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第73話 新しい先生

アリスター先生が担任を辞めてしまったため、新しい先生が赴任してくるまでの間は期待と願望の入り混じった妄想が生徒たちの話題の中心だった。

当然、僕たちもどんな先生が来るのかは話題になったが、シンディとシェリーの様に現役の狩竜人が先生として赴任してくるとは考えられず、それでもアントニオは二人が居なくなってしまった心の穴を埋めてくれるような人が来てくれる事を望んでいた。

そしてそれはものの見事に裏切られた、校長と共に教室に入って来たのは初老の男性で、校長の説明では狩竜人をしていたが不注意により右脚を切断せざるを得ない負傷を負い、そのまま狩竜人を引退して治療に専念していたが、後輩たちに自分の様に怪我をして引退をし無いように教育者として教壇に立つ決意をしたようだ。そのため教壇に立つのは今日が初めてで、傍から見ていても緊張が伝わって来るほど動きがぎこちない。しかし教壇に立ったその立ち姿は、元とは言え現役の狩竜人をやっていただけの威圧を感じた。中にはそれを感じ取れなかった者も居たようだが。

そんなバートン・ヘイズ先生の第一声は、やはり命を落とすな、俺の様になるなだった。

そしてそれから語った先生の現役時代の話しは僕たち生徒の興味を引いた、しかしその話しの最後には失った右足の替わりに取り付けられた特別製の義足を見せ、再び俺の様になるなと締めくくった。

それを見届けた校長は退室していき、そのまま次の授業へと移行していった。

午前中は座学だったが、午後からは基礎鍛錬と剣戟の訓練で、そこでちょっとしたささいな出来事が起こった。基礎鍛錬は持久走や素振り、負荷をかけたながらの鍛錬で、面倒くさがってやりたくない人も居る、そんな事は当然だけれど、今、ここで疲れ切って倒れたところで命に関わるような事は無いけれど、いざ竜を前に体力を使い切ってしまったらどうするつもりなのだろう。ちょっと待ってくれと言って聞いてくれる訳も無く、ここが痛いあそこが痛いと言っても手加減してくれる訳も無く、今、やれる事はやっておかないと、その時が来た時には準備万端で迎えないと後悔すらさせて貰えないだろう。

幸いにして僕はレイからその事は何度も教えられていたために、この学校に居る間は困らないくらいの体力を身に付けて来ているが、もうちょっと頑張った方が良い人も居る。

「先生も一緒に走りませんか」

そんな事を言い出したのはブーフーウーの三人だった、忘れていたけどそう言えば居たっけなこんな奴ら。

アレスター先生にはそんな事は一回も言った事は無かったのに全く使用無い奴らだ、ここは僕がもう一回懲らしめてやらないといけないかなと近付くと、先生の醸し出す雰囲気に脚が止まった。

「ああ、ブルーノ君とフレッド君とウォーレン君だね、私と一緒に走りたいのかい」

にこやかな笑顔だった、しかしその視線はとても先生が生徒に向けるような物では無く、生死を掛けた敵に向ける目だ。

「ええそのつもりですが、どうですか」

先生は小考した後でにこやかに頷いた、それを見たブーフーウーは驚きを隠せなかったが、先生が器用に走り始めると仕方なくそれに付き従った。

何周走っただろうか、少し傾いて走る先生の速度は全く落ちず、その後ろの3人は息も絶え絶えで今にも倒れそうだ。そして遂に周回遅れになる時に、3人はへたり込んでしまった。

「どうした、一緒に走りたかったんじゃないのか、まだまだ走るぞ。あ、残りの生徒は各自次の鍛錬に映って良し。さあ、立って、走る。さあ、さあ」

当てが外れたブーフーウーは仕方なく歩き始めた、さぼりたがっていた割にはそれなりに体力が有るんだなと少しだけ、ほんの少しだけ3人を見直した。

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