第57話 悪魔再び
先生たちが夜の見回りを担当してくれるようになって数日、当然というか当たり前の不満が噴出し、それに対する学校の回答がその日の朝訪れた。
何度も聞いた事のある轟音が教室の中にまで鳴り響く、当然教室のみんなはいつもの定期船ののんびりとした音とは違う甲高い音にざわめきだした。
見慣れた狩竜人船では無い、それもそのはずで、狩竜人船の半分にも満たない大きさだ。それでもそのぞんざい感は凄く、鳴り響く魔力炉の音も耳に心地良い、校庭の上空でゆっくりと制止した後で無意味に二回、三回と前後にキラキラと光る魔力を放出し、それからゆっくりと校庭に着底した。
「はーい、授業に集中するように」
アリスター先生は手を叩いて注意を引こうとして、一回は生徒の注目を集める事に成功をした、しかしその後に船から降りて来た人物にクラスの大半、主に男子生徒たちは釘付けになってしまった、僕もその中の一人では有るけれど、それは他のみんなとは違い顔見知りが降りてきたからである。
注目を集める二人の美女、シンディとシェリーを見て懐かしさと沢山の思い出が蘇る、そんなざわついている僕たちに気が付いたのか、二人は僕たちに両手を振って投げキッスをしてくれた、そんな事をされたら授業なんて聞いている男子生徒は一人も居なくなってしまい、取り残された女子たちはしかめっ面をしながら騒いでいる男子と、愛想を振りまいている二人に敵意を向けていた、それよりも苦々しいのは先生たちだけれど。
そんな派手な登場をした二人をもう一度見ようと、職員室に意味も無く立ち寄る生徒たちに先生たちも怒声を浴びせていたが、怒鳴り疲れたのか面倒くさくなったのか、何も言われなくなると更に人は増えていった、残念ながら二人は職員室には居らず、手続きのために校長室に居たようだ、とアントニオが悔しそうに言っていた。
昼過ぎにはもろもろの手続きが終わったのか、シンディとシェリーは各学年に顔を見せに来た。
役職は夜間の見回り要員と臨時講師という事らしい、どれだけの期間二人を雇うつもりなのかはわからないけれど、校長も思い切った事をしたもんだ、二人を雇うとなると一体どれだけのお金がかかるのか。
でもそれは僕たちの授業料から支払われるのであって、つまりは僕はどれだけレイ達に世話になっているのだろうかという事でもある。
3年生のクラスから顔見せをしてきたシンディとシェリーは、記憶の中の二人と何ら変わることは無く、いや、あの頃よりも魅力的になっているのかもしれない。
「こんにちは、臨時講師をやらせて貰いますシンディです、よろしくお願いします」
「こんにちは、同じく臨時講師をやらせて貰いますシェリーです。よろしくお願いします」
お店で働いていた頃と同じ笑顔を見せて二人は就任の挨拶をした、職員室まで出かけてみる事が敵わなかった二人を前にして大半の男子生徒は大興奮している、そんな中で僕は一人冷静を装っていた。
やれやれ僕は二人とは旧知の仲なんだよ、まあそんな事を言ってしまうとまた面倒くさい事になるから言わないけどね。
斜に構えながらそんな事を考えていると、クラスの男子が彼氏は居ますかなんてくだらない事を聞いている、恐らくは上級生たちもそんなくだらない質問をしただろう、それでも二人は少し頬を染めながらもじもじとしている。
その時僕は何かを感じ取った、きょろきょろとしていた二人の視線が僕を捉えると、ぴくっとして二人はさっと視線を逸らしたのである、やられた、そう思った時にはすでに遅かった。
みんなと一緒に騒いでいなかった事で、僕の態度に多少なりとも違和感を感じていたのだろう、誰ともなくシリルだ、またシリルか、なんでシリルばかり、と怨嗟の声が渦巻きだした。
まったくアル船長の船の乗員はなんでこうなってしまうのだろうか、オードリーの時の少なくとも2倍は困った事になりそうだ、レイ達に感謝をするといつもこうだ。




