第31話 わなわな
出発の準備が一番遅かったのは、やはりというかアントニオだった。
ジェイミーにちょっかいを掛けるために、夜更かしをしていたのが原因なのかもしれないが、今日の夜の見張りを任せて大丈夫なのか心配になる。
王子君は流石に準備を終えるのはは僕の次に早く、すっきりとした顔立ちからぐっすりと睡眠が取れたことが伺え、どうやら野営には慣れていようだ。
ジェイミー達も見張りをしていたにも関わらず準備はとても素早く、設営も早かったが撤収もとても早く、手伝おうかと身構えていたが、そんな事は全く必要としていなかった。
撤収した宿泊設備は元通りに梱包されて僕の荷物に戻った、それらが終わるとレイラが運んでいた荷物から朝食を取り出し、残り火で調理をしてから食べていた。
もたもたとしていたアントニオの撤収を手伝い、ついでに朝食を食べるのも手伝って、全員の準備が整った。
昨日の夜の内に進むべき方向は調べて置いたため、太陽の位置と相談しながら次の宿泊地へ向かった。
取り立てて何事も無く進む事が出来、明るい内から宿泊設備の設営を済ませ、ゆっくりと夕食を楽しむ事が出来た。と言っても、持って来ている干し肉や乾パンに水なので、よく噛んで飲み込むくらいしか楽しみ方が無いのが問題なのだが。
夜の見張りのアントニオは心配だったが、何とか僕と交代するまでは何事も無かったようで胸を撫で下ろした。焚火に木を焼べた後で、ただ起きているのも勿体ないと、足音を立てずに歩く練習のついでに辺りに夜食や朝食を探して歩いた。
火の明かりに寄って来た昆虫は焼いて食べて、その昆虫を狙って近付いて来た捕食者を朝食へ回す事にした、幸いにしてその捕食者を襲って食べるような獣を見かけなくて済んだ事は重畳だった。
次の日も朝の準備は僕が一番早く、と言っても寝ずの番をしていたのだから当然なのだが、日の出と同じくらいに王子君も起きて来た。
朝の挨拶を済ませてから、僕は王子君を伴って宿泊地から伸びている獣道を進んだ。
「これを見て」
僕が指を刺した先の枯れ葉の山を掻き分けると、そこには草の先を結んで輪になっている簡易罠が有った。
「昨日この辺りを探っていたら見つけたんだ、まだ新しいから僕たちの前の組みが仕込んだんだと思うんだけど」
足で枯れ葉を蹴散らすとそこはもともと草原だったようで、罠を仕掛けた後で枯れ葉で埋めてあった。
「そうやらその様だ。どうするシリル、罠を探しながらだとかなり速度を落とす事になると思うが」
「僕も完全に見分けが付く訳じゃないんだけど、出来るだけ先行して罠を外して行くよ。この程度の隠し方なら簡単に見つける事が出来るけど、油断させるためにわかりやすくしてる可能性も有るんだよね」
「なる程、さすがにここまで程度の低い罠ばかりでは無いだろうな。しかし余計な体力を使わされるのは癪に障るな」
「それも込みで罠を仕掛けているだろうからね。そろそろ戻ろうか、みんなにも説明しておきたいし」
「うむ」
僕たちは罠場を後にして焚火の元へ戻った。ちょうどジェイミー達が朝食を食べている所だった。




