表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/187

第5話 アントニオ、履いてるよ

「こんにちは、今日からこの学校に入学したシリル・エアハートと言います」

僕が名乗っても、肝心の相手はまるで聞こえていないかのように自分の世界に入り込んだまま戻って来ず、指をくねくねと動かし続けている。

暫くその場で待っていたけれど、現実世界に戻ってくる気配が無いので部屋に向かおうと振り返ると、

「こんにちは、わたくしの侍女が大変失礼を致しました。私はジェイミー・オールドリッチと言います、これからよろしくお願いしますね」

かわいい声の主は、装飾のある茶色のワンピースの裾を少し持ち上げて、微笑みながら僕に挨拶をしてきた。丸く大きな瞳に少し垂れ下がった眉は柔らかな印象を与え、整った鼻筋にころころと表情の変わる大きな口、紅を引いていないにも関わらずルビー色の唇に、首元まで伸びた髪は太陽の光を浴びて栗色に輝いていた。あの世界一強いお姫様が、一目見ただけで言葉を無くすほどの美人だとするなら、彼女のその愛くるしい笑顔は、見るものを笑顔にしてしまう力を持っていると感じた。

階段の踊り場に立つ彼女は、僕を見下ろしたまま笑顔を崩さず、

「ほら、あなたも挨拶をしなさい」

そう言ってジェイミーは、侍女と呼んでいた女性に近付いた。するとスカートの裾がふわりと風に靡いたかのように見えた。鈍い音が聞こえ、その瞬間に侍女の背筋がピンと伸び、そのまま気を付けの姿勢で侍女が僕に挨拶を返してくれた。

「わ、私はジェイミー様の侍女、レイラ・アダムスです。よろしくお願いします」

そう言うとレイラはお腹の前で手を交差させると深々と頭を下げた。

「よろしい、いつも言っているでしょう、人目につくところではちゃんとしなさいと、そう言う事はご自分の部屋で存分におやりなさい」

侍女を叱りつけると、再び僕に笑顔を向けて会釈をしてジェイミーはその場を離れていった。

そのジェイミーが見えなくなるのを見届けると、レイラが階段を降りてきて、

「なんでアントニオと一緒にお風呂に入っていたのかしら」

「たまたま一緒になっただけで、特に理由なんて無いけど」

「本当かしら、お風呂だけなら部屋のを使えば良いじゃない」

「部屋のって、もしかして個室って部屋ごとにお風呂が有るの」

思っていた答えと違った答えが返って来たのか、明らかに興味が失せたように、

「そうね、今日初めて学校に来たんだもんね、そりゃあ知らないわよね」

何を期待していたのかはわからないけれど、あからさまな態度の急変に戸惑っていると、僕が抱えているアントニオの着替えの中に下着を見つけ、

「それはアントニオの下着、まさか今履いてないわよね」

「いやあ僕のが汚れちゃってさ、それで代わりのをアントニオに貰ったんだ」

「なんで汚れちゃったのかしら」

「うーん、まあ色々と有って」

「色々と有って、下着が汚れた」

レイラは両手で口元を隠すと再び自分の世界へ入り込んで行ってしまった、それを今さっきジェイミーに咎められたところだろうに。

レイラの目の前で手を振ってみたが反応が無かったため、ぼくはレイラをそのままにして自分の部屋へ向かった、ああこれでようやく一息つける、もう何事も無い事を祈ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ