第74話 実力者たち
太陽も低くなり始め、肌を焦がしていた日の光もわずかに弱く感じ始めた頃、僕たち1年生とは裏腹にやけに上級生たちが活気づいて来ていた。定期船以外の船もちらほらと見かける様になり、何やらピリピリとした緊張感の様な物が感じられた。その事について階段の踊り場で議論をしていた上級生に尋ねた、
「なんだか最近、雰囲気が変わった様に感じるんですけど、何かあったんですか」
「剣戟大会の校内代表者の予選大会だよ、お前も出た事があるんだろう」
始めは何を言われているのかわからなくてぽかんとしてしまったが、そう言えばそんな事も有ったなと思い出した。実際は予選なんてやってすらいないのが原因なんだけど、そうか、本当は予選を勝ち抜かないと権利が貰えないんだった。
「って言っても、今年も三年生のジャッキーと二年生のヴィクターのどちらかだろうな」
「でも、代表選には1年生も出れるんですよね」
何も考えずに口から出た言葉だったが、僕の言葉を聞いて上級生に緊張が走った、なんでそんな反応をしたのか気付くまでに少し時間がかかったけれど、それに気付いた時にはすでに遅かった。
「シリル、お前もしかしてあの二人とやり合って勝てるとでも思っているのか」
「いや、思っていなかったらこんな事言わないだろう」
「一度でも代表になった事が有るやつは言う事が違うな」
散々な言われようだったがそれも致し方ない、僕が考えも無しに発言してしまったのがいけないのだから、流石にジャッキーに勝てるとは思えないが、やる前から諦めたくも無いし、ヴィクターという先輩は見た事も無いからどれくらいの実力かはわからないけれど、ジャッキーと並び称されるだけの実力者なのだろう。それに、僕が一年生の代表に成れるかすら怪しい物だ、王子君もかなりの実力者だし、アントニオには何とか勝てるとしても、ジェイミーは恐らく僕よりもずっと強いし、レイラだって負けず劣らずの力を持って居る事だろう。
「そう言うつもりじゃなかったんですけど、一年生にも強い人は居ますから。では失礼します」
ぺこりと頭を下げて有無を言わせずにその場を離れた、そしてまた失言をした事に気付いた、あの良い様では完全に宣戦布告じゃ無いか。
あの事件で新しくなった扉をあけて部屋に戻ると、程なくして王子君がノックをした後で入って来た。
「どうしたんだシリル、上級生の間でまた噂になってたぞ」
「それがさ、剣戟大会が有る事を知らなくて、その事を上級生に尋ねたんだけど、ちょっと言葉の行き違いがあって・・・ね」
「それでなんで上級生に喧嘩を売るような事になるんだ」
ああ、やっぱりそうなってしまったか、僕は最初から事の経緯を王子君に説明したけれど、王子君の結論は、
「シリル、お前が悪い」
だった。




