓おう」

右手を胸に当てて剣を顔の前に立たせてヘレナが宣誓をした、それに答えて何かを言うつもりは無いけれど、端から手加減なんて期待してもいないしして欲しくもない。

常に万全では無いけれど常に全力で事に当たる、今の僕にとっては耳が痛いけれど、それが出来なければ狩竜人になんてとても成れないだろう。

「ありがとう、僕も全力を出すから、ヘレナさんも遠慮は無用さ」

どうしても盾の収まりが悪くて格好が付かないが、剣を寝かせて相手との距離を測る。

どうしても目の前に剣先が有ると気が散るという事も狙ってはいるのだが、冷静なヘレナには効いていない様に見える、

「始め」

審判の先生の声で試合が始まった、ヘレナがどんな剣士なのかは僕はあまり詳しくは無い、アントニオを倒す程の実力者だが、ジェイミー達と一緒に居る事が多い僕たちとはグループが違うため、その美しい銀髪は見慣れてはいるのだが、数えるほどしか会話をした事が無く、授業の最中にじろじろと何をしているのか見る事も無かったために情報が何も無いのだ。

ただ対峙してみて改めて思った事だが、ジェイミーやレイラとはまた違った美しさを持っており、ジェイミーが辺り一面に咲く花の美しさだとしたら、ヘレナは凛として静かな森の様な雰囲気を漂わせ、その剣技が完成の域に居る事を匂わせた。

左手は肘を曲げて盾を構え、右手は剣を軽く握り剣先を垂らす、どうしても剣が気になり視線を下にすると相手の罠に嵌ってしまう。

見るべきは剣でも盾でもない、相手の目を見て次の行動を予測しなければ飲み込まれてしまう、なるほど、アントニオが負けてしまっても責めれる物では無い、僕も負けてしまうかもしれないほどの実力を秘めていたとは、やはり狩竜人の育成目的の学校だけは有る、これほどの実力者が居たなんて。

間合いを詰めたり空けたり、左右に動いたりして揺さぶりをかけてみたけれどまったく動じてくれない、先に動くしか活路は無さそうだが、それで本当に活きれるのかは動いてみなければわからない。

そんなじりじりした均衡も驚くほど一瞬で崩れ去った、

「あーイライラする」

ヘレナが突然顔を背けて怒りを吐き捨てた、平静を装っていたのは強がりだったのだろうか、僕は千載一遇の好機を思わず逃してしまった。

しかしそれを後悔している暇などない、ヘレナは僕の方へ向き直ると勇猛果敢に攻めて来たのだ、それはもう闇雲に。

そんなヘレナの剣を受ける時にブルーノとの一戦が頭を過ぎる、それが杞憂に終わった事に安堵をしたが次の攻撃が僕を襲った。

盾も含めた攻撃は苛烈を極め、実質ぶら下がっているだけの盾ではとてもヘレナの攻撃を受け止める事は出来ず、どうしても剣で受け止めなければいけなかった。

しまった、こんな事なら王子君に盾を外して貰うべきだった、そう思ったがもっと早くに気付いておくべきだった。

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