第76話 大体はレイが悪い
「あ、ああアトモスの代表選定でさ、半ば騙し討ちみたいに何もしていない内に僕に決まって、その時の僕なんてほぼ初心者なのに代表になった事に対する罪滅ぼしだったのかなって」
「おいシリル、俺なんて大変な予備予選を勝ち抜いて代表になったのに、お前はそんなに簡単に代表に選ばれてアルデンサルまで来てたのかよ」
アントニオが怒るのも解る、あんな決め方で僕を代表にするなんてとても本当の事は言えない、それに言ってはいけないと言われている事も多すぎるからとても上手く説明できる自信が無いし、僕の不用意な発言でみんなに迷惑をかけてはいけない。
「それが街の道場でレイが師範代理をやっていたんだけど、たまたま道場の人達が誰一人出れなくなっちゃって、ちょうど僕がその道場へ通い始めていたから、選ばれたと言うよりも他に出る人が居なかったんだ」
「いくら何でも初心者よりはまともな剣士は居ただろう、それこそレイナルドさんがそのまま代表者になって置けば良かったんじゃないか」
それが原因で僕が酷い目に逢ったとは言えない、でもやっぱりそう思ってしまうのは仕方が無い事なのかもしれない、
「そういう訳にもいかないんだって、レイにはレイの考えが有って大会からは一歩引いてるんだしさ」
「レイナルドさんから理由ははっきりと聞いているのかしら」
ジェイミーが唐突に口を開いた、アントニオは何か言おうとしていたがジェイミーの言葉を遮る事を躊躇ったのかもごもごと言葉を飲み込んだようだ、
「本当の事を言っているかわからないけど、大会に出るのと狩竜人を両立させるのが難しいみたいに言っていたかな、大会は欠場しても狩竜人はそれが出来ないし、大会も出るからには優勝を目指したいだろうし」
「あら随分簡単に優勝したいなんて言うのね」
「簡単じゃ無い事がわかっているから出ないみたいだよ、片手間の訓練じゃ勝てないからやるからには真剣に取り組まないといけない、でも狩竜人の仕事も有るからそれは難しいと、それだけ両方で頂点に君臨するオフィーリア姫様を尊敬しているんだって、年齢や性別に関係なくね」
尊敬しているのは僕なんだけど、確認することは出来ないだろうからレイもそう思っている事にしよう、そう変わらない感情を抱いている筈だ、多分。
「そうだったの、あのレイナルドさんがオフィーリア様の事をそうんな風に思っていたなんて、シリル君教えてくれてありがとうございます」
そう言って頭を下げるとジェイミーは離れて行った、そんなにレイの事を聞きたかったのかな、お礼を言われるような事を言ったとは思えないけど。
「まあなんにしても、何も準備していなかったらちょっと勝ち目は無いぜ」
「そうなったらもう仕方が無いよ、今から準備するなんてとても無理だし」
「それもそうだな、それに今までなんの変哲もない模造刀で予選を勝ち抜いたのはほかでもないレイナルドさんとお姫様だけだからな。お前もそれに続いたらどうだ」
「・・・もしかしたらそれ当たってるかも」
「どういう事だ」
「レイは何も使わずに勝ち抜けてるから、そう言う準備をする事を知らないんじゃないかな。忘れてたとかでは無くて、知らないんだと思う。なんかみんな変な模造刀を使っているな、くらいの気持ちだったんじゃないかな」
「3年間も気付かないなんて事あるか?」
「他の人ならそんな事は無いと思うけど、レイなら有りうる」
僕は妙に納得したが、王子君たちは納得がいかない様子だった、それは仕方が無い事だろう、レイの事に関しては僕が一番詳しいのだから。




