第69話 黒と白の閃光
「それでは校長、ご協力ありがとうございました」
シンディとシェリーは深々と頭を下げた、座っていた校長は大きくため息を吐き二人に頭を上げる様に手で合図を送ると、
「最初にこの話しを聞いた時は耳を疑ったが、こうして現実になると寂しい物だな」
「それは私たちも同じ気持ちです、狩竜人として船に乗っていた者同士で争う事になるなんて、すべては狂った教えの所為では有るのですが」
再び校長は大きくため息を吐いた、
「今朝、話しをさせて貰ったんだが、少し優しすぎたのかも知れないな」
「それは、彼が、ですか。それとも船乗りたちがですか」
「その両方だろうな、狩竜人は逃走を責めない、あいつは仲間の死因は自分に有ると責め続けていた。その気持ちはわかるさ、俺も船に乗っていたんだからな、それをわかって寄り添っていたつもりだったんだが」
「そんなに気を落とさないで下さい、そういう隙間に奴らは入り込んでくるのですから」
「そうです、狩竜人武器を持っていても使用しなかったところを見ると、最後の一線は超えていないようですよ」
「そう言ってくれると助かる、あいつがやろうとした事は何も褒めるとこは無ぇがな」
校長は顔を手で覆うと、その隙間からシンディたちの顔色を窺い、思いついたかのように話し出した、
「それと、共犯の生徒はどうなる。未成年だが黒龍教絡みだと厳しいか」
「主犯では無いので罰金刑で済むと思いますが、それ以上は私の口からは何とも言えないです」
それを聞いて校長は天井を見つめて黙り込んでしまった。
暫くの沈黙の後、シンディとシェリーは顔を見合わせて頷くと、
「そろそろお暇させていただきます、恐らく近くに来ていると思いますので」
「ああそうか、それじゃあ二人とも気を付けて、あいつに罪を償わせてやってくれ」
シンディとシェリーは校長に頭を下げると校長室を後にした。
船室に乗り込み魔力炉を始動させる、真新しい魔力炉は甲高い音を発し、軽々と二人を上空まで連れて行った。
「いきなり撃たれる事は・・・、無いと良いわね」
「あいつらのへなちょこ弾に当たる程、私は操船が下手糞じゃないわよ」
「頼んだわよシェリー」
「任せて、シンディ」
「それじゃあ、出発」
「ほいさー」
シェリーがレバーを前に倒すと船はみるみる加速して行き、教壇を取った校舎を後にした。
全速力になってすぐ、校舎が遠く見えなくなった頃、けたたましい警告音とランプが嫌でも二人の緊張感を高めた。
「やっぱり待ち伏せか」
「そりゃそうよ、あんなバカでかい船じゃあこいつに追いつく訳が無いからね」
シェリーは倒していたレバーを手前に引くと、船はみるみる減速していき、接近する船を微かに肉眼で捉えれたところで停止した。
「さて、どうなるかしら」
「でも間に合った見たいよ。ってこんなに速いなんて、相当お怒りのようね」
「あらら、近くで見たいけど、とばっちりを受けるのは御免蒙りたいわね」
前方の船とは別の船が凄まじい速度で間に割り込んでくるのが見えた、その船は船体すべてが白く、日の光を反射して閃光が走っているかのように見えた。
「姫様、中へお入りください。あの様な者達と姫様がお話しになる事は御座いません」
姫はゆっくりと後ろを振り向くと、一瞥をくれただけで再び前を見据えてしまった。
その視線の先には黒い船体がみるみると近付いて来ている、姫はそれから視線を逸らす事無く甲板に突き立てている大剣を握る手に力を込めた。
「前方の船、その方の所属を言え。何故われらの行く手を阻むのか。返答にはそれ相応の覚悟をもたれよ」
拡声器を使った姫の声は遠くの黒船に反射してこだまするほどで、姫の後ろに立っていた男はあまりの騒音に耳を押さえて蹲ってしまう程だった。
「このままではぶつかってしまいます、早く船内へお入りください」
「よい、こちらは警告をした、それを聞き入れなかった向こうに咎が有る」




