第50話 レイラの見ている物
「そう言えば、レイにも相手の行動を誘導するように動けと教えて貰っていたから、レイラさんの言う心を読むという話しは、相手の行動に対して最善の行動をするという事なので、似ているようだけど僕の教えられた事よりも、その更に上位の技術なのですね」
「レイナルド・エースさんの教えは、まず自分から先に動いて相手の行動を促して、その後でその機先を制する。私のは先に動いた相手に対して、後に行動をして機先を制する。相反する様で結果はすべて相手の機先を制するという事、シリル君が教えて貰えた通りの事を実践できているのだとしたら、私が言った事はすぐに身に付けれるでしょう、普段から相手の気持ちを読む事を意識しておくと良いですよ」
いつもとは違い饒舌に話すレイラに少し戸惑いは有ったけれど、普段ジェイミーの後ろで何も言わないで俯いているのが仮の姿だとしたら、今のこの姿が本当のレイラなのかもしれない、でもどうして僕に対して奥義とも取れるような事まで話してくれるのかはわからない。
「ありがとう、僕なんてまだまだなのにそんなに買い被ってくれて」
少し照れながら素直な気持ちを吐露した、サーベルタイガーを倒したことで多少は自己評価は上がってはいたけれど、ジャッキー先輩にはとても敵わないと感じていたし、ジェイミーやレイラは僕よりも強い事が今では確信に変わっているからだ。
「良いのですよ、でも、そんなに気落ちしているのなら、朝までアントニオ君に慰めて貰ったらどうですか」
そう言ったレイラは口に手を当てて含み笑いをし始めた、その姿はいつも見ているあのレイラだった。
「え、どうして、僕がアントニオに慰めて貰うって、その必要は無いよ」
「私にはわかっていますから、どうぞお気になさらず」
僕は両手を大きく振ってレイラの言葉に抗議の意を示して、
「いやいや、何がわかっているのかも、僕にはわからないよ」
「わからないようにしているつもりでしょうけれど、私の目は誤魔化せませんよ」
「何も誤魔化していないんだけど、レイラさんにはいったい何が見えているの」
「それは、ぶっ」
大きな打撃音と共に目の前でがくんとレイラの顔が揺れたかと思うと前のめりに倒れ込んだ、その後ろにはいつものあの笑顔のジェイミーが拳を握り立っていた。
「まったくそう言う事は一人の時にしなさいと言っているじゃ・・・、聞こえて無い様ね」
そう言うとジェイミーは意識を失っているレイラを抱え上げ、
「そろそろ交代の時間ですから、アントニオ君を起こしてきて下さいますか」
僕はジェイミーに大きく頷くと、背を向けてアントニオを起こしに向かった。
レイラは僕の心を読んでいると思ったけれど、それもどこか胡散臭い話しだと思い始めていた。
そして、何の気配も感じさせずにレイラの後ろに立ったジェイミーに背筋が寒くなった、拳でなく剣の一撃だったら僕は何も感じる事無く絶命していただろう。




