第34話 来るべき時雨
念のために罠の確認のために僕だけがみんなと離れて先行して、その後を4人に付いて来て貰った。やはり罠はどこにも無く、昨日よりも早く目的地にたどり着く事が出来た。そこでいったん野営の準備を済ませ、辺りに燃やすための木を拾いに行ったが、やはり3日目ともなると近辺には良さそうな木は少なく、かなりの広範囲を探す事になってしまった。水場が近い事も有り、湿った流木などは沢山有ったが、自分たちが使う分以外を、余分に乾かしたりはしてくれていなかった。
僕たちは川の水の蒸留のために大量に薪が必要な為、今までよりも多くの時間を費やして落ちている木を集めた。
「とりあえずは水を作るけど、多分その内降り出すな」
「こんなに晴れているのに雨が降るって言うのか、本当かよシリル」
僕の言葉を聞いていたアントニオが信用できないのか反論してきた、確かに空だけを見ていたらそう思うのも仕方が無いだろう、だけど僕は、風が運ぶ匂いと湿度、飛んでいる虫の高さや種類、川の水の微かな異変、それらを肌で感じ取り、今までの経験から雨が降ると予想を立てたのだ。
ただ空を見て雲一つない、晴れ、などという簡略的な事では断じて無い。
「俺はシリルの言う通りだと思うな、どれくらい降るかわからないが、川の近くで寝るのは止めて置いた方が良いだろう」
「本当なのか、川のせせらぎを聞きながら寝たかったんだけどな」
アントニオ、今日はお前も見張りの当番の日なんだが、せせらぎを耳にぐっすり寝てたら僕が叩き起こすぞ。それでも、アントニオは文句を言いながら川から離れたところへ一度設営した宿泊施設を動かした辺りは、僕たちを信用してくれているのだと思う。
「で、雨が降るみたいだけど、どうする?今日は止めるか?」
「それなんだけど、雨音が足音を消してくれるから、今日の方が良いね」
「月も星も出ていないから真っ暗闇だと思うが、シリルには見えるのか」
「ほんの少しならね、薪拾いである程度は地形も把握できたし、川が有るからこっち側は探さなくても済むからね」
「そうか、俺には無理な話だが、シリルがそう言うのなら全部任せる」
「ありがとう王子君、見つけられるかはわからないけど頑張るよ」
夕食を済ませて辺りが暗闇に飲まれ始めた頃、予想していた通り雨が降り始めた。
しとしとと優しく地面を濡らしていた雨もそのうちに勢いを増し、葉を打つ雨の音が、音という音を支配した頃、見張りを交代するためにアントニオの頭を叩くと、僕は王子君に目配せをして闇の中へ歩を進めた。




