第26話 フラグ
クラス中を巻き込んだ騒動も、急用を済ませた先生の登場で幕を下ろした。
アントニオは僕が作ったこぶを摩りながら非難をしてきたが、その理由を説明すると渋々ながら了承してくれた。だけど、僕とジェイミーが決闘寸前まで行ったことに関しては納得しかねる様子だった。
確かに僕も軽率だったと反省はしている、自分でも挑発されたとはいえ、即座に反応してしまう程だったかと問われると、冷静になった今なら僕も自分を窘めるだろう。ましてや相手は見目麗しいジェイミー女子が相手なのだ、ブーフーウーの奴らが相手なら即断で申し分は無いのだが、どうしてあんな挑発を受けてしまったのだろうか、教室へ戻る途中でそんな事を考えていた。
「なかなかに彼女は策士だな」
放課後、夕食前に僕の部屋で王子君と今日の出来事について話していると、当然ジェイミーとの決闘の話しになった。
「だとしても自分でもわからないんだよね、相手によって対応を変えるのは失礼だけど、女の子のしかもジェイミーを相手に、なんであんなに向きになってしまったんだろうって」
王子君は少し考えこむと、何かに気付いたように目を見開いて僕の方を向くと、
「やっぱり鼻を弾かれた事を根に持ってたんじゃないか、あれは痛かっただろう」
「確かに、だけど・・・」
僕は、もしかしたらジェイミーがまたキスをしてくれるんじゃないかって、淡い期待をいだいていた事を思い出し、何と無くあの時はかわいいいたずらだなって許してしまっていたが、心のどこかで不満をいだいていたのかもしれない。もちろんそれは鼻を弾かれた事で、キスをして貰えなかった事では無い。
「確かに痛かったけど、復讐をしたいと思う程じゃない、はず。それに、どうやら僕は彼女には敵わないっぽいんだ」
「それも彼女の策略なんじゃないか、シリルから喧嘩を吹っ掛ける事は無いから、あんな挑発をして決闘に持ち込んだんじゃないか」
「やっぱり僕は嫌われているのかな、何と無くだけど、僕を孤立させようとしている気がするんだよ」
「嫌いな相手の頬にキスまで出来るのなら、シリル、あの子は僕らには手に負えないかもしれないな」
「だよね、今回の件もそうだけど、周りに気付かれない程度には距離を置くよ」
「それが良いな、それじゃ時間になったし食堂へ行くか」
僕たちの方針は決まった、ジェイミーはアントニオに任せて、出来る限り関わらない、それが僕の為でも有るし、彼女たちの為でも有るんだ。
次の日、最初の野外訓練の告知が有った。学校の周りに点在する野営地まで移動して、宿泊して戻って来るだけという至極簡単な学校行事だ。食材や水もすべて背負っての移動になるので、大量の荷物を分担して運ぶ事になるぐらいで、後は飯食って寝るだけだから何も問題は無い。
「シリルは、こんな事は手慣れたものだよな」
「それはまあ、そうなんだけど。荷物も増えるからどうだろうね」
「後は人数合わせに誰を入れるかだな」
とりあえずアントニオと王子君で3人組が出来た、他の生徒もすでに組み分けが進んでいる。
やはりと言うか当然と言うか、ジェイミーとレイラの二人組はクラス中の人気で引く手数多だ。
そんなクラス中の誘いをすべて断って、ジェイミーは僕たちの所へ来て、
「シリル君と仲直りしたいので、一緒の組みになってくれるかしら」
にこにことしたいつものジェイミーと、それにもまして笑顔のレイラと、その後ろには大量の怨嗟の声。
僕は前も見た事のある光景にため息を吐いて、ジェイミーの申し出を受ける事にした。
何と無くわかっていたんだ。




