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第51話 自尊心

夜露を凌ぐだけの天幕を張っただけの簡素な木陰に座り込み、毛皮を身に纏って寝る準備はおしまい、雨さえ降らなければこれで十分と判断して僕が持ってきた物だ。

荷物を極力減らすためにそうしたのだが、みんなはしっかりとした支柱の有る物を持って来ていた。

支柱なんてそこら辺に生えている木で良いし、獣に襲われた時に外に出るのに手間取ったりして、咄嗟に動けないよりは良いと今でも思っている。

こんな楽しい時間も今日で終わる、明日には四方を囲まれて屋根まで有る生活に逆戻り、食事の心配もしなくて良いし、水も使いたい放題な上にお湯まで出る。

アトモスでの生活も、アルデンサルでの夢の様な生活も、どれも楽しかったはずなのだけれど、こうして夜風に吹かれていると、どこか懐かしさを感じてしまうのはなぜだろうか。

そんな事を考えながらうとうととしていると、遠くで話しているアントニオの声が聞こえる、ジェイミーと夜を共に過ごせるなんて羨む人も多いだろうけれど、僕はとても耐えられる気がしない。

当然噂を嗅ぎ付けた連中によるやっかみも鬱陶しいと思うけれど、それよりもジェイミーと二人きりで朝まで何を話せばいいのやら、レイラとは何とか上手く過ごす事が出来たけれど、ジェイミーの場合はいつ何時裏の顔が出てくるかわからない。

ある意味、今日のレイラは裏の顔・・・というか、素のレイラだから表の顔と言えば良いのかな、普段からあれぐらい喋ってくれれば良いのだけれど、訳の分からない事を捲くし立てて来た事を思い出し、やっぱり普段は黙ってジェイミーの後ろに居る方が良いのかもしれない。

レイラが教えてくれた心の読み方だけれど、冷静に考えてみると僕はそれを体験している事を思い出した。

忘れもしないアルデンサルで会った世界最強の一人、オフィーリアと戦ったあの時だ。

僕が何かをする前に、すでに先手を打たれているようなあの不思議な感覚、手の上で転がされていたと言うよりも、手のひらで包み込まれているかのような、やさしさに溢れたあの一戦はあの時の僕には全く理解が出来なかったけれど、今改めてレイラに言われた事を当てはめてみると、僕は大きな一歩を踏み出したかのような不思議な充実感が溢れて来た。

雲を掴むような無力な感覚から、目の前の霧を払うかのような何も掴めてはいないけれど何かは起こっている確実な手応え、とりあえず手始めに、単純そうなアントニオの行動を読むところから始めよう、そうしていればまた別の何かが掴めるかもしれない、千切れてしまうトカゲの尻尾だろうと、握ると怒られる猫の尻尾だろうと、掴める物は何でも掴んでみよう、この学校へ来て初めて僕は何かを学んだ気がする。

いままで授業をしてくれていた先生たちには悪いけれど、僕にとってはこれが勉強で有り、身に着くという事なのだから。

それが同級生からだろうと僕は何も気にはしない、そんな事に変な自尊心なんて物は僕には無い、それが素晴らしい事なのか、取るに足らない事なのか、それは他人が決める事では無い、僕が素晴らしいと思えれば、それは金言なのだから。

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