第55話 君の嘘と彼の嘘
寮へ向かうジャッキー先輩の後ろ姿を眺めていると、どこかに隠れていたであろうジェイミーが戻って来た。
「シリル君、荷物を運んでくれてありがとうございました」
そう言うと頭を下げて、レイラに荷車を任せて二人で寮へ向かって行ってしまった。
そこで僕はジェイミーを呼び止めると、ジャッキー先輩が教えてくれた事を話した、
「あら、そうだったのですか、どうやら私が余計な事を言ってしまったようですね、すみませんでした」
そう言って再びジェイミーは頭を下げた、そこで僕はすぐにジェイミーに頭を下げる必要は無い事を告げ、
「余計な事とか、そんな事は思ってもいないよ」
「そうなのですか、ではなぜその事をわたくしにお教えになったのですか」
ジェイミーはすっと肩幅に脚を広げ、左肩を前に出し右足に重心を移した、所謂臨戦態勢というやつだ、その威圧感はサーベルタイガーなんて比では無い、
「とりあえず落ち着いて、どうやら僕がジャッキー先輩に気に入られたっぽいんだ」
「それで、裏の情報も教えて貰えたという事ですか」
ジェイミーの表情は鋭く言葉も突き刺さるように冷たい呼気を纏っているかのようだった、レイラが二歩ほど下がったのが見えて、僕は更に背筋が冷たくなっていくのを感じた、
「どうなんだろう、レイもそうなんだけど、僕の身近の強い人たちは、とにかく気に入った相手をからかう癖が有ってさ。どうもそれっぽく感じてるんだよね」
胸の近くまで上がっていたジェイミーの両手がゆっくりと下がって行くのが見える、まだ話しを聞いてくれる余地が有る事に安堵した僕は、
「ジャッキー先輩が本当の事を言っているかなんてわからないし、どっちを信じるかと言われたら僕は初対面のジャッキー先輩よりも、いままで一緒に過ごしたジェイミーさんを信じるから。ジェイミーさんに内緒の事を教えてくれた人を信じるから」
少し怒気を孕んでいたジェイミーの表情がいつもの笑顔に戻る、死地から戻れた瞬間だった。
「だから念のために王子君とかには何も言わないで欲しいんだ、特にアントニオは良い点数が貰えるって喜んでいたし」
「わかりました、私も教えてくれた人を信じていますから、ご用件はそれだけですか」
「そうだね、今度荷物を預ける時はきちんと半分にして欲しいかな」
僕の言葉にジェイミーは頬を赤く染め、
「覚えて置きますね」
そう言ってくるりと振り返ったジェイミーは、見た事も無い笑顔を僕に見せてくれた。
その奥で引きつった顔をしているレイラも、始めて見る顔だった。
しかし、よほどジェイミーとジャッキー先輩の間には因縁がある様だ、それに僕はジャッキー先輩に期待をかけられているのか、とにかく頑張らないといけない立場になってしまっているし、これはのんびり休みたかったけれど、そうも言ってられない気がする。
僕が更に気合を入れて学校生活を送る決意を固めていると、
「なあシリル、俺達ってどれくらい点数貰えるんだろう、サーベルタイガーを倒したのも点数になるのかな、暫くは授業中寝てても平気なくらいかな」
にやけた顔で呑気な事を言ってくるアントニオに拳骨を落とし、僕は更に気合を入れた。




