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第61話 弓と魔砲

自分の部屋へ戻り鏡に首筋の痕を写して見てみた、まさか魔砲が落ちて来るとは思わなかったが、完全に急いで躓いてしまった自分の責任なので言い訳は言いたくない。

しかし食堂は仕方が無いとはいえ、大浴場を使わなくて済むのは不幸中の幸いだった、こんな痕を見せつける様に風呂に入っていたら一体どんな目に逢ってしまうのか、小さいとはいえ風呂が部屋に有って良かった。

そして今日からは枕元には父から預かった短剣を置く事にして、部屋の鍵はすでに信用が出来ないため、窓とドアの前には簡単に動かせる家具を置いて、せめて入り辛い様に細工をしておいた。

夜の間の見回りは先生たちが交代でやってくれていても、やはり自分でできる事は念には念を入れて侵入対策をした。

そして何事も無く数日が過ぎていった、シンディとシェリーの授業は当然と言えば当然なのだが、弓と魔砲の取り扱いについてだった。まったく初めてなどと言う生徒は一人も居なかったが、やはり男は剣技で女は弓技という考え方は根強く、剣技ほど真剣に取り組んでいる男子は少なかったようで、どちらかと言うと女子の方が僕たちよりは扱いに長けていた。その中でも意外だったのはジェイミーよりもレイラの方が確実に上級者だった事だ、これは素人同然の僕から見てもわかる程で、ジェイミーは剣技ほど弓技を鍛錬していなかったようだった。

オフィーリア姫も剣技では世界一強い事は誰しもが認めている事だけれど、弓技も得意とは聞いた事が無いので、やはりどちらも極めるという事は難しいのかもしれない、だからと言って疎かにして良い物では無いので、僕もせめてシンディたちが居る間は根を詰めてみようと思う。

レイが弓技を練習しているところは全く見た事が無いけど、ジェイジェイは練習をしていた事を思い出した、記憶の底に封印した思い出したくない思い出と共に。

練習用の弓も魔砲も模造品だから当然とはいえ、対竜用とは似ても似つかない状態な上に、シンディが用意した魔砲には魔力の注ぎ口も無いため、あわよくばを狙った一部の男子たちは落胆していた。

「弾は出るけどあくまでも訓練用だから、お目当ての女の子の後ろに居たって何も良い事は無いわよ」

はっはっは、良い事が無いなんて事は百も承知さ、人数分は用意できなかったのでいくつかの班に分かれて、たまたまだがジェイミーとレイラと同じ班になっただけで、何も下心なんて無いのさ、はぁーあ。

アトモスで試し打ちをした時は的に当てる事が出来て褒めて貰えたのだけれど、模造品で撃っても何がどうなっているのか全く的に当たらない。

正確には当たって入るのだけれど、中心から逸れて円の外にかろうじて当たっているだけで、大きな竜を相手にしているのなら当たっていると言えるのだが、それよりも小さい標的、ましてやその相手が動いていたとしたら僕には当てる事は叶わないだろう。

「可笑しいわね、そんなに当たらないかしら」

シンディが僕たちのあまりの不甲斐なさに業を煮やして、お手本を見せてくれる事になった。

当然使うのは僕たちと同じ模造品だ、周りの生徒は口々に当たるわけが無いと小声で馬鹿にしたような事を言っていたが、僕には確信が有った、絶対に的の中心に当てると。

シンディは魔砲を構えて動きを止め、弾を撃たずに何やら調整を初めて構えた、そして再び調整をして一発撃った。的の中心から逸れてはいたが円の中には当たった。

それ見た事かとざわざわしだした使徒たちを他所に、シンディは再び魔砲の調整を済ませて構えた、雑音など耳に入っていないかのようにゆっくりとスムーズに構えに入り、2発、3発と連続して弾を放つとなぜか衝突音が5回鳴り、

「ちょっと調整が狂っていたみたいね、直しておいたから」

そう言ってシンディは僕に魔砲を渡して来た、それを受け取った僕は後ろから感じる気配を感じ取り仕方なく口を開いた、

「何で3発しか撃っていないのに5回も音が鳴ったんですか」

僕の言葉にシンディはきょとんとしていたが、何かに気付いたように、

「ああ、あなたたちは無理にやらなくて良いわよ、跳ね返った弾を狙って撃つなんて何の役にも立たない事だから」

そう言うとシンディはふんっと大きく鼻息を吹き出し、小言を言っていた生徒たちを見下ろした、やっぱりシンディもシェリーも怒らせるような事はしない方が良い、僕はレイに言われた事を思い出していた。

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