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第62話 大きな異変

その日は朝から雨が降っていた。

夜まで振り続けた雨は止む気配を見せず、僕たちは雨音を耳に眠りについた。

しかし雨音は足音を消し、雨雲は月明りを消す。

何時なのかはわからない、ただ、目が覚めた。

何と無く予感はしていた、こんな時は何かが起きる。

窓を叩く水滴の音ではない雑音に違和感を覚え、異音を鳴らしている先を見ると部屋の扉からだった。

ゆっくりとドアノブが動いている、カギが開いたかを確認しているようだ。

音を立てても気付かれにくい、ただそれはお互い様だ、僕は言われた通り枕元に置いてあった短剣を手に取り、ゆっくりと扉へ歩いた。

ガチャリと鍵が開き、ドアノブがぐるぐると回ったが扉が開くことは無かった、こんな時のために毎日扉の前に家具を置いていたからだ。

扉の向こうで力を込めているのが伝わって来る、このままでは部屋に侵入されるのも時間の問題だろう、見回りの先生は今どこに居るのだろうか、大声を出して助けを呼ぶか、それとも家具を押し戻して抵抗してみるか、一体相手はどんな奴なのだろうか、僕よりも強いのか。

つい悪い癖が顔を出てしまう、オードリーに窘められたばかりだというのに、僕は簡単に命のやり取りを覚悟してしまう。

緊迫した時間がどれだけ続いただろうか、ドアの隙間から半身を覗かせた瞬間に僕は家具事扉を蹴りつけた、加減はしていなかった為に家具事扉は壊れてしまい、結果的には部屋への侵入を許してしまった。

呻き声を堪えながら半歩程部屋へ入って来た侵入者は、短剣を構えている僕と対峙した。

扉と家具が壊れるほどの衝撃音が鳴り響いたために、廊下に大声で呼びかける声が聞こえる、見回りの先生が物音に気付いたようだ。

不利を悟ったのか侵入者はすぐに部屋から出て行った、判断の速さは称賛に値するが今回ばかりは褒める訳には行かない、僕は侵入者を追うためにすぐに部屋から飛び出した、侵入者は僕の蹴りで家具か扉に頭を強くぶつけたのか、頭を抱えながら走っているのにも関わらず逃げ足は速く闇に紛れてしまった。

すぐに追いかけようと走り出す僕を見回りの先生が呼び止める、

「待つんだシリル、怪我は無いか」

声の主はアリスター先生だった、僕を心配してくれるのはとてもありがたい事だけど、怪我をしていないのは僕が一番わかっている。

「怪我は有りません、それよりも侵入者が逃げます」

「わかった、俺は上を見に行くからお前は下だ。緊急時でも生徒を女子寮に行かせるわけにはいかないからな」

僕たちは顔を見合わせて頷くと走り出す、その最中にも先生はカギを掛けて部屋に居る様に、と声を掛けていた。

外は大雨、もし外からの侵入なら足跡が残っていても良い筈だがそれはどこにも無かった。

着替えたのか、いやそんな事はしない、少なくとも僕なら荷物を増やすような事はしないし、捨てて逃げるにしても痕跡を残してしまう。

色々な考えが頭を過ぎりながらも、何事かと顔を出す生徒にカギを掛けて部屋に居る様に声を掛けながら目撃情報を聞いて回った。

当然誰からも良い返事を聞くことは無かった、一体侵入者はどこへ消えてしまったのだろうか、せめて階段を上へ行ったのか下へ行ったのかを見ている事が出来たら。

僕は大きく深呼吸をして心を落ち着かせると、何か大きな違和感を覚え、大急ぎで部屋へ戻った。

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