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第90話 いざアントニオ

「シリル、次の試合はやれそうか」

試合を見届けてくれていた王子君が駆け寄って心配してくれている、万全の状態では無いけれど縄で固縛されていなければそれほど痛くは無いし、このまま左手で剣を持って戦えば何とかなりそうだ。

「何とかね、順調に勝ち進んでアントニオと戦うって約束したしね」

右手に盾をくくり付けると痛みが有る事から、いっその事盾を持たない方が具合が良さそうだ、アントニオの剣は切断能力が高いから盾で受け止めても意味が無いだろうし、それならば身軽になった方が避けやすいだろう、その後の王子君との事はアントニオに勝ってから考えよう、油断をしていると足をすくわれかねない、その油断がこの右手の負傷に繋がったのだから。

「その事なんだけど、とりあえず受付へ行こうか」

「あ、うん、そうだね」

王子君の何とも歯切れの悪い返事に嫌な予感がした、そしてそれは次の試合の対戦相手の名前を見て現実のものとなった、

「あれ、これ、あれ、アントニオは、あれ」

「そう言うな、アントニオも頑張って戦ったんだ。ただ、あいつの剣って切断能力だろ」

「う、うん、まさか僕がみんなにばらしちゃったから対処されちゃったって事、それならアントニオが負けてのは僕の所為じゃないか」

「落ち着け、落ち着けシリル。そうじゃ無い、そうじゃ無いんだ、ただ、あいつの剣が切断できるのはその辺の模造刀ぐらいのもので、俺たちが使っているような狩竜人の武器の技術が使われてる剣には全く効果が無くて、衝撃系の剣よりもちょっと弱いくらいの能力しかなかったんだ」

「えええ、いや、僕が使った事がある微振動武器の切れ味は怖くなるくらいだったよ、それこそ人間なんて簡単に真っ二つになるくらい」

「だから、そんな威力の剣を試合で使える訳が無いだろう、アントニオも試し切りぐらいはしただろうけど、防具の袋は簡単に切れただろうよ、模造刀も切ったと思う、だけど、ただでさえ高価な狩竜人剣を相手に試し切りは出来なかったんだろうな、何とか2回戦までは勝ったんだけど、そこで・・・な」

「相手が強かったんだ」

「ああ、そうだろうな」

「相手が強かったんだよ、武器の優劣で勝敗が決まるなんておかしいからね、結局はアントニオの実力が少し足らなかった、それだけだ」

「そう言う事だ、だけど、あんまりアントニオをいじめるなよ、あいつ相当落ち込んでいたから」

「そんな事はしないよ、ただ強い武器を手に入れてから少し可笑しかったからね、そこは反省して欲しいかな」

「武器に溺れるのは仕方が無い、特に初めて持った時は、な。シリルは一度持ったことがあったから、それよりは弱いってわかっていただろ」

「もちろん、特にあの時の最新の武器だったからね、驚きの連続だったよ」

「その経験が足りなかったんだな、本当にレイナルドさんはシリルにとって良い師匠なんだな」

「それは少しだけ反論したいけど、良い師匠なのは疑いようが無いかな、それ以上にとんでもない師匠だったけどね」

「そうは言うけど、今でもレイナルドさんの教えを守っているだろ」

「・・・そうだね、それには全く反論できないよ、窮地に立った時には必ずレイの教えが役に立ってるから」

「そんな良い師匠なんて簡単に見つからないぞ、それじゃ俺も次の試合に行くから、シリルも勝って来いよ」

「うん勝てる様に頑張るよ、決勝を戦おうね」

僕の言葉に王子君は右手を上げて答えると試合会場へ歩いて行った、僕も次の対戦相手の待つ試合場へ歩を進めた。

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