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第72話 鈴の音のする刀身

元の面影の無い元幹部はゆっくりと右手を振り上げた、姫はそこから放たれる一撃がどれほど重いのか興味をそそられたが、僅かながらに勝った慎重さが剣で受ける事をすんでのところで止め後ろへ飛び退いた。

階段に備え付けられた頑丈な手摺りがいとも簡単にへし曲げられ、階段の段数が3段ほど減ってしまった。

その時の衝撃は船全体を揺らす程で、姫は自分の慎重さを褒め称えた。

「なるほど、これなら竜とも戦えそうね、でも、とてもじゃあ無いけど倒せるところまでは行かないかな」

その言葉はただの出任せだろう、うっすらと残る意識の中で幹部はそう思った、初めて錠剤を飲んだがこれほどの力を得れるとは、最後の手段だから使用する時は慎重にと強く言われていたが、こんなに強くなれるなら最初から飲んでおけば良かった。

今も自分の一撃で、あれだけ不遜な態度を取っていたのにぴょんぴょんと飛んで逃げるのが精一杯では無いか、捕まえたら虫を殺す時みたいに手足を捥いで、それからゆっくりと踏み潰してやろう。

にやにやと不気味な笑みを浮かべて、視姦をするかのように全身を舐める様に視線を動かしてくる幹部に心の底から嫌悪感を抱いた姫は、持っていた大剣の鞘に付いている部品に手を掛けた、

「手加減はしなくても良さそうだから、ちょっとだけ本気を出しましょう。冥途の土産にされるのは心外ですから、一瞬で終わらせます」

「がぁああぁ、あばぁああぁ、げぇえぇえぇ」

すでに意識がどこかへ行ってしまったのか、言葉では無い呻き声をあげて幹部が返事をした。

ガチャリ、姫の持つ大剣から鞘が開いた。それと同時に眩い光を放ちながら美しい刀身が姿を現した。

鈴の鳴るような甲高い音を響かせて刀身が宙を翻る、切り付けるのでは無くて叩きつけた殴打だったが、その一撃ごとに激しい爆発音と閃光を放ち、それはまるで音楽を奏でるかのように辺りに響き渡った。

勝負と言える物では無かったが、決着は一瞬で着いた。

口から呻き声と白い煙を吐き出しながら幹部は倒れた、全身が焼け焦げ筋肉は言う事を聞かずに痙攣をしている、何も考えられないし、何が起きたのかももわからない、視界もはっきりとはしないが近付いて来る姫の足先だけは見えた。

「お前たちがどう言っているのか解らんが、竜より強いというのは止めた方が良い、少なくとも竜の方が頭は良いぞ」

そう言って姫は自分の頭を指先でとんとんとしたが、幹部にはその姿を見るどころか聞こえていないようだった。


「船を連結する前だったから良かった物の、そんな事をしていたらこちらにも被害が出ていましたぞ」

「私がこれを持って出て行ったのだから、それぐらいはわかっていた事だろう」

小言を言った男は頭を抱えながら首を振った、姫はそんな事は知った事では無いとそっぽを向いた。

鞘で撫でられた黒尽くめの者たちも幹部の男と同じように全身を痙攣させ、中には嘔吐をしている者まで居た。

「人間相手には出力が強すぎたかもしれないが、まあ私ももう少しで死んでしまうかも知れないところだったのだから仕方があるまい」

「とは言え全力はまずかったかもしれないですね、どうやらこの船にも影響が出ているみたいです」

続々と船員が乗り込んできて倒れている黒尽くめの者たちを捕縛し始め、それに伴い姫の従者たちも船に乗り込んで来た。その中の一人が姫に詰問した、姫は命がけの戦いだったから、出力を最大での使用も止む無しと自己弁護をしたが、壊れてしまったものは今更どうしようもない。

「このままでは本国まで辿り着けそうにありません、どこかで応急修理をしないと」

「ふむ、途中で壊れてしまうのでは仕方が無いな。ここから近い港となるとアトモスになるか、聞いた話ではあそこには腕の良い職人が居るらしいな」

そう言うと姫は意気揚々と白い船へ戻って行った、その足取りは軽くとても嬉しそうに見える。

「前々から行きたいと言ってましたからね」

「まったく、そこまで計算ずくとは思えないのじゃが」

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