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第4話 ないしょの話し

「そういえばシリルの部屋はどこなんだ、俺の部屋はベッドの空きが無いから、残念だけど部屋は違うようだな」

着替えの一つも持っていない僕は、この薄汚い服をどうしようかと思案している間に、洗い立ての服を着こんだアントニオが聞いて来た。前に会った時と同様におしゃれな服に身を包んでいる。

「そんな事よりもさ、捨てる予定の服とか持ってないかな、僕の服は見ての通りのズタボロでさ。持って来てた着替えは船と一緒に沈んじゃったから、これ以外に着る服が無いんだよね」

僕がここに辿り着くまでの顛末をすでに話していたため、手持ちのお金が無い事もわかっている為、そう言う事なら、と僕にここで待つように言い残してアントニオが脱衣所から出て行った。

暫く待っているとアントニオは両手で抱えるくらいの服を持って来てくれた、アントニオの身長は僕よりも少し高いくらいだから僕には少し大きいかも知れないが、僕もまだまだ大きくなる予定なので裾を折るなどすれば十分に着れるだろう。

取り急ぎ下着とシャツを着こんでみたが、本当に捨てる服なのか疑問に思う程綺麗な物だった、ただ僕が着るには少し派手かなと思った。

「ありがとうアントニオ、でもこれは本当に捨てる服なのかい、とてもそうは見えないんだけど」

「いやいやここでシリルと再会したのは縁が有ったからさ、気にしないで着てくれよ」

シャツの袖は少し余るくらいだったが、ズボンを履くと裾が随分余った。しゃがみこんで一つ二つ三つと折りながら、目の前のアントニオの足の長さと自分の足の短さに落胆していると、アントニオが耳元で呟き始めた、

「君に限って言いふらしたりなんて事は無いと思うけれど、あの時の事は内緒にしていてくれないかな。もうあれは昔の話しだし、いまの俺ならあんなことにはならないだろうしな。他にも困った事が有ったら何でも相談してよ、な」

言い終えるとアントニオは僕の肩をポンと叩いた、もちろん僕も過去の恥を言いふらしたりなんかはしないが、僕の事を良く知らないアントニオからしたら心配になる気持ちも十分わかるので。

「もちろん、誰にも言わないよお漏らししたなんて、ね」

そう言って下腹部をポンと叩いた、物凄く複雑な表情をしているアントニオに少しやり過ぎたかと感じた僕は、

「大丈夫大丈夫、ごめんアントニオ、レイと一緒に居るとこういうキツイ冗談とかをつい言っちゃうようになっちゃうんだ、アントニオはまだ良い方だよ、決勝で姫様と戦った相手はもっとぐちゃぐちゃで上も下もの大騒ぎで」

早口で一気に捲くし立てる僕の口を慌ててアントニオが抑えた、

「シリル、そう言う事だから。これからよろしくな」

僕は口を押えられながら何度も頷いた。


「シリル、君の部屋は3階なのかい」

階段を登りかけた僕に驚きアントニオが声を上げた、階が違う事がそんなにも大事なのかわからない僕は、

「そんなに驚くほどの事なの、階が違っても部屋に来たりすれば良いじゃないか」

僕の言葉に少し考えこんだアントニオは、

「やっぱり君が王子様なんじゃないか、3階は個室で寮費も1,2階とは比べ物にならないほど高いんだよ。着替えが無いとかお金が無いとかは僕をからかっていたのか」

「いやそれこそアントニオの方が僕をからかっているんじゃないのか、僕はアトモスの小さな・・・、普通の宿屋の息子だから、王子様なんてとんでもない話だよ」

「そうなのかなぁ、レイナルド・エースに剣術を教えて貰えて・・・宿屋の息子?いやいやそれは無い、でも、うーん」

僕がどれだけ力説しても信用する事が出来ないのか、アントニオはぶつぶつと言いながら自分の部屋へ歩いて行った。それを見送ると僕も振り返って階段を登り始めた。

「ぐふっ、王子様はどっちなのかな。それにその服はアントニオの・・・、ぐふふ」

いつの間にか背後を取られていたことに気付き、半歩下がって声の主を注視した。

しゃがみこんでいた声の主がゆっくりと立ち上がった、細身の声の主は口元を手で押さえている上に自由気ままな髪の毛が目を覆い隠しているが、少しだけ見える肌は白磁の様に白くとても美しかった。

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