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第49話 レイラ再び

レイラの鼻血も止まり、焚火の所まで戻るまでに何度も病気について尋ねたが、レイラは大丈夫の一点張りで、これ以上問い詰めるのも良い事では無いので、後日意を決してジェイミーに尋ねてみる事を心に決めた、ジェイミーも大丈夫だと言っていたけれど、ここまで頻繁に鼻血が出るのは何かしら問題が有るとしか思えない。

再び沈黙が訪れ、手持無沙汰になったために薪をくべた、ぱちぱちと火が燃え移り辺りを照らす、恐らくは今日も何も起こらない、ただこれに慣れてはいけない、ただ一度の何かのために常に準備を怠ってはいけないのだ。

真剣な面持ちをしているだろう僕とは対照的に、レイラからは余裕が感じられ、ときおり欠伸をしながら伸びをしている。

もちろん僕も欠伸くらいはするが、レイラのそれは部屋の中で何もやる事が無いのに夜更かしをしている時と何ら変わりが無いように見える、もちろんレイラが部屋でどう過ごしているのかなんてわからないけれど、それぐらいのんびりと時間を浪費している様に見える。

「シリル君・・・」

「ん、何ですかレイラさん」

「なんだか随分と緊張していますね」

「ええまあ、なにか有ってはいけないので出来るだけ気を張っていますけれど」

僕の緊張が伝わってしまったのだろうか、だとしても僕はそれを悪い事だとは思ってはいない。

「シリル君は、森に成れていないのですね」

「え、ええ、いやあそうかなぁ、これでも随分と森の中を駆け巡ったんだけど・・・」

僕の入学が遅れた理由を知っている筈なのに、それともレイラは僕よりも長い時間森で過ごしていたのだろうか・

「うーん、そうでは無くてですね。どうしようかしら、あまりしゃべりすぎるとジェイミーに怒られてしまうかも知れないのですけど」

少し勿体ぶったような言い方をしているが、一体何を話そうとしているのだろうか、

「今のシリルさんは、森の中に居るシリルさんなのですよ」

「そうだね、そうだけど、それがどうかしたの」

レイラは僕の言葉に少し微笑んだ、ジェイミーはそのかわいらしさが学校中に知られわたっているが、僕はレイラも負けず劣らずな事を知っている、普段から前髪を下ろしているのと、いつもジェイミーの後ろに隠れがちな事から、あまりみんなは知らないのだと思われる。

「つまり、シリル君は森の中に居るので有って、森に成っていないのです。心と身体を森と一体化すれば根の張った木にも成れるし、風に揺れる草花にも成れる、寝ている小鳥にも成れるし、今まさにその鳥を襲おうとしている蛇にも成れる。気配を消すのは得意のようですが、気配を自在に操る事は出来ないようですね」

「言っている意味が良くわからないんだけど・・・」

自分の中で色々とレイラに言われた事を反芻してみたけれど、僕の頭では正確な答えが導き出せなかった。

「そうですね、シリル君は私が随分とのんびりしていると思いましたよね」

レイラの鋭い指摘に思わずドキッとした、どうして僕の考えていた事がそこまではっきりとわかっているのだろうか、

「どうやらかなり驚いていますね、それは私がシリル君の心に寄り添っていたからなんです、気配を読むと言いますか、剣戟の次の一手を読む時と同じですよ、その上級編みたいなものです」

「そ、そんな事は僕だってある程度は出来るよ、でも、レイラさんの様には巧く出来ないかな」

僕は素直に負けを認めた、心をここまで読まれているとしたら、負けを認めずに強く反論する事は僕には出来ない、それならば素直に負けを認める方が潔いと僕は思う。

「素直なのですね、私がのんびりしていたのはそこの木にとまっている小鳥や、向こうで草を食んでいる飛蝗の気持ちになっていたからです、のんびりしていても平気、つまりとても安全だという事ですよ。鳥や虫の心を読むなんて事は、人の心に比べたらとても簡単ですから」

レイラはそう言うと、肩を震わせながらころころと笑い始めた。夜にも深まっている為に声を殺しながらでは有ったが。

しかし、レイラは随分簡単そうに話していたが、一筋縄では会得出来ない高度な技術だと思うのだけれど、一体どうやってそんな技術を学んだのだろうか。そして、あまり他人に話さない方が良いと言うのも頷ける、心が読まれると知ったらそれはとても怖い事だからだ。

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