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第53話 まさかの罠

野外活動の最終日の朝を迎えた、アントニオとジェイミーの会話を途中まで盗み聞きしていたが、川に落ちたところをジェイミーに助けられた後で、二人とも会話が無くなってしまったためにいつの間にか眠ってしまっていた、それでも夜明け前には目を覚ましたことで自分を褒めてやりたいと思った。

「おはようみんな、何だアントニオのズボンはまだ乾かないのか」

焚火の所へ行くとすでにいつもの顔ぶれとアントニオが座っていた。

なぜそんな恰好をしているのかの事情を知っている僕は、替えのズボンが無い為にシャツを下半身に纏っているアントニオに意地悪を言った。

「おはようシリル、そろそろ乾くと・・・って、お前はなんで俺のズボンが濡れている事を知っているんだ」

「ドボンって音が聞こえて来たからね、川に落ちれて良かったな」

僕の言葉の真意を即座に理解したアントニオは、何も言い返す事無く顔色だけをくるくると変化させていた、

「落ちれて良かったって変な言葉だな、濡れちゃうし良い事なんて無いだろう」

真面目な王子君は言葉通りに理解したために素直な感想を抱いたようだ、かと言って僕が話した事の真意を伝える事はしないけれど。

「まあアントニオにとって良い事が有った、って事だよ」

アントニオがジェイミーに恋心を抱いている事を王子君も知っている為、川から助け出して貰ったり、服を乾かすのを手伝って貰ったりと、密着しての共同作業がそれなりに有ったとしたら、それはアントニオにとって良い事だよね、と本当の意味では無いけれど目配せと共に伝えると、

「ん、あああ、そうか、そうかも知れないな」

なんとか王子君の誤解を解く事が出来たようで僕は胸を撫で下ろし、何も言えずに黙り込んでいたアントニオにも目配せをしたら小さく頷いていた。


アレックス達も順次起き出してきて、出発の準備もそれぞれ終わり始めていた。

貯め込んでいた水も1日分を除いて必要が無くなるため、火を消すのに使ったり、顔を洗ったりするのにも贅沢に使って、空の革袋を荷車に積んでいよいよ出発だ、という所で僕はとんでもない事に気が付いた。

ジェイミー達から預かっている荷物は行きも帰りも同じ重さの宿泊設備で、ジェイミー達は帰りには軽くなっている食料や飲料水の荷車だったのだ。

「き、気が付かなかった・・・、あっちは帰りは軽々じゃないか」

思わず真情を吐露したところを王子君に聞かれていたようで、

「なんだシリル、気が付いてなかったのか、俺はてっきりシリルの優しさだと思っていたんだけど」

「あ、いや、は、ははは」

僕は頭を掻きながら、笑って誤魔化す事しか出来なかった。

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