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第48話 アントニオのアントニオ

夜も深まり、見張り番である僕とレイラを残して皆が寝床に着いて、焚火をながめる二人の間に長い沈黙が続いていたが、僕よりも先にその沈黙を破ったのはレイラだった、

「シリル君はジェイミーの事をどう思っているの」

唐突な質問だった、ジェイミーの従者であるレイラだ聞いて来た場合、そのどう思うと言うのは何を差しているのだろうか。これがアントニオに聞かれたのであれば、何とも思っていないよアントニオ頑張れ、と答えても良いのだけれど、従者であるレイラに主人に対して何の感情も持っていないよと言うのは失礼にあたるのではないだろうか、かと言って嘘でも好意が有ると答えて良いものだろうか、様々な解答例を導き出し、それに点数を付けていくとやはり一番無難な答えはこうだ、

「ジェイミーさんは素敵な人だよね、レイラさんもそう思うでしょう」

これで間違いは無いだろう、素敵な人と言われて嫌な気持ちになる事は無いだろうし、これならばレイラからどこが素敵かを答えて貰えるし、そこから話しを広げることも出来る。

僕は期待を込めた面持ちでレイラの答えを待っていたが、その答えはあっけない物だった、

「ふうん、そうね」

・・・それだけかよ、それじゃあ話しが終わってしまうじゃないか、仮にもご主人様なんだから何か有るだろう、それこそ優しくしてくれる時も有るとか、とても頼りになるとか、髪が長いとか、何でも良いじゃないか。

「それじゃあ、アントニオ君の事はどう思っているの」

「アントニオ、ああ、アントニオね。どうって聞かれても、どうなんだろうね」

「何も無いのかしら、それこそ裸の付き合いをしてたのに、何もないって事は無いんじゃないかしら。学校では久しぶりに会ったと聞いたのだけれど、だとしたら何か心の中に芽生えても可笑しくは無いでしょう。服も下着も貰って、今着ている服もアントニオ君に貰ったものでは無いのかしら、それでも何の感情

も湧かないのですか」

レイラが急に早口になる、まあ確かに僕とアントニオは久しぶりに会ったけれど、それこそアントニオのアントニオを見るまで忘れてたくらいだし、服を貰った事は感謝しているけれど、取り立ててどうって聞かれて答えるほどの事が無いってだけなのだが、

「アントニオとは剣戟大会で会って以来では有るけれど、その時だって本当にわずかな時間一緒に居ただけだよ」

「その僅かな時間で何が有ったのかしら、あなたを覚えていたって事は何か二人の間で有ったて事でしょう」

それはアントニオに口止めされているんだが、どう答えたら良い物か、

「あの時はレイと二人で居たところにアントニオが話しかけて来て、それから・・・レイがアントニオを抱えて医務室に連れて行って、そこで別れてそれっきりだったんだよ」

「それだけで、アントニオ君はあなたを覚えていたのですか」

「んーまあそうだね、アントニオには忘れられない思い出だったんだろうね、僕もその事自体は覚えていたけれど、アントニオの顔ははっきりと覚えていなかったんだよね」

「顔を覚えていないのでしたら、お風呂場で何を見て思い出したのかしら」

そう言ったレイラの顔色がぐるぐると変わり出し、ぼたぼたと鼻血が垂れて来た、

「大丈夫・・・、なんだよね」

「今日は、ちょっとまずいかも知れないわ」

そう言ったレイラの肩を抱き寄せ、よたよたと頼りない足取りのレイラを川まで連れて行き、顔を洗うのを手伝った。レイラもジェイミーも大丈夫と言っているが、これだけ鼻血が出るのは何かしらの病気なんじゃないかと心配になった。

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