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第35話 れいの技

激しく降り続く雨で濡れた服が身体に纏わりつき、夏の夜とはいえどんどんと体温を奪って行った。

「そんなに遠くには居ないと思うけど、かと言って近くでも無いとすると、あそことあそこ辺りかな」

冷えた身体を鼓舞するために独り言を呟いた、その呟きを雨音がすべて掻き消してしまう。

「こんな日には肉食獣も狩りなんてしないで、雨宿りしながら寝てるって言うのに、僕はびしょびしょになりながらこんな所を歩いているなんて」

獣道を外れて森の中を進んでいる為、枝を揺らすと葉の上に溜まった雫が大量に落ちて来るが、それすら気にならないほどの大雨に辟易し始め、独り言の大半は愚痴に変わった。

ゆっくりとそして確実に目的の場所へ辿り着いたが、僕はどうやら賭けに負けてしまったらしい。

目印となるように枝を折って置いたのだが、それ以外に折れた枝は無く、そこには僕以外が訪れていない事がわかった。僕は大きくため息を吐き、濡れた髪を搔き上げて飛沫を飛ばすと、少し弱くなった雨に感謝を言う事も無く、次の目的地へ歩を進めた。


目的地に近付くと、そこに目的の者を見つけた僕は姿勢をさらに低くして息を呑んだ。

(こっちに居たのか)

葉音を立てないようにゆっくりと目標へ近付くと腰の小剣を抜いた。

鞘からの音に気付いた目標がわずかに反応した時、すでに僕の小剣は空を切り、大木の幹をわずかに揺らした。

その僅かな揺れで十分だった。

なみなみと葉上に蓄えられていた雨粒が零れ落ち、その雫が次の雫を呼び、さらに大きな雫が集まり滝の様に降り注いだ。

「うわぁあああぁああぁ」

大木の下に座り僕たちを観察していた者は降り注ぐ雨粒を払いのけるが、ドバドバと流れ落ちて来る水流にびしょ濡れにされて諦めたのか、首を傾げ乍ら僕の方へ雨に濡れながら歩いて来た。

「えーっと、君の名前を教えて貰えるかな」

「シリルです、シリル・エアハートと言います」

「そうか君が噂のシリル君か、いやぁしてやられちゃったな。俺の名前はジャッキー・マクラウド、いつから気付いていた?」

「あ、学校を出た時には気付いていました、僕以外にも(アントニオ以外は)存在に気付いていたみたいです」

「そうか、その時は俺じゃないからな、こっちは交代でやっているから」

「はい、何日も寝ないで僕たちの番をするとは思えないので、何と無く交代はしていると思っていました」

僕の言葉にジャッキーは降参したとばかりに両手を肩の上まで上げ、

「頼もしい後輩だと思う事にするよ、学校へは報告しておくから・・・、って俺たちを見つけると成績が上がる事を良くわかったな」

「それは・・・、そう言う事が有ると知っていて」

「そうか」

そう言ってジャッキーは顎に手をやり何やら考え事をし始めたようだ、もしかしたら言わない方が良かったかもしれないと思った僕は、

「もしかして、まずかったですか」

もし知っていた事で罰則が有るのなら、ジェイミーから聞いたとは言わずに、レイから聞いたとか適当に答えようと思っていると、

「まあ良いや、別に内緒にしてるわけじゃないしな、でも良く知っていたなって、そうか、レイナルドさんから聞いていたのかな」

「え、あ、そう、そうです、そうです」

「そうだったか、あの人はある意味伝説を作った人だから、シリル君は良い師匠を持ったな」

レイを褒められて僕は嬉しくなった、くしゃみをしてるかもしれないけれど。

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