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第6話 謎の王子

自分の部屋を目指し歩いていると、途中の扉が開いた。

とりあえず挨拶だけをして通り過ぎようとすると、出て来た男に呼び止められた。

「おや、君は初めて見る顔だね。洗濯物を沢山抱えている所を見ると、新しく来た給仕さんかな」

「違います、ちょっと訳ありで来るのが一か月遅れただけで、ここの学校の生徒です」

真面目に答えた後で、しまった根掘り葉掘り聞かれると、また面倒くさい事になってしまうから適当に誤魔化しておけばよかったと後悔していると、僕の言葉を聞いても全く気にも留めずに、そうなんだの一言で話しが終わってしまった。

「名前はなんて言うんだい」

「シリル・エアハートと言います、よろしくお願いします」

「うむ、シリル君、私の事は王子と呼んでくれたまえ。おっと、どこの王子かは聞かないでおくれよ、答えられない事も有るという事を覚えておいてくれ」

アントニオ、僕はついに王子を見つけたぞ・・・と思ったけれど、さすがに自分から王子を名乗るなんて事は無いだろう。偽名を使っても良いと言うのなら、わざわざ自分から身分を明かすような事はしない筈だ。

とは言え、個室に入寮しているという事は裕福でないと不可能な訳なのだが、僕みたいにレイが全額面倒を見てくれたみたいに、何かしらの伝が有れば宿屋の息子でも入寮できる事を考えると、王子では無いにしても権力者の縁故ぐらいは有るのかも知れない。

「そうですか、王子私はこれで失礼させていただきます」

あまり関わらない方が良いと判断した僕は、迅速に話しを切り上げる事に決めた、

「うむ、明日からよろしく頼むぞ」

そう言って王子は部屋の中へ戻って行った、扉が閉まると大きくため息を吐いて、話しが長引かなかったことに安堵したが、結局明日から面倒くさい事には変わりは無かった。


それから自分の部屋に着くまでは誰にも会わず、着替えを抱えながらで回しにくかったが部屋の鍵を開け、素早く部屋の中へ滑り込んだ。

とりあえず抱えていた着替えは適当に放り投げ、唯一の持ち物である鞄をそっとテーブルに置くと、溜まっていた物が弾けるかのようにベッドへ飛び込んだ。

別に葉っぱのベッドにサーベルタイガーの枕の寝心地が悪かったなんて事は無かった、冷え込む夜には毛皮の毛布になって貰ったし、雨風を凌ぐ傘にもなって貰った。十分に快適、とまではいかないまでも、それほど不快では無かったと思っていた一か月だったが、ふかふかのベッドにふかふかの枕に顔を埋めて居ると、やっぱりこっちのが良いと思うのは仕方の無い事だろう。

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