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第23話 真っ赤な雨

「あれは何年前になるかな、この学校を卒業して、あ、先生もこの学校出身なんだ。うん、卒業してからすぐに狩竜人船に乗れることになっていて、最初の頃は先輩狩竜人たちの補助をやっていたんだ、当然竜なんて狩れるわけが無いから魔力補充用の獣の狩りが中心で、それなりに数をこなしていたから調子に乗っていたのかもしれないな。そんな時に新天地開拓の依頼を受けて、それに無理を言って同行させてもらったんだ。とにかく人手が欲しかったんだろうけど、それまでが上手く行きすぎていたから、俺達なら出来るって思っちゃったんだな。現地に着いてから数日は付近の偵察が主な任務なんだが、何隻も上空を狩竜人船が飛び交ってれば、付近の獣たちは何事が起ったのかわからないからとにかく我先にと逃げていってしまう、そして特に問題が無さそうなら少しずつ開拓をして、人が住めるように場所を広げて行くんだ。そうしたらまた周りを探索して、安全なようなら開拓をする。最初の内は円形なんだが、そのうちに細い獣道みたいなところを進んで行くようになる、そのころになると、逃げてばかりじゃなく戻って来て様子を窺っていた獣たちと遭遇することも増えて来るんだが、こちらもある程度どんな獣が居るかの調べを済ませてから探索に来ているんで最初の内は対処は出来ていたんだ。ただ、どれだけ調べたところで全部を事前に確認できる事なんて有り得ないんだ。事前調査では確認が出来なかった獣たちへの対処はなかなかに難しいが、そのための狩竜人なんだけれど出来ない事も有る。信号弾が打ちあがって救援に向かうために班を二つに分けた、その時に俺たちの運命が決まったんだ。信号弾の色についてはその船ごとに違うから、何色の信号弾だったとかはあまり気にしなくて良いぞ、大体が赤色が混ざっていたら危険ってのだけは違わないと思うが。で、そうそう、俺と、あとの二人、俺の2年先輩だったかな、二人は同期で乗船したから仲良しでな、人数も減ったからその場に留まるか、前に進むかの話し合いをしたんだが、当然俺の意見は通らなくて前に進むことになったんだ。今となっては留まっていたからどうなんだって事だが、進んだ先で出会ってしまったのがハンマーテールだ。今でこそハンマーテールと名前は付いているが、その時はまだ名前も付いていない初めて見かけた獣だった。鋭い牙に鋭い爪、全身鱗に覆われた姿は竜にも見える、最初の頃は竜に分類しようかと言われてたが、結局は大きなトカゲに分類された。それでも最初は竜にぶんるいされるぐらいだから、初めて見た俺達も興奮したよ。思っていたよりも大きくはない体格、相手は竜とは言えたった一匹、木々が生い茂るこの場では横に振る攻撃は木を盾に出来る為にそれほど恐ろしくない、そんな事はどうでも良い、俺達でこの竜を倒せばもっと大きな竜を狩りに行ける様になるんじゃないか、初めて目にした竜に興奮して冷静な判断が出来なくなっていたんだな、そこに居るのは未知の生物で、しかも竜じゃなくて大きいトカゲだ。ハンマーテールと言う名前の通り、怖いのは尻尾で、牙や爪はそれほど脅威ではないんだが、その時の俺たちにそんな事がわかるわけが無い。ハンマーテールを中心にして扇状に広がり、距離を詰め始める。真ん中の先輩の合図で一斉に飛び掛かる、筈だった。ハンマーテールはくるっと前転、でんぐり返しの様に尻尾を振り下ろすんだが、どれぐらいの攻撃範囲で、どれぐらいの威力かわかるか、先輩が飛び掛かれる距離は約3メートル、そんな距離に居た先輩が木っ端みじんになるくらいの威力だ。声も出なかったよ、真っ赤な血しぶきと肉片がそこら中の木々に飛び散って、その場に立ち尽くしていたのが良かったんだろうな、目の前で同期を殺された先輩が、雄たけびを上げながらハンマーテールに向かって行ったところで、ハンマーテールの目線が俺からその先輩に向かった、正気を取り戻した俺はそれを確認すると一目散に逃げだした。もう二度と聞きたくない鈍い打撃音が聞こえて、それと同時に土砂降りの雨の様な飛沫音が聞こえて来た。ハンマーテールが追いかけて来なかったのは幸いだった、逃げ帰った俺を責める人は誰も居なかった、その場で戦って死ぬよりも、生きて何が有ったのかを伝える事の方が大事だからな、だけど、俺はその時に大事な何かを落としてきてしまったようだ、それ以来まともに狩りに参加することが出来なくなって、船を降りてここで先生をやっている」

大きくため息を吐いた先生の目にはうっすらと涙が浮かんでいるのが見えた、

「すまない、ちょっと急用を思い出した、あとは各自自主練しててくれ」

そう言い残して先生は校舎へ走って行ってしまった。

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