第56話 違和感
頭のたんこぶを撫でているアントニオを引きずって寮へ戻り、久しぶりの自室に戻ってみると妙な違和感を感じた、元から荷物が少なかったからだが、自分では無い誰かが触って戻したような微かな変化、服の畳み方が少し丁寧だったり、ベッドのシーツの皴が伸びていたり、いつも半開きのカーテンがきちんと閉められていたり。いったい誰が何の目的で侵入したのだろうか、貰い物の服や、父から預かっている短剣なんて大した価値は無い筈だし、同級生はみんな野外授業に出て行っていたはずだ、途中で戻って来た班も有るから、その人たちがわざわざ僕の部屋を物色するために早期に学校へ戻って来たのか・・・、どれだけ考えても、そうまでして僕の部屋に欲しい物が有るとは思えない。
「一人で考えていても結論が出ない時は、二人で考えるる方が良いと思って」
僕は王子君を部屋に招いて相談をした、王子君は特に部屋の中に関しては違和感は無かったと言った後で、
「何も無くなっていないのなら、持って行った物の中に目当ての物が有ったのかも知れないな」
「確かにわずかしか無いけどお金を持って行っていないから、そう考えるのが妥当なんだけど、持って行った物は王子君も知っているけど、大したものでは無いんだよね」
「レイナルドさんとの事が有るから、もっと大金が有ると思われて侵入したけど、思っていたよりも金額が少ないから、盗んだりせずにそのままにした可能性も無くは無いけどな、罪を犯すにしても見返りが少なければやるだけ損だし」
「でもこの学校の人達ってお金に困って無いでしょ、僕以外は」
「どうだろうな、ぎりぎりでこの学校へ来てる人も居ると思うが、盗みまでしないといけないほどの人は居ないと・・・信じたい」
「だよね、しかもカギを開けて入って来られるようじゃあ防ぎようが無いし」
「とりあえず今日の所は用心しながら夜を過ごすしかないな、何なら俺の部屋で一緒に寝るか」
「そうだね、そうさせて貰おうかな」
次の日、部屋の中を見回してみたけれど夜の間に侵入された様子は無かったけれど、念の為に事のあらましを先生に話した。するとそれは大問題だと校長も交えて会議になり、夜中に寮の見回りをするという事でいったんの決議がなされたようで、次の日に僕たちに夜の見回りが決定したと教えて貰えた。
僕以外の部屋への侵入も何件か確認されたのけれど、特に無くなったものは今まで確認されず、犯人の目的が何なのかわからなくなった。
1年生の部屋だけしか異常を訴えた生徒が居なかっため、日を空けて部屋に戻った事による勘違いの可能性も否めないと、大半の生徒はそう思っていた。
その中で僕は必ず何かが起こる、そう思って部屋の中で眠れぬ夜を過ごし、安心して眠れる教室で睡眠を取っていた。




