第29話 太陽と月と星
今進んでいる方向が正しいとは限らない、そんな不安と戦いながら歩みを早めるのには、相当な気持ちの強さが必要になる、一人で居るのなら間違えたところで如何様にも対処できるが、複数人で歩いている場合は些細な間違いからすべてが綻んでしまう可能性も秘めている。
特にリーダーを決めているわけでは無のだが、何と無く僕と王子君が先頭を進み、その後ろにアントニオが付いて来ていて、ジェイミーとレイラがそれに続く隊列が出来上がっていた。
本来ならアントニオは殿に就いた方が良いのだけれど、ジェイミーがそれを拒んだためにこうなった。
だんだんと荷も落ちて来たのにも関わらず、立ち塞がる木々によって目的地が隠されてしまっている。
もしかして通り過ぎてしまったのではないかと地図を確認をするけれど、沈みかけた太陽からはそれほど情報を得る事が出来ないでいた。
「いっその事日が落ちてから星を見た方が早いんじゃないか」
夜の森の中を歩くという行為に抵抗感が無い僕の提案は、太陽が真上に有るころにはみんなに否定された。
ところどころに露出している木の根や倒木に足を取られることも有るだろうし、草むらの中から敵意を持った獣が襲ってくるかもしれない。
今のところ敵意を持っていない者はともかく、獣の類いは数を減らしているし、食材が手に入ると思えばそう悪い事とも思えない。
実際に日が落ちてからは星を見ながらの移動になったが、日が出ている時よりも格段に速度が上がった。
その甲斐があってか、日が落ちてから少しの時間で最初の野営地に着く事が出来た。
野営地と言っても火を熾しても良いように草木が刈り取られているだけで、ポツンと焚火跡が有るぐらいで、特別に何か設備が置いてあるわけでは無い。
その為に野営地に着いてからまずは火を熾し、その明かりを頼りに各自食事と宿泊設備の設営をし始めた。
ジェイミー達は僕が運んでいた荷物から宿泊設備を取り出すとささっと設営を済ませ、レイラの運んでいた荷物から水と食料を取り出していた。
僕も自分の荷物から干し肉と水を取り出して腹を満たすと、少しの休憩を挟んでからみんなを呼び寄せ、明日の予定を話し会った。
「星から見ると明日はこっちの方角なんだけど、距離が近いから多分明るい内に移動が出来ると思う」
「水場は3日後か、やっぱりここは大外れの場所だな」
「でも最終日がここになる組みも厳しいから、体力が有る最初で良かったとも言えるな」
流石は王子君、文句ばかりのアントニオとは違うな。
「私が聞いた限りですが、最終日にここへ向かうのを避けるために前日に棄権して、ここへは来ずに学校へ向かうと言ってましたわ」
なんて事だ、初日だけは棄権が出来ないために僕たちはここへ来る羽目になってしまったが、最終日にここへ来る組みは棄権するなんて、よっぽど評判悪いんだなこの野営地は。




